天雅(てんまさ)/中目黒

中目黒駅から池尻大橋方面へ歩いて7-8分ほどの路地にある「天雅(てんまさ)」。十数年以上にわたってミシュラン1ツ星を維持し続ける実力派であり、食べログでは百名店に選出されています。私の中くらいに嫌いなワインバー「nuit(ニュイ)」のすぐ近くです。
店内は半円型のカウンター席で10席ほど。御影石を起用したシックな仕上がりで、正面にある生け花がかわちいです。奥には個室もある模様。

足木雅彦シェフはご実家が天ぷら専門店で、日本料理店でも腕を磨いたそう。天ぷらと日本料理の両面で楽しむことができる珍しいスタイルのお店です。
ビールは千円を余裕で切り、日本酒も1合で千円を切るものが散見されるなど、この手のお店としては良心的な価格設定です。
先付けは車海老にシロ菜に色んな茸。クリスマスの時期にお邪魔したので、クリスマスツリーっぽく仕上げてくれています。
ブリ大根。といっても氷見のすげえブリを丁寧に起用しており、その辺の定食屋のブリ大根とはモノが違う。九条ネギの独特のぬめりと甘味も心地よいアクセントです。
お造りもブリ。こちらは辛味大根と紅芯大根を組み込んでおり、ブリ大根2.0といったところでしょうか。冒頭のクリスマスツリーにせよ、シェフはひょうきんな方なのかもしれません。
マグロはトンブリと共に頂きます。漬けにすることでネットリとした食感と旨味がさらに増し、トンブリのプチプチとした食感が加わって、口の中が楽しい。白いのは山ワサビで、そのツンとした辛味がマグロの旨味をさらに引き立て、後味をさっぱりとさせてくれます。
八寸は白子にホタテに牡蠣にウニにアンキモ。この料理のラインナップに加え日本酒の充実度合いに察するに、店主は相当の酒飲みとみた。旨いツマミに旨い酒。この世をば、我が世とぞ思ふ望月の、欠けたることも無しと思へば。
天ぷらに入ります。トップバッターはもちろん車海老で、サクっと軽くエアリーな口当たり。ゴマ油の香ばしいかおりが食欲を刺激します。
もちろん脚も付いてきます。身に比べて旨味が凝縮されており、やはり日本酒によく合います。
ハゼ。身はふっくらとしていて、淡白な味わいですが、ほんのりとした苦味も感じられ、噛むほどに旨味が広がります。
大根おろしは肌理の細かいタイプで、ニセコのパウダースノーのような口当たり。天つゆをチョロっとかけてつまめば無限に酒が進みます。
下仁田ネギ。衣はサクサク、中はトロトロ。甘みが強くジューシーなひと品です。
牡蠣。乳白色の滑らかな肌が特長的で、海の滋味が凝縮された濃厚な旨味が堪りません。やはり日本酒が無限に飲めてしまう。
肉厚のシイタケ。カラッと揚がった衣の中から、ジュワっと溢れ出す大地の旨味。噛むほどに、芳醇な香りが口いっぱいに広がります。
スペシャリテのウニの天ぷら。紫蘇の香りがウニの旨味を優しく抱擁し、ダイナマイトな美味しさです。悔しいが旨い、それがウニ。
ゴマ豆腐。ねっとりとなめらかな舌触りが心地よく、ゴマの濃厚な風味が口の中にじんわりと広がります。ゴマ油からの繋がりもあって、オシャレな口直しです。
〆のお食事は天丼か天茶、白ゴハンから選ぶことができ、私は天丼をチョイス。エビ・イカ・貝柱がゴロゴロと詰まっており、口の中で奏でられる食感のシンフォニーが堪りません。タレの美味しさはもちろんのこと、それを受け止めるお米の一粒一粒までが実に上質。ちなみに天茶には一番出汁を注いでくれるそうです。
デザートもクリスマス調に凝っています。芸が細かく、ストラップを通して連れて帰りたいくらいです。

以上のコース料理が2.8万円ほどで、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり3万円強。値は張りますが食後感は心地よく、すっかり酔っぱらってしまいました。

序盤の日本料理エリアが良いですね。あまりに天ぷらが続いて舌が疲れてしまう店が多い中、当店は上質で軽やかなお料理でスムーズに揚げ物に移行するのが魅力的。ツマミとしても活躍するので、酒の強い連れ合いと訪れるとより楽しいひと時を過ごすことができるでしょう。

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天ぷらって本当に難しい調理ですよね。液体に具材を放り込んで水分を抜いていくという矛盾。料理の中で、最も技量が要求される料理だと思います。

てんぷら近藤の主人の技術を惜しみなく大公開。天ぷらは職人芸ではなくサイエンスだと唸ってしまうほど、理論的に記述された名著です。スペシャリテのさつまいもの天ぷらの揚げ方までしっかりと記述されています。季節ごとのタネも整理されており、家庭でも役立つでしょう。