長町武家屋敷にある日本料理店「比那(びな)」。もともとは魚の串焼きを名物とするお店でしたが、2017年よりコース料理を主軸としたお店へとリブランドしています。金沢駅から歩くと30分近く。片町という飲み屋街に割に近いです。
店内はカウンターが7-8席に個室もあります。正面にあるお面が忍者龍剣伝のようにクールです。南山良太シェフは能登出身で、起用する食材も能登産のものが多い。愛想よく感じの良い方であり、引き寄せの法則でバイトの子たちも皆いい子で元気そうです。
酒は安く、瓶ビールは千円を切り、日本酒も1合千円を切るものが殆どです。東京ってすげえよな、大して旨くも無い焼鳥屋の中ビンが1,100円もするんだもんな。
まずは加賀レンコンのすり流し。そのねっとり感がさらに際立ち、口の中に広がるれんこんの風味が堪らない。そこに香ばしく焼いた秋ナスが加わり、また、淡白ながらも旨味が凝縮されたアマダイもジョインします。なんて贅沢なアミューズなんだ。
おや、春巻きだ。中には能登牡蠣と白ネギが組み込まれており、それを包み込む春巻きの皮はパリッと香ばしく、具材の旨みを閉じ込めています。牡蠣とネギのジューシーなエキスが溢れ出し、鍋料理のニュアンスも感じられます。
タラの白子の蒸し寿司。冬の味覚の王様であり、とろけるような滑らかさと濃厚な旨みが広ります。少しばかり酸味をきかせており、少しもクドくないのが良いですね。
この時期限定の香箱ガニ。言うなればコチラは冬の味覚の女王ですね。小ぶりながらもギュと詰まった味わいで、日本酒が止まらなくなること間違いなし。
ふろふきでしょうか、柔らかく煮た大根にトロリとした白味噌が後を引く美味しさ。揚げた海老芋も堪らない味わいで、外はカリッと香ばしく、中はホクホクでねっとり。まるでクリームのように滑らかな舌触りで、口の中でとろけるようです。
肉吸い。能登牛のミスジとセリを用いており、牛の旨みが溶け出したコクのある出汁にセリの爽やかな香りが加わり食欲をそそります。滋味深い味わいで、体も心も温まります。
お造りは女子好みするプレゼンテーションで、フルーツやお野菜も添えられており彩り豊か。魚の味わいも当然に素晴らしく、とりわけ迷いガツオとクロムツの炙りが素晴らしかった。
能登牛ランプの炭火焼き。赤身と脂身のバランスが良く、炭火でじっくり焼き上げることで、香ばしさが加わります。サクッと軽い衣をまとった舞茸の天ぷらが食感と風味に変化を加える。ねっとりとした里芋ソースは、肉の旨みとまいたけの風味を優しく包み込み、まろやかな味わいを演出します。
ブリしゃぶ。思いのほかお出汁のボディがしっかりとしており、脂の強い魚に負けない味わいです。春菊は独特の苦味と香りが心地よく、ブリの旨みと見事に調和する。シャキシャキとした食感も、心地よいアクセントです。
お食事は能登のコシヒカリ。おかずに何と鰻の串焼きまでお出し頂けました。写真を見返すだけでも香ばしい匂いが立ち込めてくるようです。炊きたてのゴハンも一粒一粒がつややかで、口に入れると仄かな甘みが広がります。
デザートは白あんの苺大福。滑らかで上品な甘さであり、甘酸っぱい苺の果汁に良く合います。一般的にな餡よりも、白あんのほうが合うのではないか、という気付きを与えてくれた締めくくりでした。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計は1.6万円ほど。ダイナマイトな費用対効果です。これで一番高価なコースであり、魚串主体のプランであれば1万円を切るとのこと。ここは地上の楽園か。大工町「よし村」でも同じことを思いましたが、東京で和食を食べることの意義について改めて考えさせられた夜でした。
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