CYCLE by Mauro Colagreco（スィークル）／大手町

大手町駅に直結する複合ビル「Otemachi One」の1階に入居する「CYCLE by Mauro Colagreco（スィークル）」。フランスはマントンの3ツ星「Mirazur（ミラズール）」のMauro Colagreco（マウロ コラグレコ）シェフが監修するレストランであり、当店も1ツ星を獲得しています。
店内は天井が高く窓が広く、ホテルのオールデイダイニングのような雰囲気です。高級感はありませんが高価な誂えで、近いところではグランドハイアットの「フレンチキッチン」に似ているかもしれません。

厨房を統べるのは 宮本悠平シェフで、「ヒルトン東京ベイ」や「レザンファンギャテ」「ベイコート倶楽部」などで経験を積んだのち渡仏。「Mirazur （ミラズール）」ではスーシェフを務めたそうです。
ウェブサイトにワインの情報が無くビビりきっていたのですが、ワインリストを眺める限りそう悪い値付けではありませんでした。とは言えワインのペアリングはまあまあ高い（2.6万円くらい）ので、ワイン情弱には厳しいレストランかもしれません。
ウェルカムスープ（？）として、この日に用いた食材のエキスを抽出したスープ。なるほど色んな味がする。日本料理のお出汁にも通ずる世界観です。
すぐにアミューズが並びます。いずれも手の込んだ味覚であり、グジェールだけでお茶を濁す店とは一線を画す矜持を感じました。
パンはMauro Colagreco（マウロ コラグレコ）のおばあちゃんがどうのこうのという話でしたが、エピソードの長さの割に味わいは中くらいです。もっと肩の力を抜いていいのに。
前菜はカブ。中にはホタテが敷かれており、ハイビスカスの香りもきいていて洒落た味わいです。
宮崎映画に出てきそうな造形ですが、中にはたっぷりの牡蠣が忍んでいます。見た目以上に旨味が強く、青リンゴと下仁田ネギの風味も良く合います。
栗とキノコと子豚。トップを飾るのはフランス産のトリュフであり、その官能的な香りが全体をまとめ上げ、トリュフの必然性を感じさせるトータルコーディネートです。
お魚料理はクエ。その身の弾力と上品な脂が特長的で、淡白ながらも深みのある味わい。オゼイユという、爽やかな酸味とほのかな苦味が感じられるハーブも用いており、モダンな味わいです。
メインは鴨。皮目をパリッと焼き上げ、中はロゼ色に仕上げており、しっかりとした肉質と豊潤な脂の旨味を楽しみます。これぞフランス料理の王道の味覚。添えられたイチジクの濃厚な甘みと五穀米のプチプチとした食感と香ばしい風味が、料理に奥行きを与えます。
デザートはこれまでの料理に比べるとシンプル。マルメロが蜂蜜のような甘い香りを表現しており、バラの華やかな風味も感じられます。ライチのエキゾチックな甘みがよく合う。美味しいだけに、もうちょっと量が食べたかったかな。
小菓子は4種。詳しくは述べませんが、冒頭のアミューズで示した伏線を回収していく、伊坂幸太郎の小説のような締めくくりでした。

以上を食べ、ひとり1本ペースで飲んでお会計はひとりあたり5万円弱。量の割にはちょっと高いかなあというお気持ちです。もちろん都心のど真ん中でミシュラン1ツ星のモダンなフレンチを楽しむことを考えれば、まあ、こんなものかもしれません。
全体を通して哲学的すぎるきらいがあり、循環がどうのこうのと味よりも能書きが多いのも気になりました。我々は倫理の勉強をしに来たわけではなく、友人同士で楽しい時間を過ごしたいだけなのだ。

料理についても泡やタレが多く今っぽい仕上がりのものが多く、素材感を大切にした骨太なフランス料理を好む私とは方向性がやや異なる。これがモダンだと言われればそうなのかもしれないし、現代的なレストランのトップティアに属することは間違いないのでしょう。お疲れさまでした。

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