アジア人として初めてフランスのミシュランガイドで3ツ星を獲得した小林圭シェフと和菓子の老舗「とらや」がタッグを組み、御殿場「メゾン ケイ(Maison KEI)」に続いて銀座に開業した「ESPRIT C. KEI GINZA (エスプリ セー ケイ ギンザ)」。場所はまさに銀座であり、虎屋銀座ビルの11階に入居します。
当店の厨房を預かる杉本昌久シェフはホテルや「オテル・ドゥ・ミクニ」で経験を積み、スイスやフランスで腕を磨き、「メゾン ケイ(Maison KEI)」ではスーシェフを務めたそうです。
グラスのシャンパーニュはバリ高いのですが(加えてサービス料は12%だ)、ボトルの値付けは銀座という立地を考えれば悪くありません。ブルゴーニュ主体の今っぽいラインナップである一方、ローヌの赤が妙に充実していたのが印象的でした。
まずはシグニチャーの最中。「とらや」謹製の最高品質の最中に毛ガニがびっしりと詰め込まれます。ホウレン草をベースにしたソースや蟹味噌を使ったバターなども含まれリッチな味わい。キャビアや金箔も挟まれ実にゴージャス。
定番のトマトのサラダ。綺麗な甘さを奏でるアメーラトマトにアーモンドミルクのまろやかさが加わることで、トマトの甘みと酸味がさらに引き立ちます。液体窒素でシャーベット状にしたバジルの爽やかな香りとほんのりとした苦味が、トマトの甘みとアーモンドミルクのコクに絶妙なアクセントを加えます。
豚肉と鴨のパテ。豚肉の脂の甘みと、鴨肉の濃厚な旨味が合わさることで、奥深い味わいが生まれます。それぞれの肉の個性を引き立て合い、互いに補完し合うことで、至福のバランスを生み出しています。
カンパーニュは御殿場と同じく「ブーランジェリーパティスリーアダチ(Boulangerie Patisserie ADACHI)」のものでしょうか。外側はカリッと香ばしく、中はしっとりモチモチ。噛むほどに穀物の風味が口の中に広がります。パリ本店で人気のMAKI。具材はいろいろあって、私は炭火で香ばしく焼いた鰻をチョイス。色んなソースや万願寺唐辛子、生ワサビにピクルスなど和食とはまた違ったアプローチであり、手巻き寿司の新たな可能性を感じさせる逸品です。
お肉は鳥山牧場の紡ぎ和牛。パリ本店でも同じブツが用いられているそうで、きめ細やかなサシと、赤身のバランスがとれた肉質が特長的。炭火焼きにすることで、表面は香ばしく中はジューシーに仕上がります。牛肉のエキスが凝縮されたクラシックなソースが泣かせるねえ。味に豊かな膨らみがあるのだ。
お腹に余裕があったのでカレーを注文。見た目は可愛らしいですが、味わいは実に複雑で、野菜の甘味と酸味に所々スパイシーさも感じられ、カレー専門店としてスピンオフして欲しいくらいです。
甘味に入ります。「とらや」の最中と餡を用いた作品で、濃厚なキャラメルのアイスクリームにとても良く合う。キャラメルやヌガーの苦味もあり大人な味わい。
フランスの伝統菓子であるヴァシュラン。焼きメレンゲにアイスクリームやホイップクリームを掛け合わせて楽しむものですが、やはり「とらや」のあんこソースが用いられます。フランス菓子にあんこってこんなに合うんだなあ。和菓子の伝統と、洋菓子の技術が融合した革新的なひと品です。
お茶菓子にフィナンシェ。こちらにも「とらや」のアンコが挟まれ、「とらや」の魅力を再認識したディナーでした。
美味しかった。創作的な料理でありつつも、それぞれがきちんと美味しく、とらやのエスプリも効いており、記憶に残る食事です。サービス陣ももちろん完璧で、あんなに潤沢にスタッフを用意して儲けは大丈夫かとこちらが心配になるほどです。
やや派手派手した雰囲気なので、デートというよりは旨いもの好き同士の賑やかな食事会に向いているかな。御殿場「メゾン ケイ(Maison KEI)」とはまた違った魅力が感じられる、今ドキのレストランでした。
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