Auberge TOKITO(オーベルジュ ときと)/立川

2023年に立川にオープンした「Auberge TOKITO(オーベルジュ ときと)」。2019年に閉業した料亭「無門庵(むもんあん)」をリノベーションしたそうで、近くの「ソラノホテル」も経営する立飛グループが手掛けています。ちなみに立飛グループは立川市の全面積の約4%を所有する立川の大家ですこれ豆な。
当館は1泊40万円前後もする高級オーベルジュですが、ダイニングはビジターにも解放されており、我々はランチでお邪魔しました(写真は公式ウェブサイトより)。料理人たちは嵐山吉兆系の方が多く、海外の日本料理店で経験を積んできたようです。
当たり前に酒は割高なのですが、覚悟を上回る値付けの高さでした。ギャフン。サービス料15%がボディブローのように効いてくる。サービス料15%ってすげえよな。ロブションベージュが12%、外資系ホテルですら13%だぜ。自分たちはそれらの接客レベルを本当に超えているのか、胸に手を当てて改めて考えて欲しいところです。
まずはイワシ。脂が乗って素直に美味しい。身の下側には内臓なども全て含んだ白和えが潜んでおり、酒を呼ぶ旨さです。レモンと柿のソースも洒落てます。
お椀はハッキリとした味付けで、吉兆系とは思えぬほど力強い味覚。トップを飾るのはイノシシの生ハムというのも面白い。お魚はキジハタで、上品な白身と程よい脂が心に残りました。
お造りはマトウダイとイカ。なのですが、あれ?結局このお店って和食なの?「オーベルジュ」「アルティザン・キュイジーヌ」という言葉に誘われてフランス料理だろうと勝手に思い込んでいたのですが、このあたりで考えを改める必要があることに気づきました。もちろんきちんと下調べをしていなかった私の責任です。
メインは鴨。って、え?もう終わり?確かにショートなランチコースを予約した記憶はありますが、食事の時間よりも都心からここへ辿り着くまでに要した時間のほうが余程長い。もちろん鴨そのものの味わいは絶品で、付け合わせのお野菜も上質オブ上質なのですが、腹の具合は3分目といったところです。
良かった良かった〆の食事がありました。命拾いしました。シャモを用いた炊き込みご飯であり、仕上げに卵黄の天ぷらをトッピング。お代わりもOKで、都合3杯食べてようやく満腹です。
デザートは洋梨を主体に白州12年を用いるという面白い試み。もちろん美味しいのですが、ここだけ随分とフランス料理ライクであり、けっきょく何料理だったのかわからずじまいでフィニッシュです。
ハーブティーにカヌレとパートドフリュイというフランス菓子でフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり2万円。料理は普通に美味しく東京で立派な日本料理を食べることを考えれば妥当な価格設定かもしれませんが、少々の物足りなさを感じたランチでした。

そもそも立川という微妙に都会な立地でオーベルジュを開業し、「アルティザン・キュイジーヌ」を標榜しつつも提供するのは風変わりな日本料理であり、それでいて武蔵五日市の「L'Arbre(ラルブル)」のように徹底的に地産地消に拘るわけでもない。これなら旅館で良くない?もしくは京都の立派なホテルに泊まってタクシーで日本料理を食べに行くとか。

もちろん現場で働くスタッフたちに非は一切無く、コンセプトが私の価値観に合わなかっただけでしょう。お疲れ様でした。

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