2019年にリニューアル・リブランドして開業した「The Okura Tokyo」。メインダイニングも「ラ・ベル・エポック」から「ヌーヴェル・エポック」へと転生し、オークラグループのフランス料理文化を牽引します。
ちなみにオークラはアメリカ大使館に隣接しており米国の要人御用達。オークラとアメリカ大使館は地下通路でつながっているという都市伝説まであります。
オフホワイトを基調とした店内(以上、写真は食べログ公式ページより)。我々は夜にお邪魔しましたが、ランチタイムであれば明るく大きな窓から庭園を望むことができるそう。床はフカフカの絨毯張りで格式を感じさせます。
ワインはお食事とのペアリングでお願いしました。始まりのシャンパーニュはロゼと、日本のフランス料理店としては珍しい試みで、繊細な淡いピンク色と赤い実の香りに胸を打たれます。グラスが上等なのも良いですね。また、ソムリエールのワインに対する愛情もしっかりと伝わって来ました。
併せてちょっとしたツマミも供されます。確かタコやセロリを詰め込んだものだったはずですが、給仕が行為ではなく物体そのものを「アペリティフ(食前酒)」と説明しており、いやそれはちゃうやろという思いが脳内を支配していたので、味覚に集中することができませんでした。
気を取り直して始まりのお愉しみ。左はトリッパと白インゲン、右はイカとカズノコ(?)におぼろ昆布。いずれもフランス料理としては面白い取り合わせであり、店名通りの感性があります。
スペシャリテの牡丹海老。わおー!これは美しい!フランドル派の静物画のように鮮やかで豊かな色彩を帯び、構図も複雑かつ緻密。エビやキャビアの美味しさは当然として、脇を固めるウニのフランやクリーム、甲殻類のジュレが実質的な美味しさ。これはキュン4してしまう。
パンも絶品。素朴な仕様であるもののしみじみと旨く、上質なバターと共にこれだけで無限に食べれてしまいます。後にやってきた昆布を練り込んだものも旨味がきいて素晴らしかった。フォワグラのポワレにはブドウのソースを用いており、ややもするとクドくなりがちな料理を軽やかな味覚に仕上げています。キンカンの濃密な酸味が名脇役。
メインは魚か肉かの選択制で、連れは「とらふぐのラッケとトリュフ香るリゾット 旬のきのこと軽やかな赤ワインソース」をチョイス。私は口にしていませんが、魚料理として相当にハイレベルだったらしく、かなりマウンティングされてビッグサンダーマウンティングです。
私はエゾジカをオーダー。王道中の王道の味わいであり、カシスの風味がきいたソース・ポワヴラードも見事な仕上がり。貝型の大きなパスタの中にはシヴェ(赤ワインの煮込み)がたっぷりと詰まっており、主役のローストを食ってしまうほどの存在感がありました。
デザートは焼きリンゴのコンポートとのことですが、こんなに洒落た焼きリンゴは見たことがありません。パッションペッパーの風味も現代的で、これぞ高級フレンチの美点とも言うべき締めくくりです。
以上を食べ、ワインのペアリングも付け、水やら何やらでお会計はひとりあたり5-6万円といったところ。ラグジュアリーホテルのメインダイニングなので流石に値は張りますが、それに見合った食体験と言えるでしょう。
料理だけでなく、空間設計からサービス、パンのひとかけらに至るまで一切の手抜きが無いのが素晴らしいですね。オークラの総合力、チームとしての仕事ぶりに感服した夜でした。

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- ガストロノミー ジョエル・ロブション (Joel Robuchon) ←やはり完璧。
- La couleur d'ete(ラ クルール デテ) ←選んだ孤独は良い孤独。
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
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- エルヴェ(eleve) ←アラカルトでもコースでも自由自在。
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