焼鳥 一(まこと)/不動前

不動前の駅から歩いてすぐのビル地階にある「焼鳥 一(まこと)」。2023年8月にオープンした新しいお店であり、ランチタイムは二毛作でラーメン専門店として営業しているようです。
店内はカウンターに12席のみのワンオペ店です(写真は食べログ公式ページより)。火を使うお店なのに冷房が全然きいておらず、すげえ暑い。脱衣所みたいな環境です。

猪股和弥シェフは18歳からの約7年間は地元の長野においてラーメン屋で働き、上京して4年ほど焼鳥屋で経験を積んだのち、当店を開業したそうです。ネット上には彼の人柄について言及する口コミが多いですが、私が接した限りは普通に愛想の良いニイチャンでした。
飲み物はびっくりするほど高いですねえ。サッポロラガー赤星の中瓶が1,000円もする店は初めてで、私の知る限りでは世界で一番サッポロラガー赤星が高いお店です。その他の酒もバリ高く、グラスワインは量も少なく、都心5区のちょづいた飲み屋を超えてくる価格設定です。
料理はおまかせで、焼鳥のほか、一品料理もいくつか途中で出てくるスタイルです。お通しは栗のポタージュに洋梨白和え、カボチャのおひたし、舞茸を揚げたもの。決して不味いわけではありませんが、客単価1万円を超える店の料理としては雲行きが怪しい。
最初にササミ。肉は名古屋コーチンと軍鶏の交配鶏「信州黄金シャモ」を中心とする銘柄鶏を使用しているそうで、程よくレアに仕上がりシットリとした美味しさです。

ちなみに串モノは「鳥しき」のようにストップ制で、腹8分目ぐらいで「そろそろ」と声がけすると、現在準備している数本を出して終わりという仕組みです。
だきみ。皮目がカリっとしており、自己の脂で揚がったような質感で実にジューシー。身の部分も肉そのものに味がある。
冒頭の悪い予感は当たるもので、このあたりから料理の供出テンポが異常に遅くなってきました。原因は店主の常連客とのおしゃべり。しかもその内容が過去の客の悪口ばかりで、「この前はあんな客がいた、こんな客がいた、追い返してやった、ガツンと言ってやった」的なエピソードを武勇伝として店主が延々と語っています。

「口ではなく手を動かしてくれませんか?」とお願いしようかとも思いましたが、今度は私が悪口を言われるターンとなるのは火を見るよりも明らかなので、大人しくしていました。
ビーツのホイル焼。これはまあ、ビーツですね。ビーツを焼いた味がします。
皮は割と黒焦げで苦味が支配的です。食べログの公式ページの案内文においては「部位によって最適な火加減を追求し備長炭で焼き上げることで、お肉の魅力を最大限に引き出します」と宣言しているのですが、店主が予約電話に対応している間、焼き台はほったらかしでした。
じゃがバタ。これはまあ、じゃがバタですね。じゃがバタの味がします。
店主と常連客との井戸端会議が芸能人の噂話にまで及び、言うことにいちいち棘と含みがある。まるでヤフーニュースのコメント欄を音声で聞いているかのようです。そんな中で食べるつくねの味など中くらいである。
聞いちゃいられないので〆てもらうことに。手巻き寿司とのことで、恐らく(鶏の)キンカンなどがトッピングされ面白い試みです。ただしタルタルソース(?)の味覚はちょっとどぎつく感じました。
お椀も出てきます。お団子の美味しさはもちろんのこと、スープにボディがあって、なるほどランチタイムのラーメンも旨そうだと期待させる方向性です。〆の食事としてラーメンも注文できるのですが、私は夜だけメニューの親子丼でお願いしました。お出汁たっぷりお肉たっぷりで中々の美味しさです。
以上を食べ、2杯だけ飲んでお会計はひとりあたり1万円強。ぶったまげました。焼鳥なんてほんの数本しか食べてないのにこの支払金額には流石にぶったまげました。すぐ近くの「焼き鳥 津田」と比べると、残酷な費用対効果と言わざるを得ません。
食べログ公式ページを確認すると「サービス料・チャージ 10%頂戴いたします」とのことで、ワンオペの焼鳥屋でカウンター越しにホイっと置くだけなのにサービス料が10%とは恐れ入る。つまりサッポロラガー赤星の中瓶が1,100円という計算。理屈はそうかもしれませんが、ゲストが納得できるかどうかは別問題です。

お金の話はさておき、他の客の悪口ばっかり言う接客スタイルも何とかならないものでしょうか。常連のように知った仲であれば、そういった話は聞いていて面白く感じるのもわからなくはないですが、いつ自分たちが悪口を言われる側に回るかわかったものではないということを指摘しておく。深淵を覗き込む時、深淵もまたこちらを覗き込んでいるのだ。
冒頭に「ネット上には彼の人柄について言及する口コミが多いですが」と記しましたが、なるほど私も知らず知らずのうちに人柄について言及してしまいました。すごいパワーだ。
加えてどの低評価にも無反省に全力で反論しているので、なかなかに読み応えがあります。グーグルマップ文学として素直に面白い。人生は近くで見ると悲劇ですが、遠くから見れば喜劇なのかもしれません。

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焼鳥は鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、これほどバリエーションが豊かなのが面白いですね。世界的に見ても珍しい料理らしく、外国人をお連れすると意外に喜ばれます。
素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。