炭火焼 鳥清(とりせい)/長堀(大阪)

東心斎橋の「炭火焼 鳥清(とりせい)」。焼鳥と創作和食の融合を目指したお店であり、食べログでは百名店に選出されています。心斎橋駅または長堀橋駅から共に歩いて数分という好立地。
店内はカウンター席のみで10席強といったところ(写真は食べログ公式ページより)。シックでカッコイイ誂えではあるものの、客層はイマイチですねえ。たまたまかもしれませんがゲストの殆どは外国人で、クチャ食いライブ配信は当たり前。スマホの音が常にピコピコ鳴って落ち着いて食事を楽しむことができません。数少ない日本人は東京からやってきた反射みたいなニュアンスで、店内中に演説するかのような大声で会話するのでつらい、つらすぎる。
乾杯はトリシャン。当店が焼鳥に合わせるために設計したプライベートブランドであり、2杯取りで2千円を切る価格設定は良心的。そのほかのアルコールも全般的にお値段控えめで、客層さえ許せばもうちょっとゆっくり飲みたかったな。ところで、大声で話す人の会話の内容って、どうしてあんなにつまらないんだろう。
閑話休題。先付けは厚揚げと若鶏を煮たもの。厚揚げはトロリとした口当たりで美味しいのですが、鶏肉がパッサパサになっており再考の余地あり。
小鉢も出ます。焼鳥屋で氷頭なますが出るのは珍しい。氷頭なます(ひずなます)は鮭の鼻先の軟骨(氷頭)を薄くスライスして酢漬けにしたもので、焼鳥屋でそれを出したのは有史以来当店ぐらいではなかろうか。
地鶏の胸肉のたたき。地鶏の旨味を炭火で炙ることによって凝縮しており、その香ばしいかおりも食欲をそそります。添えられた長芋も香ばしく焼かれておりとても美味しい。
ささみ。最近の流行に比べると良く焼きのスタイル。外国人ゲストが多いからそうしているのでしょうか。個人的にはレア目のものがタイプです。
サラダ(?)には金山寺味噌と酢味噌が添えられます。金山寺味噌は複数の穀物と野菜を原料に、長期間熟成させて作られる日本の伝統的な発酵調味料。一般的な味噌とは異なる複雑で深みのある風味を持ちます。
せせり。鶏の首肉であり、噛み応えのある食感が特長的。とはいえ硬すぎず適度な弾力があり、コリコリとした食感が楽しめます。
やげん軟骨。こちらもコリコリとした食感が特長的で、鶏肉の旨味が凝縮されたジューシーさがたまりません。
つくねはちょっと変わっていて、えらい太っちょでフワフワとした口当たり。中にはレンコンが組み込まれているのでしょうか、ところどころシャクシャクとした食感も面白い。
うずら。口の中でとろけるような黄身と、それを包む香ばしい白身のコントラストが絶妙です。
地鶏モモ肉のザル焼き。焼き網でできたザル(?)みたいな器具を用いて炭火でガンガンに炙ります。和風のジャークチキンのような趣があり、適度な焦げ目を含めてパンチのある味覚です。
きも。いわゆるレバーですが、これはちょっと独特の風味が強く、私の口には合いませんでした。たまたまの個体差かもしれません。
紀州鴨のモモ肉。レバーから一転、こいつは堪らなく旨いですねえ。何とも逞しい味わいで赤ワインが欲しくなる味覚です。
〆のお食事は焼きおにぎりかそぼろご飯かを選ぶことができ、私は後者を選択。なのですが、卵黄が余裕で崩れており、料理人としてこういうの気にならないのかなあと心配になります。味も中くらいである。
鶏そばも出ます。こちらもスープは美味しいのですが、そばが普通というか何というか、これならゴハンものとたっぷりのスープだけで終わった方が美しかったような気がしました。
カボチャだったっけな?クレームブリュレ風のデザートでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上のコース料理が7,300円で、そこに席料と酒代がのってひとりあたり1万円強といったところ。焼鳥そのものは美味しいのですが、冒頭述べた通り客層がアレなので、食事として全然楽しめませんでした。とても落ち着かない。当店に限らずですが、それなりの金額を請求するのであれば、客層のコントロールにも真剣に取り組むべきでしょう。こんなの持続的じゃないよ。

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焼鳥は鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、これほどバリエーションが豊かなのが面白いですね。世界的に見ても珍しい料理らしく、外国人をお連れすると意外に喜ばれます。
素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。