御所 岩さき(いわさき)/丸太町(京都)

ミシュラン1ツ星の「御所 岩さき(いわさき)」。以前は烏丸御池あたりに店を構えていましたが、2021年に御所南に移転リニューアルオープン。食べログではブロンズメダルや百名店にも選出されてきた実績があります。
カウンターに6-7席に、テーブルが1卓の小さなお店(写真は食べログ公式ページより)。とは言えこの席数をワンオペでこなすと知り、今夜は遅くなるなと覚悟を決めたのですが、その心配は全くの杞憂。恐るべき段取り力でテンポよく仕事を捌く凄腕の名人です。
飲み物メニューに金額が一切書かれていないので背筋が伸びましたが、終わってみれば日本酒は1合で千円を切っているのではないかと心配になるほどの支払金額でした。酒で儲けようとせず料理で勝負するお店は大好きです。
出会って4秒でカニが登場します。カニの肉はもちろんカニ味噌や酢漬け、ジュレなど多彩な味覚も添えられます。のっけから日本酒コースであり、最初にお願いしたビールが全く進まず嬉しい悲鳴をあげました。
続いてカラスミ餅がやってきました。カラスミは自家製で気前の良いクソデカサイズ。やはり全く日本酒であり、一体、店主は酒飲みに違いない。
酒のツマミが次々に登場します。エビの旨味やネットリとしたイカ、ウニの甘みに日本酒が捗る捗る。こういった局面でサーモンが出てくるのも挑戦的で楽しい。
お造りはグジに雲子、バイ貝。こちらはグジ(甘鯛)がべらぼうに旨いですね。身は柔らかく、とろけるような食感がありながらも、適度な弾力も持ち合わせています。ほんのりとした甘みと奥深い旨味が日本酒の進捗を後押しします。
お椀の主役はかぶら。瑞々しくほんのりとした甘みが特長的で、かぶらそのものはもちろん液状化したスープからも上品で優しい甘さが伝わってきます。菜種のほろ苦さもアクセントとなってとても良い。
焼きガニ。冒頭のカニとは方向性の異なる味覚であり、焼くことでカニの殻が香ばしくなり、カニの旨味を凝縮して楽しむことができます。日本酒が進むのなんのって。
イクラの飯蒸し。シンプルな料理ですが、それだけにイクラの美味しさを最大限に引き出しています。丼にレンゲでバチャバチャぶちこむスタイルとは一線を画す気高さが感じられる。
鴨は目の前のお鍋で調理して下さいます。鍋から立ち上るお出汁の香りが食欲をそそる。鴨肉はフワリと柔らかく、フランス料理で食べるそれとは全く異なる作風です。これは是非とも欧米の方々に召し上がって頂き、感想を聞きたいところです。
〆のお食事は白ごはん。お供のお漬物や明太子などの脇役陣も抜け目のない美味しさで、あとひと口もうひと口と食べ進める手が止まりません。
おつゆも味噌のフレーバーだけでなく、お出汁のボディがしっかりと感じられ、これが日本の味覚だよなあとしみじみ感じ入った締めくくりでした。
水菓子はイチゴと洋ナシ。イチゴは特大サイズで遠くのゲストのザクっという咀嚼音が聞こえるほど。洋ナシは一般的にイメージされるものに比べると果肉が柔らかく、滑らかな口当たりが心に残りました。
こちらは葛切りに見えますがそうではなく、緑茶を用いたお餅(?)とのこと。なるほど緑茶のほろ苦さが感じられ、黒蜜の特有の濃厚なコクによく合います。

以上を食べ、結構飲んでお会計はひとりあたり2万円台半ばといったところ。冒頭述べた通り酒代は恐らくそれほど高くなく、それでいて酒が進む料理が多いという矛盾に満ちたユートピア。料理は素材に実直で、奇をてらわず旨いものを真っすぐに提供してくれます。この日は炭水化物が多めでお腹もポンポンや。

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mellow. (メロウ)/池尻大橋

ナカメっぽい人に大人気の「mellow. (メロウ)」。池尻大橋駅と中目黒駅の間に位置し、いずれの駅からも歩いて15分ほど。目黒川近くにあるものの、目的を持って訪れない限りはまず目にすることのないビルに入居します。
店内はコンクリート打ちっぱなしと木のインテリアを組み合わせた空間で、ナカメっぽい雰囲気です。所々にお花も飾られているのがかわちい。ゲストは30代中心で、カジュアルなデートや女子会などで大活躍。
アルコールはクラフトビールもグラスワインも千円を切り、この手のレストランとしては良心的な価格設定です。ワインは自然派のものが多くオンリストされており、クラシックなものは殆ど見かけませんでした。
「おすすめ前菜盛り合わせ」は1人前で1,300円。創作的なツマミが色々と盛り込まれてこの金額はお値打ち。パンにレーズンバターを大きく盛りつけたブツがお気に入り。
砂肝のコンフィとパルミジャーノチーズのサラダ。野菜には程よく苦味がきいており大人の味わい。どうにも酒が進むサラダです。
牡蠣のオーブン焼き3種盛り。当店は牡蠣を用いた料理に力を入れているそうで、宮城県産の「新昌」というブランドのものを用いています。左から「生ハムと燻り漬け焼き」「香草パン粉焼き」「燻製オイルとゴルゴンゾーラ」で、いずれも悪くないのですが、ちょっと味が多すぎるような気もしました。シンプルな調味を好む場合は冷製の「ポン酢ジュレ」などを選ぶと良いでしょう。
牛スジ煮込みとマッシュポテトの重ね焼き。トロトロの牛スジとクリーミーなポテトが程よく絡みます。たっぷりのチーズは程よく焦げており、その香ばしいかおりが食欲を刺激します。量もたっぷりだ。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計は1万円ほど。このあたりの洒落たレストランとしては良心的な価格設定であり、分かり易い味付けの料理も素直に美味しい。スタッフの愛想もよく、料理の提供もテンポ良く、飲食店のオペレーションとして実にハイレベル。前日にお邪魔した店が壊滅的な運用だったので、よりいっそう心に残りました。

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カオソーイ ニマン(Kao Soy Nimman)/チェンマイ(タイ)

チェンマイにゆかりのある日本人に「チェンマイでカオソーイと言えば?」と聞くと最初に挙げられるのが「カオソーイ ニマン(Kao Soy Nimman)」。チェンマイのニマンエリアにある有名なレストランで、ミシュランではビブグルマンを獲得しています。今回滞在した「アキーラ・マナー・チェンマイ(Akyra Manor Chiang Mai)」から歩いて数分です。
屋外席とエアコン付きの店内席ががあって、雰囲気があるのは断然屋外席。しかしながら日中は40℃近くにもなる土地柄なので、判断に迷うところです。人生は決断の連続だ。
ヘタレの私はエアコン席に落ち着きました。冷えたビールをグビグビして至福のひと時。飲み物メニューは無く、適当にビールを持ってきてもらったので値段は不明ですが、恐らく300-400円程度でしょう。
ツマミに「ナムプリック・プー」。チェンマイの伝統的なチリペースト料理であり、色んなスパイスと食材をすり潰して作ります。いくつかのフレーバーがあったのですが、こちらはマッシュルームの味覚が支配的。たっぷりのお野菜も嬉しい限り。
真打登場、「カオソーイ(Kao Soy)」です。北タイを代表する料理で、ココナッツミルクベースのカレースープに茹でた卵麺と揚げ麺を組み合わせたもの。具材は様々で、今回はソフトシェルクラブを選択。スープがとにかく濃厚で、思ったよりも辛くない。古奈屋のカレーうどんを煮詰めてスパイシーにしたような味覚です。
麺は太目の平打ちで、どこか粉っぽいニュアンスが感じられます。外観含めてどん兵衛的な味わい。アジアの麺料理は日本がダントツに美味しくて、その他の国はスープや具材は素晴らしいものの麺そのものに課題が多いというのが私の持論です。単に私の口に合わないだけかもしれませんが。
前評判通り素晴らしいお店でした。カオソーイ専門店と思いきや、色んな料理がオンリストされており、グループで訪れてもっと色々と注文したい気持ちに駆られる。いっそのこと日本のライセンスビジネス屋が東京に持ってきてくれないかな。

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アキーラ・マナー・チェンマイ(Akyra Manor Chiang Mai)/チェンマイ(タイ)

初めてのチェンマイは「アキーラ・マナー・チェンマイ(Akyra Manor Chiang Mai)」に滞在しました。「スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド(SLH)」に加盟する高級ブティックホテルで、ニマンヘミン(Nimmanhaemin)地区に位置し、空港から車で15分ほどです。
ドライバーからポーターへの荷物の引継ぎ、チェックイン手続きなどは非常にスムーズ。客室数は確か60室ほどと記憶しているのですが、その割にはかなりしっかりとしたロビーのつくりと言えるでしょう。私はヒルトンのダイヤモンド会員なので(ヒルトンとSLHは2025年から提携を開始)、気前よくアップグレードして頂けました。
部屋は広く、中央に謎の風呂場があり(後述)、どこからどこまでを部屋としてカウントすれば良いかわかりません。こちらは入室してすぐの空間です。部屋は薄暗く、寝るときはひとつひとつのスイッチを消して回る必要があり、オシャレすぎてすげえめんどくさい。
ベッドは大きくドッシリとした誂えで寝心地良し。エジプト麺の滑らかなシーツも肌触りがグッド。しかしながらサイドテーブルが無かったり、ライトのスイッチがわかりづらかったりと使い勝手はイマイチ。また、夜でも外(?)でガンガンにクラブミュージックがかかっており、耳栓をして寝ました。
逆サイドからの眺望。ほら、謎の風呂場が見えるでしょ?一人掛けソファの位置もヘンだし、どうにも人間工学を無視した動線なのです。テレビにキャストもできず、オシャレを装ってはいますがひと世代前の仕様に感じる。
デスクとミニバー、化粧台があるエリア。このデスクも使い勝手が悪くって、妙に高く椅子は背もたれ無しのハイチェア。ガッツリとPC作業するには全く不向きです。
ミニバーのラインナップは一般的な高級ホテルのそれであり、ミネラルウォーターとお水・コーヒー類は無料でした。
部屋の大きさの割にクローゼットは小さく、スーツケースをガバっと開く場所と服をかける場所が重複しておりUXが悪い。この部屋を設計した方は、あまりホテルで過ごしたことが無い方なのかもしれません。
目玉のお風呂場。まるで水族館のようであり、どのテンションで入浴すれば良いのでしょうか。外からは見えないように窓は木や壁(?)で覆われているのですが、実質的には窓のない部屋であり、冬の北欧に滞在している気分です。
ウェットエリアも文句なしに使い勝手が悪く、なぜティッシュが無いんだ、なぜここにビンの水が置いているんだ危ないじゃないかと、いちいちイライラしてしまいます。
屋上のプールを覗いてみると、水族館のショータイムのような設営。脇のソファはバー利用客のために設けられたものであり、泳ぐのもその姿を見せられるのも気持ち悪い、お互いが不幸になるプールでした。
フィットネスセンターは地下にあり、会議室ほどの部屋に無理やり機器を詰め込んだ感があります。それにしても地下で真っ暗なので、秘密の人体実験場に閉じ込められたような圧迫感がありました。
朝食は2階のダイニングへ。テラス席が広く取られており、グリーンも味わえて気持ち良い。料理は簡単なビュッフェに加え、メニューにある料理を2品選んでOKとのご案内。
ビュッフェ台にはサラダや果物などが盛りだくさん。東京でたっぷり摂る行為は貴族に等しいですが、東南アジアであれば浴びるように楽しむことができます。
オープンサンドには玉子とソーセージがドッサリ。写真からは見え辛いですが土台には厚切りのカンパーニュが用いられており、程よく酸味があって、本物感のある味わい。玉子がカッチカチに火が通っているのは文化の違いでしょう。
「フィッシュ タコ ラップ」は白身魚のフライをトルティーヤで巻いたもの。分かり易い味わいで素直に美味しい。先のオープンサンドと併せて食べて腹パンです。
タイ料理もあります。こちらはカイクラタ。タイの定番朝食で、熱々の鉄鍋で提供される目玉焼き料理です。豚ひき肉、中華ソーセージ、ベーコン、ネギなどの具材が乗っています。ほんのりとスパイシーでビールが欲しくなる味覚です。
クイジャップ。巻いた米麺が特徴的な豚肉スープ麺料理です。胡椒が効いた濃厚なスープに、揚げ豆腐、ニンニク、ゆで卵、ネギ、揚げて刻んだ豚肉などが具材として入っています。全く辛くなく、日本人の口にも良く合います。
ただ、朝食は悪くないものの、やはり全体としてオシャレを取って付けたようなホテルに感じました。パっと見はクールなのですがUI/UXが最悪で、やはりハイアットやヒルトンなどの世界的ホテルチェーンはシステムが良く練られているなと感心。色んなホテルに泊まることは大事だなと再認識した滞在でした。

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