初音(はつね)/目黒

目黒駅から権之助坂を下り、目黒寄生虫館のお向かいあたりにある「初音(はつね)」。私の大嫌いなレストラン「Kabi(カビ)」の少し手前にあります。

ミシュランのセレクテッドレストランに選出された中国料理店であり、以前は「トキ」という店名でしたが、2025年から現在の名前に変更したようです。
店内はカウンター席が4-5席にテーブル席がひとつ。ワンオペの店なのでちょうど良いサイズ感です。常勝広シェフは恵比寿「MASA'S KITCHEN(マサズキッチン)」の出身だそうで、バババとテンポよく仕事を捌いていく姿がクールです。中目黒の「中国菜 灯菜(ちゅうごくさい ひな)」は似たようなコンセプトなのに、どうしてあんなに仕事が遅いのだろうか。
生ビールは600円で安い!と思いきや、グラスはフルートグラスのような形であり、結果として妥当な価格設かもしれません。ワインが結構豊富で、中国茶なども充実しています。
名刺代わりに「和牛の紹興酒漬け」。肉は柔らかくシットリとした食感で、紹興酒の独特な風味とコクが、ミスジの旨味を最大限に引き出しています。これは赤ワインでもイケそうだ。
前菜の盛り合わせが実に華やか。様々な味を楽しむことができワインが捗ります。里芋を用いた大根餅(?)と、フロマージュ・ド・テットのような豚肉の何かが特に記憶に残りました。
タラバガニの水餃子。ムチムチの皮をひと口噛めば、中から溢れ出すのはタラバガニの旨味がぎゅっと詰まった餡。皮のモチモチ感と餡のジューシーさのバランスも絶妙です。
伊勢海老の春巻き。贅沢で尊い。パリッとした黄金色の春巻きの皮を割ると、中から現れるのはプリップリの伊勢海老。ガチで伊勢海老がギッチギチに詰まっており、四捨五入すると伊勢海老です。これは伊勢海老です。
豚肉と舞茸の上湯蒸し。豚肉は「マーガレットポーク」という銘柄だそうで、肌理細やかな肉質で柔らかく、脂身はあっさりとしています。クリアながらもコクのあるスープと共に至福のひと時。日本料理のお椀とはまた違った魅力があります。
焼いてパリパリの生地に隠れていますが、中には白子が鎮座しています。とろけるような滑らかさと濃厚な旨み。ミルキーなコク。塩と山椒で食べるので、これは日本酒にも合いそうな気がする。
松阪牛の四川煮込み。肉だけでも旨いのに、煮込みにするとは何とも贅沢。とは言え辛味は刺激的ではなく、奥深い旨みとコクと複雑な味わいが支配的。〆に麺料理が控えているので我慢しましたが、白ゴハンにもシンデレラフィットするでしょう。
〆の麺料理は「上海まぜそば」や「タイ風まぜそば」など、いつくかの種類からのチョイス。連れは「汁無し担々麺」を注文。ネギかパクチーか、爽やかな緑の輝きが良く映えます。
私は汁有りの担々麺。濃厚でクリーミーなタイプであり辛さは控えめ。肉味噌もたっぷり入っており、肉の旨みがスープに溶け込み更にコクを深めています。
杏仁豆腐と中国茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上のコース料理が1.1万円で、質および量を考えれば見事な費用対効果です。ライブ感に満ちており、要所要所に高級食材も潜んでいて、食べる行為として純粋に楽しい。ランチは手軽な麺料理を提供しているそうですが、ディナーのコース料理を楽しんでこそのお店だと感じました。

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