現代茶寮 銀座凮月堂(げんだいさりょう ぎんざふうげつどう)/銀座

銀座の老舗和菓子店「銀座凮月堂」が手掛ける、フランス料理店「現代茶寮 銀座凮月堂(げんだいさりょう ぎんざふうげつどう)」。シャネルのすぐ近くと銀座ど真ん中な立地です。ミシュランではセレクテッドレストランに選出されています。
もともとはビル2階で運営される和菓子サロンだったようですが、フランス料理店に大転換。シェフズテーブルが2席にフロアテーブルと個室のみの小さなお店であり、かなり贅沢な空間とサービス使いです。

槙紫音シェフは1997年生まれのZ世代でありながらクラシックなフレンチが好きという面白い志向。当店の厨房を預かる前は六本木「ル スプートニク(le sputnik)」銀座「ロオジエ(L'OSIER)」なので経験を積んだそうです。
開幕投手はノンアルコールのカクテル(?)。程よい酸味が食欲を刺激します。当店のスタッフはシェフ・ソムリエ・バーテンダーという興味深い布陣であり、ワインペアリングはもちろんノンアルコールドリンクでのペアリングにも強いのが特長です。
最初にジビエのビスク。わおー、これはもう、すっごいですねえ。色んなジビエの旨味が凝縮されており濃厚オブ濃厚。ザラリとした舌触りも心地よく、大ジョッキでこればかり楽しみたいほどです。
パテアンクルート。この日の具材はビゴール豚に蝦夷ヒグマ、フォアグラで、ザクザクとしたパイ生地からの食感のグラデーションが楽しい。味覚についても、ビゴール豚の力強い旨味、蝦夷ヒグマの野性味あふれる風味、フォアグラの濃厚なコク、濃厚なコンソメのジュレ、それぞれの個性がパイ生地の中で見事に調和しています。私は前々日に「メッツゲライ ササキ(Metzgerei SASAKI)」にお邪魔したばかりであり、パテ充です。
毛蟹と蕪のババロアのガトー仕立て。何とも芸術的な仕上がりであり、クラシックフレンチと聞いていたのに予期せぬ一撃。毛蟹の繊細な旨味と蕪の優しい甘みがババロアの滑らかな舌触りで一体となり、一体、美味しい。キャビアやキュウリの起用法も洒落ており、全然モダンもいけるじゃんと舌を巻きました。
蝦夷アワビを用いたリゾット。肉厚な蝦夷鮑をバターでじっくりと焼き上げており、磯の香りとバターの風味が堪りません。プチプチとした食感のブルグルにもマッチしており、タケノコやキノコも組み込まれ、世界最強のリゾットかもしれません。
お魚料理は白甘鯛。上品な白身と繊細な甘みが心地よく、ウロコをつけたまま焼き上げることで香ばしさと食感が加わります。ソースは魚介の出汁をベースにしたもので、軽やかで風味豊か。ややもすると日本料理に通じる味覚です。
フランスはシストロン産の仔羊のロティ。明らかにラムといった特有の芳香があり、その肉質は肌理が細かい。ペリゴール産のフォアグラのポワレも堂々たる美味しさであり、これぞフランス料理といった剛毅木訥なひと皿です。
グラニテでお口直し。ワインに色んなスパイスを含ませており、メインディッシュの余韻をジンワリと溶かしていきます。
デザートはラフランスのコンポートにバニラのアイスクリーム。素材に忠実なスイーツであり、シェフらしさが伝わってきます。そういえばパン類は一切出なかったけれど、それでもしっかりと満腹になりました。
お茶菓子は凮月堂謹製の「花びら餅」。日本茶も高品質で素晴らしい締めくくりでした。以上の食事にワインのペアリングを付け、フォアグラやら何やらを追加してひとりあたり3.5万円ほど。料理やワインの質を考えれば大変に良心的な価格設定であり、ありがとう、そして、ありがとう。

「ESPRIT C. KEI GINZA (エスプリ セー ケイ ギンザ)」にせよ、銀座の和菓子屋が手掛けるフランス料理は総じてレベルが高いなあ。食文化の担い手としてヘタなことはできないという使命感があるのかもしれません。真面目にフランス料理を楽しみたい場合に是非どうぞ。近い将来、必ず星を獲得する。賭けてもいい。

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