ドゥエ リーニュ プリュス (Due ligne +)/牛込柳町

四ツ谷から牛込柳町に移転した「ドゥエ リーニュ プリュス (Due ligne +)」。瀬野景介シェフはイタリアンでもフレンチでも経験があるそうで、なるほど店名にも伊語と仏語が混在しています。何でもないビルの2階という立地であり、通り過ぎてしまわないようにご注意を。
店内はカウンターが6-7席にテーブルが1卓。なのですが、シェフがワンオペで対応するため席数(組数)は絞っているようです。この日のコースの所要時間は4時間と長丁場ですが、目の前でシェフとおしゃべりしながら進捗するので、あっという間に時間が過ぎていきます。
ペアリングというシステムはなく、その日に開いているグラスワインの中から料理に向いているものを合わせていくスタイル。ただ、強い料理に比べるとワインの存在感は押され気味であり、知識のある方は自力でボトルを注文したほうが良いかもしれません。
アミューズにフォアグラバーガー。フォアグラの中には栗が組み込まれており、脂質たっぷりのフォアと共にリッチな味わい。どこかビターなニュアンスも感じられ、今後の展開に期待を持たせるひと口です。
写真では見えませんが、底にサワラが敷かれており、その上にシャインマスカットやイクラをトッピング。生姜のサッパリとした風味が心地よく、また、甘口ワインに漬けたイクラも実に濃厚。イクラにソースとしての役割を持たせる興味深い試みです。
お魚はキンキ。シンプルに焼き、キノコと共に味わいます。ソースはキノコのエキスを中心に組み立てており、素朴ではあるもののエネルギッシュな風味を感じます。魚が妙に旨いのですが、「SÉZANNE(セザン)」「晴山(せいざん)」と同じ魚屋から調達しているそうです。
豚足。私は一年のうち大半を沖縄で過ごすひとかどの豚足通なのですが、こんなに美味しい豚足は食べたことがありません。外はカリッと香ばしく、中はとろけるようなゼラチン質の食感と、豚肉の旨味が堪らない。ソースには濃厚なセップ茸の風味が凝縮されており、また、ソテーしたキノコも説得力のある味わいです。
イカスミのパスタ。イカには新イカ、パスタにはカペリーニを用いており、ほのかに温かい状態で提供するのが特長的。イカの身の甘みと内臓のコクが酒を呼びます。
小籠包。生地には月桃を練り込んでおり印象的な香りが広がります。ただ、小籠包としては文句なしに美味しいのですが、ちょっと意図がよくわかりませんでした。
ピチにはサンマとナスを起用します。ピチとは小麦粉と水だけから作られる、丸くこねた太麺パスタです。讃岐うどんのようにコシがあり食べ応え抜群。サンマの苦味とナスのとろけるような食感が組み合わさり、鮮烈の極みとも言える旨さです。
続くパスタはマッケロンチーニ。細く滑らかな口当たりのパスタであり、クリーム系のコッテリしたソースに良く合います。原木マイタケの香りも素晴らしく、芳醇という表現がぴったいりのひと品です。
メインはクルスタッド。牛のテールやホホ肉をじっくりと煮込み、パイで包んで丁寧に焼き上げます。パイのサクサクとした軽い食感と牛肉の濃厚な味覚が良く合う。ソースも重厚オブ重厚で、これぞフランス料理といった締めくくりでした。
デザートも数種類用意されており、私は温かいチョコのケーキにグラッパのアイスをトッピングして頂きました。このアイスが凄くって、本当にグラッパそのものであり、この後の運転は許されないほどのグラッパ感があります。

以上を食べ、料理にワインを合わせてもらってお会計はひとりあたり2.8万円。料理の質および量を考えれば全くもってリーズナブル。芸風としては乃木坂「La couleur d'ete(ラ クルール デテ)」に似ているかな。選んだ孤独は良い孤独。先述した通り長丁場なので、会食や付き合いの浅いカップルには不向きかも。食べるのが大好きな料理仲間と共に、ワイワイ楽しくやりましょう。

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