L'Arbre(ラルブル)/武蔵五日市(あきる野市)

あきる野市は武蔵五日市駅から歩いて15分ほどの場所にある「L'Arbre(ラルブル)」。明治8年(西暦1875年!)に建てられた「小机家住宅」を改装し、東京都下、多摩・島の食材を活用したフランス料理を提供します。店名はフランス語で「樹木」を意味します。
店内は畳敷きにテーブルを据えたエリアと厨房に面したカウンター席のエリアに分かれます(写真は公式ウェブサイトより)。

松尾直幹シェフは帝国ホテルの「レ セゾン」で長く腕を振るったのち、当店を開業。料理だけでなく、近所の農地で自ら耕作も進めているようです。
ワインはフランスものが中心で、ペアリングの用意もあります。ビールや日本酒は地元の酒造のものを意図的に集めているのが良いですね。一方で、ドリンクの提供速度の遅さが目立ちました。これは歴史的建造物を無理くりレストランに転用した弊害かもしれません。何をするにしても動線が長すぎるように見えます。
この日の食事は1周年特別コース的なものであり、普段提供している料理よりもクラシックに寄せたフランス料理とのこと。アミューズでの小さなクロックムッシュみたいなやつがバリ旨かった。あと100個欲しい。
ババロワには新生姜が用いられており、仄かに甘くピリっと辛く、オシャレな味覚です。マンゴーやパッションフルーツがトッピングされており、なるほどこれらの産地である小笠原も東京都であったか。
パンは近所のパン屋さんから取っているそうで、素朴な仕立てでありながらしみじみ旨い。添えられた焦がしバターも良い味を添えています。
地元の舞茸をソテーし、赤座海老のポワレをトッピング。写真からは目立ちませんが、この舞茸は実に美味しいですねえ。お隣の檜原村(ひのはらむら)で採れたブツだそうで、東京は広いなあとしみじみ感じ入ります。
金目鯛はゆっくりじっくり加熱されており、ふっくらと仕上がっています。こちらは八丈島の漁師からダイレクトに調布飛行場に送ってもらっているそうです。ソースは王道のブールブランソースでクラシック好きには堪らない美味しさです。
メインはフランス産の小鳩。うら若き個体をじっくりと焼き、肉そのものの美味しさを最大限に引き出します。ソースはサルミでガラや内臓までをも煮込んでおり、濃厚で深いコクがある。濃いめの赤ワインを合わせて至福のひととき。
デザートはお部屋を移動してゆっくりと愉しみます。このあたりの運用は「うかい亭」に似ています(写真は公式ウェブサイトより)。
和栗のモンブラン。秋の甘味の王様であり、風味豊かながら軽やかな味わい。こちらの和栗もあきるの市で採れたものだそうで、そういえば道中いくつかのいがぐりを見かけました。
食後に小菓子と狭山茶。西多摩地域で作られている日本茶で、コクと旨味が強いのが特長的。程よく香ばしく、コーヒー紅茶など欧米系の飲料に負けないパワーを発揮します。

以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり2万円ほど。同等の料理を都心で楽しめば数割は高くなることを考えれば大変お値打ち。地元の素材を多用しているのも面白く、へえ東京でこんなものまで採れるんだと勉強になったランチでした。
近くには秋川渓谷もあり、東京とは思えないほどの大自然の中、鮮やかな紅葉を楽しむことができます。木曜日はアラカルトもやってるようなので、それに合わせて来るのもええな。

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