ここは中高年女性のディズニーランド?生まれて初めて歌舞伎を観に行きました。

遅まきながら、生まれて初めて歌舞伎を観に行きました。歌舞伎なんてのは金持ちの道楽で私には縁の無い世界と考えていたのですが、安いチケットだと事前予約で6千円程度であり、当日の自由席だと千円台~楽しむことができます。入場時にIDのチェックも無く、映画を観るのと変わりません。
私がお邪魔したのは9月の歌舞伎座のもので、「太宰館花渡し」「吉野川」「勧進帳」の3部構成(写真は公式ウェブサイトより)。「太宰館花渡し」「吉野川」というのは「妹背山婦女庭訓」というスターウォーズみたいなシリーズ物の一部であり、そのエピソード3だけを観たとお考え下さい。

お!松本幸四郎!知ってる!松たか子のお父さんだ!と思いきや、私がテレビ等でよく知っていたのは9代目松本幸四郎のようで(現在は2代目松本白鸚)、今回出演していたのは10代目でした。歌舞伎のこのシステムは素人には難し杉ですが、だからこそヲタを惹き付けるのかもしれません。
我々は6千円の安い席を予約したのですが、それでも見え辛いという印象は全くありません。むしろ素人は途中で寝てしまうことも多いので、まずはこういった奥ゆかしい席から観劇するほうが良いでしょう。座席は狭くシネコンよりも居心地は悪い。「前傾姿勢NG」という独特のルールが存在し、また、演目中は電波遮断装置が働いているのか通信機器が一切使えなくなるのがハイテクでクールです。
「太宰館花渡し」は上演時間20分、「吉野川」は115分、「勧進帳」は73分と演目によって幅があります。演目と演目の間は30分近い休憩時間が設けられ割とヒマするのですが、その間に前の大道具を撤去して新たなステージをセッティングしていることを考えると、プロの仕事を感じます。
幕間はとにかく食べる食べる食べる。お前ら歌舞伎に来てまでそんな食いたいかよと思うほど、皆、モグモグムシャムシャ食べています。これが本当の「幕の内弁当」なのでしょう。ただ、弁当ならまだ理解できるのですが、持ち込んだパンやおにぎりまで必死で食べる様は、素人の私の目にはいささか奇異に映りました。
ところでコチラの緞帳(どんちょう)、刑務所の布団の柄に似てると感じるのは私だけでしょうか。その他にも歌舞伎のトンマナは独特で、例えば赤い化粧を施しているのは正義の味方、青いのが悪者で、茶色いのは化け物という設定だそうです。黒子は見てはならない、居ないものと捉えるのがお約束。また、スタッフは皆、黒髪でネイルもしておらず、看護師みたいな雰囲気の方が多いように感じました。
さて、「太宰館花渡し」「吉野川」というシリーズものですが(写真は公式ウェブサイトより)、端的に言うと蘇我入鹿スタイルのロミオとジュリエットであり、ラストは生首がどうのこうので結構グロいです。「女はすっこんでろ」的なニュアンスのセリフも頻発し、そもそも歌舞伎に女さんは出演してはならない決まりもあるので、ポリコレ的にどうなんだろうという余計な心配をしてしまいました。ツイフェミたちはどうしてこの界隈に切り込まないのだろうか。
ステージは1805年に歌川豊国が描いた通りで胸熱。「ラストは生首がどうのこうの」とネタばらしをしましたが、ストーリーは知ってる前提で進行するので、必ず予習をしてから臨みましょう。私はセンター試験で古文は満点だったのですが、それでも初見では全く理解できなかったはず。途中から5代目坂東玉三郎が本当にオバサンみたいに見えてきて、ここでもプロの仕事を感じます。御年74歳なのですが、連日休み無しでぶっ通しで勤務しており、労基的に大丈夫そ?
続いて「勧進帳」。初演は1840年の超ロングラン公演であり、歌舞伎界隈でも1・2を争う人気演目です(写真は公式ウェブサイトより)。弁慶がハッタリかまして検問を突破する話なのですが、最後は酒を一気飲みして酔っぱらって踊ってフィニッシュという、テニスサークルのような締めくくりです。こういうのが江戸時代からウケていたことを考えると、人間ってのは進歩しないんだなあと、急に親しみが沸いてきました。ちなみに舞台は小松の「安宅の関」なので、小松空港を利用するついでに遊びに行くと教養が深まるでしょう。
総括すると、ここはオバチャンたちのディズニーランドですね。ゲストの殆どは中高年の女性であり、皆、着物という名のコスプレを楽しみ、売店でフードを買い食いし、ショーを観る。あるいは古より伝わる推し活という趣もあり、生写真を買い、ロビーで見せ合いっこし、グッズを買い、沼にハマれば全公演を追っかけて贔屓筋として役者にプレゼントを贈る。ジャニーズにせよ宝塚にせよ、やってることは江戸時代から変わらんなあと妙に感心した一日でした。

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