鱗町 白(うろこまち しろ)/金沢

2024年夏にオープンしたばかりの「鱗町 白(うろこまち しろ)」。金沢駅からは少し遠く、犀川大通り沿いにあり、以前は「小松」があった風水の良い立地です。
店内はスッキリとしたインテリアでカウンター8席のみ。シェフは「東山 和今(ひがしやま わこん)」などで経験を積み、「おすしと和食 はた中」で厨房を預かった後、当店を開業したそうです。
ビールは中瓶が千円を切り、ロココが1,600円というのは今や良心的に感じます。日本酒は1合千円強~といった値付けで、半合からご用意頂けます。
菊芋のすり流しではじまりはじまり。土の香りがほのかに感じられ、素朴ながらも滋味深い味わいを堪能できます。白子の表面はカリッと香ばしく、中はとろりとクリーミーな舌ざわり。
あん肝に辛子味噌、白ネギを添えて。濃厚なあん肝に、ピリッと辛い辛子味噌とシャキシャキの白ネギが加わることで、食感と味わいのコントラストが楽しむことができます。
七尾産イシダイの造りとセリ。新鮮なイシダイの造りは、身が引き締まって歯ごたえが抜群で、上品な甘みが口の中に広がります。透き通るような白身は、見た目も実に美しい。
迷いガツオの塩たたき、黄ニラを添えて。肉のような迫力のある個体であり、皮目は香ばしく、口に含むととろける食感。黄ニラのほのかな苦味と香りが加わることで、味わいに奥行きが生まれます。
お椀には香箱ガニのしんじょう。カニの身と内子、外子を混ぜて作られたしんじょうは、まさに海の宝石箱。カツオと昆布から丁寧に引かれたお出汁が、椀に深みを与えています。水が綺麗で風味はひとしお。
海老芋を揚げて、更に炭火で炙ったもの。海老芋はネットリとした舌ざわりが特長的ですが、揚げることで外はカリッと、さらに炙って香ばしく新食感。海老芋界隈のテラ・インコグニタを見ました。
4番サード香箱ガニ。カニの美味しさは当然として、カニの身から丁寧に取ったお出汁のジュレの繊細な味わいが泣かせます。食用の菊の花びらも仄かな苦味と香りを与え、全体の味を引き締めます。
聖護院かぶを使ったかぶらむし。すりおろした聖護院かぶの中に、上品な甘みを持つアマダイと、ホクホクとした食感の百合根が隠されています。お出汁にもカブを用いており、カブよりもカブの味がしました。
ヤナギサワラの炙り。上品な白身魚なので、ちょっとこのタイミングではパンチが弱く感じました。他方、添えられた加賀レンコンのコロッケ(?)は粘り気が強くモッチリとした食感がとても美味しい。
宮崎牛のサーロイン。こちらも美味しいのですが、香箱ガニという旬のスターが控えているため、無理に肉出さんでも良かったかなという気持ちもあります。個人的には下に敷かれた原木シイタケのほうに心を惹かれました。
〆のお食事は香箱ガニのお雑炊。やはりカニの赤い甲羅は映えますなあ。食事に彩りを添え、場が華やぐ。味覚も贅沢な冬の味わいであり、カニ味噌・内子・外子の濃厚な旨味が雑炊の出汁に溶け出しています。またそこに春菊のほろ苦さと香りが加わることで、味わいに奥行きが生まれ上品な仕上がりに。
香の物はキュウリのぬか漬けにサワラゴボウ。まさに和の味覚といったところであり、少し残しておいた日本酒と共にキュっとイキました。
デザートはシナモンのアイスにリンゴのコンポート、リンゴのゼリー。ありそうでないアイスであり、ひやひやのアップルパイを食べているかのようです。アイスクリーム専門店で商品化いけるかもしれない。

以上のコース料理が2万円に、酒を含めてお会計はひとりあたり2.5万円。香箱蟹を心ゆくまで堪能してこの支払金額は実にお値打ち。思いのほかお会計が伸びなかったのは酒量が控えめだったからかな。場面でテンポが悪くなり、酒だけで繋ぐには厳しい局面があったからかもしれません。

とは言え店主はまだまだ若く伸びしろは無限大。数年おきに定点観測したい気持ちにさせてくれる食後感でした。

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