五反田駅から歩いて7-8分の「Ristorante Angelo(リストランテ アンジェロ)」。2010年オープンと歴史あるお店なのですが、完全に写真NGなレストランであるため、変なインスタグラマーやちょづいたブロガー(決して私のことではない)が集まらず、結果としてネット上に情報が流れていません。
店内は白と黒を基調としたシックな雰囲気(写真は食べログ公式ページより)。ご夫婦で営業されているようで、おふたりで回すにはちょうど良いサイズ感。ゲストはSNSとは無縁の落ち着いた善男善女がばかりです。私がそうです。
アミューズは3種。ピザ生地を薄く焼いたスナックに球体の大根、イクラ。イクラは軍艦巻きのシャリ抜き全てがイクラといった勢いであり、贅沢な気分に浸ることができます。
円柱状のグラスに入った温菜はホタテ。茶豆やクスクスと組み合わせており、ホクホクとした食感を楽しみます。チョリソや柑橘も含まれており、色んな味がする。
淡路島のハモ。当店は関西に地縁があるのか、淡路島や和歌山の食材を多用します。きちんと骨切りされたハモをプラムと共にトマトのスープで楽しむ。生の落花生が心地よいアクセント。
続いてフラン。ホロホロ鳥のエキスを用いており旨味のボディを感じさせるひと品。トリュフもトッピングされているのですが、やや分厚く口当たりが悪く、その割に香りに乏しいのが勿体ない。
お魚料理はサワラ。世界一お洒落な海鮮ユッケといった相貌で、レアな部分・少し焦がした部分と風味のグラデーションを楽しみます。燻製の香りも心地よく量もたっぷり。本日一番のお皿です。
パスタはフェデリーニ。そういえば当店はイタリア料理店でした。フランス料理風の料理が続いたので、パスタが無ければフランス料理に思えてしまう構成です。鯛や栗など日本料理のような組み合わせです。美味しいのですが、細麺で量も少なく物足りなさを感じました。
メインは紀州鴨。肉質がきめ細かく、深い味わいと芳醇な香りが特長的。ほど良く弾力があり肉そのものが美味しい。脂もしつこくなく、上品な甘みが口の中に広がります。
デザートはブランマンジェにシャインマスカット。素材の風味が活きたひと品であり、隠し味のタラゴンが独特の甘い香りとほのかな苦みを放ちます。
ハーブティと小菓子でフィニッシュ。ごちそうさまでした。15,000円ほどのコース料理に2人で泡を1本飲んで、お会計はひとりあたり2万数千円といったところ。お店の雰囲気や料理の質を考えれば悪くない価格設定です。ちょっと量が少ないかな。帰りにうっかり「おにやんま」に寄りそうになりました。大食漢は高いコースで注文したほうが良いかもしれません。
また、フランス料理のように絵のような美しい料理ばかりなのに、写真NGというのはちょっと勿体なく感じました。気難しい店なのかと思いきや、マダムは気さくに話しかけてくれるし、それほど高潔な雰囲気でもないのに(そもそも立地は五反田セクシャルプレイスだ)、どういう意図があるのだろう。接待中に写真をパシャパシャ撮る方は少ないでしょうから、会食での利用などを志向したお店なのかもしれません。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉) ←ちょっとした海外旅行に来たような満足感。
- ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出(和歌山) ←我が心のイタリアン第1位。
- プリズマ(PRISMA)/表参道 ←高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。
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- merachi (メラキ)/西麻布 ←質実剛健ながら日本的な繊細な感性も感じられる。
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- リストランテ ラ・バリック トウキョウ(La Barrique Tokyo)/江戸川橋 ←無冠の帝王。
- TACUBO(タクボ)/代官山 ←ポイントは二番手の存在。
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- ひまわり食堂/富山市 ←こねくり回すことなく、いま何を食べているのかハッキリとわかる味と量。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。