「桃仙閣」「一平飯店」「明寂」など今をときめく高級レストラングループの一員であり、史上最年少でミシュラン1ツ星を獲得したことで話題となった「白寧(はくねい)」。西麻布の裏路地に位置し、以前は「CHIUnE」が入居していた場所です。
営業は一斉スタート2回転制。時間になるまではウェイティングスペースでのんびりします。また、遅刻者を待つことなく、時間になったら容赦なくコースを開始するのが良いですね。最近の店は一斉スタートに拘りすぎて遅刻者を待つ傾向にあり、パンクチュアルを是とする私は毎度辛い思いをしていたところです。
店内は真っ白で撮影スタジオのよう。コックコートも真っ白なので、秘密結社の集会に参加した気分を楽しめます。カウンター8席のみで他のゲストの会話も丸聞こえであり、また食事を楽しむというよりは料理に集中するスタイルなので、会話を楽しみたい会食や勝負デートでの利用は難しいかもしれません。
林大シェフは「フロリレージュ」や「マルゴット・エ・バッチャーレ」で経験を積んだそうで、なるほど意欲的で今っぽい料理が続きます。シェフの若さばかりが注目されていますが、雰囲気づくりや一糸乱れぬオペレーションなどの総合力の高さが伺えるお店です。
ワインのペアリングは通常モードで2万円ぐらいだったかな。なかなか豪華なラインナップ、かつ、料理にもきちんと合わせてくれ非常にレベルが高い。しかしながら「もう少し召し上がりますか?」とか言って気前よく注ぎ足ししてくれるなと思いきや、しっかりと別料金だったので、何だかなあというお気持ちです。
こちらは「究極大根」という凄い大根を用いた料理で、軍鶏のお出汁と中華の上湯テイストを組み合わせたようです。しみじみ旨く、内臓が温まります。
新玉ねぎのアイスクリーム。これは素晴らしいひと品ですねえ。玉ねぎよりも玉ねぎの味が強く、それでいて味がキレイで洗練されている。バレルで買って自宅に常備しておきたいレベルです。
サクラマス。しっとりとした口当たりのサクラマスに、グラニースミス(リンゴの一種)の程よい甘味と酸味を合わせます。サクラマスとグラニースミスを合わせたのは当店が史上初かもしれません。
たっぷりの春野菜。温かいサラダ仕立てであり、仕上げに目の前で泡泡ソースがかけられます。野菜そのものの甘味と苦みが上手く調和し、何とも大人なサラダです。
ホワイトアスパラガス。フランス料理でホワイトアスパラガスというと極太サイズをムッシャムッシャというイメージですが、こちらでは繊維に沿った糸状で頂きます。タレ(?)が絡んでこれがなかなかイケてます。ハマグリの鉄っぽい旨味もきいて、日本料理のような味覚です。
アオリイカに九条ネギ。清澄な味わいのイカに九条ネギの青っぽさが良く合う。コッテリとしたソースがかかり、仕上げにキャビアと贅沢な塩っ気である。
鰻とフォアグラを蕎麦の生地で巻いてかぶりつく。これはもう、素材ズル過ぎ星人であり、肉厚の鰻のジュワっとした脂が堪りません。これを食べることができただけでも今夜お邪魔した甲斐があったというものです。
アンコウにジロール茸に桜海老。ムッチムチに弾力のあるアンコウを雰囲気のあるキノコと風味と共に楽しみます。甲殻類のソースも鮮烈な味わいであり、アンコウって鍋にするよりもこっちのほうが旨いんじゃねと思わせるパワーがあります。
お肉料理は仔羊。ラム特有のミルキーな香りに加え、焼く際のスモーキーな風味も加わり、満腹に近いにも関わらずガツガツと食わせる魔力のあるひと品です。肉厚のシイタケもパワフルだ。
〆のお食事にはホタルイカと菜の花をやりたい放題用います。ここまで来るとまるで日本料理店ですが、まあ、旨けりゃなんでもいいじゃんという姿勢なのでしょう。なお、こちらの「もう少し召し上がりますか?」については、ワインと違って追加料金はありませんでした。港区は難しい。
ブラッドオレンジのグラニテで味蕾を整えつつ、、、
たっぷりのイチゴとフキノトウのアイスを楽しみます。アイスが特に良いですね。フキノトウの清涼感のある香りが食べた後に口の中に残り、春らしい軽やかさを感じさせ、また、ミルク系のアイスと合わせることで、苦味がまろやかになり、ほのかにミルクのコクが後から広がります。
〆にミルクレープ。かつら剥きのように薄いクレープ生地を根気よく積み上げ、ふわっとしたクレープの柔らかさとクリームの滑らかな舌触りが絶妙に絡み合います。層ごとに感じる微妙な食感の変化が食べ飽きさせない。ミシュラン1ツ星獲得後の寧歳を期待させる味覚です。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- オトワ レストラン(Otowa restaurant) ←本気でフランスの料理文化に取り組んでいる。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション (Joel Robuchon) ←やはり完璧。
- La couleur d'ete(ラ クルール デテ) ←選んだ孤独は良い孤独。
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
- elan(エラン) ←表参道のナポレオン。
- 銀座 大石 ←自分が働くならこういう職場。
- ナベノイズム ←世界観がきちんとある。
- ル・マンジュ・トゥー ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
- エルヴェ(eleve) ←アラカルトでもコースでも自由自在。
- TAIAN TOKYO(タイアン トウキョウ) ←流行り廃りに捉われないマッチョな料理。
- アサヒナガストロノーム ←そこらのフランス料理店とは格が違う。
- エステール(ESTERRE) ←料理もサービスもパーフェクト。外せない食事ならココ。