麻布十番で好評を博した「オルタンシア(Hortensia)」が新富町にて再始動。開業して1年で早速1ツ星を獲得しており、流石の力量を感じさせます。ちなみに店名はアジサイを意味します。
店内はライブ感満載のカウンター席が8に個室がひとつ(写真は公式ウェブサイトより)。虎ノ門の「unis(ユニ)」とまでは言わないまでも、イマドキの誂えだなあと恐れ入ります。
古賀哲司シェフは「ブリーズ オブ トウキョウ」や「エディション・コウジ シモムラ」を経て麻布十番で「オルタンシア(Hortensia)」を開業。いったん閉業し、しばらくはカトープレジャーグループなどの裏方に回っていたそうです。
飲み物はショッキングなほど高価。酒屋の4-5倍は当たり前の値付けであり、つらい、つらすぎる。ワイン愛好家としては胸が締め付けられる思いでした。ワインリストも全くショボいので、経営者はあまりワインに思い入れが無いのかもしれません。さっそく米をどないかしたものに根菜類のピクルスが組み込まれているのですが、あまりにフラワーでありグロテスクに感じます。口当たりも悪く、意図のよくわからないひと品です。
アミューズは7種と凝りに凝っており、そのいずれもが素晴らしい出来栄えです。それぞれにビッグライトを照射して前菜として腹いっぱい食べたいくらいです。ブルターニュ産のオマールブルー。引き締まった身から溢れる濃厚な甘みと旨味が魅力的。カリフラワーの優しい味わいにココナッツの南国を思わせる甘い香りが溶け込み、洒落た味わいです。
ヒラメとホッキガイ、ウニ。海の幸がギッシリと詰まっており、それをバターを主体としたコッテリとしたソースでまとめます。バターのコクと風味が、ヒラメの繊細な旨味、ホッキガイの甘み、ウニの濃厚な旨味を包み込み、実にリッチな味わいです。
パンは自家製。素朴な味わいであるものの、噛みしめるごとに穀物の風味が滲み出てきます。ちなみに終盤に〆の炭水化物が出てくるので食べ過ぎ注意です。小甘鯛と車海老。小甘鯛は淡白な白身でありながら、上品な甘みと旨味が特長的。皮はパリッと香ばしく、身はふっくらと仕上がっています。車海老はスーパーエビフライとも言うべき品質であり、全体を通してムール貝とイカスミの旨味もきいていて、酒を呼ぶひと皿です。
メインは飛騨牛。手前のフィレはとろけるような舌ざわりであり、決して脂臭くなく、今年食べた牛肉で一番旨いんじゃないかと思えるほどです。ソースには生山葵の風味をきかせており個性的な味わい。シェフのセンスが光る肉料理でした。
〆のお食事にリゾット。貝の旨味と食感をいかしており、磯の香りが支配的。緑色にはエゴマを用いており、その香ばしい風味も魅力的。量もたっぷりで食べ応えがあります。スープも出ます。本日の食材のほぼ全てを詰め込んだ液体であり玄妙にして複雑。アクセントに松茸もきいていて、丼いっぱいにして描き込みたいくらいです。
デザートもたっぷりサイズ。秋の味覚の代表格であるブドウを贅沢に用いており、甘酸っぱさを凝縮した味わい。ココナッツで炊いたわらび餅もセンス良く、バニラの香りと組み合わさって複雑で奥深い味わいが生まれます。以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり4.5万円。料理はパーフェクトに美味しいのですが、さすがに飲み物の値付けが悪すぎて心証を失いました。ワインの持ち込み料は1本5,500円と高めではありますが、それでも持ち込んだ方が納得感があるでしょう。料理は良いのに何だか色々もったいないなあ。
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