武蔵小山駅から歩いて5分ほどの住宅街に佇む「GOLDEN CHIME (ゴールデン チャイム)」。2024年2月にオープンしたばかりの新しいお店であり、原宿「フォンダ・デ・ラ・マドゥルガーダ」や目黒「BOSQUE(ボスケ)」の系列店のようです。
店内はカウンター席に加え、ボックスシート席と小さなテーブル席があります(写真は食べログ公式ページより)。子連れやペットがOKなのは武蔵小山らしい方針。シェフは青森県出身で、イタリアで腕を磨いたのち「クオーレ アズーロ(Osteria e Bar Cuore Azzurro)」にも在籍していたそう。イケメンで感じの良い好青年です。アルコールは高くなく、ボトルのワインは4千円台から始まります。イタリアワインを中心にフランスものも多く、何なら日本酒や焼酎、テキーラまで置いています。お通しがきちんとしており、パプリカにタラの塩漬けが詰まっています。魚の塩気と旨味が酒を誘い、鮮やかでふくよかな風味を愉しみます。
野菜を摂ろうとルッコラのサラダを注文するのですが、山盛りで登場し嬉しい不意打ち。ほろ苦いルッコラの味わいが食欲を刺激する。
ブッラータに青森県産の筋子をトッピング。「すし初」のアレを想起させる味わいであり筋子の塩気とストラッチャテッラのリッチな乳脂肪が良く合う。
トウモロコシのビアンコマンジャーレ。甘いトウモロコシをプリン風に整えました。トップを飾るのはナッツとスパイスであり、トウモロコシの甘味との対比が面白い。そうそう、当店はスパイスを多用するイタリアンとして他店との差別化を図っているそうです。
鶏レバーのクロスティーニ。これはもう、どっちゃくそ美味しいですねえ。色合いは毒々しいですが味わいに濁りが無く、ザラりと鉄を感じさせる舌ざわりにゾクゾクします。ハーブの使い方も心地よく、犯罪的な旨さです。
パドロンのフリット。ピーマンの一種であるパドロンに生ハム(?)など色んな食材を詰め込み、衣を付けてフワっと揚げ切ります。添えられたソースが超弦理論のように複雑な味覚であり後を引く美味しさです。スペシャリテのスモークスパイシーレッグチキン。鶏のモモ肉をスパイスでじっくりと煮込んでおり、フワフワとろとろクセになる味わい。イタリア料理店としては珍しい料理ですが、そういったジャンルを超える鮮烈な味覚。これが1本750円とは武蔵小山の奇跡と言えるでしょう。
モディカ風ペーストのパスタ。シチリアのモディカ発祥のパスタ料理であり、シェフのシチリア修行における集大成。ツナ・カラスミ・ドライトマト・青唐辛子・ミントなど多種多様な食材が用いられており複雑にして玄妙な味わいです。以上を食べ、手頃なワインをひとり1本ペースで飲んでお会計はひとりあたり1万円と少し。料理の質および量を考えれば見事な費用対効果。スパイスを多用する芸風というのも面白く、ただ面白いだけでなくきちんと料理として調和しているのが素晴らしい。「オステリア マキ(OSTERIA MAKI)」や「イタリアン食堂 MAS」など、武蔵小山は個性的なイタリアンが沢山あるなあ。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉) ←ちょっとした海外旅行に来たような満足感。
- ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出(和歌山) ←我が心のイタリアン第1位。
- プリズマ(PRISMA)/表参道 ←高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。
- 三和(さんわ)/白金台 ←直球勝負で分かり易く美味しい。
- merachi (メラキ)/西麻布 ←質実剛健ながら日本的な繊細な感性も感じられる。
- Il Lato(イル ラート)/新宿三丁目 ←お魚料理のひとつの究極系。
- ヴィンチェロ(Vincero)/新宿御苑 ←どのような大食漢が訪れたとしても満足すること間違いなし。
- リストランテ ラ・バリック トウキョウ(La Barrique Tokyo)/江戸川橋 ←無冠の帝王。
- TACUBO(タクボ)/代官山 ←ポイントは二番手の存在。
- アロマフレスカ(Ristorante Aroma-fresca)/銀座 ←好き嫌いを超えた魅力。普遍性。
- ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原/箱根 ←最高の家畜体験。
- クッチーナ(CUCINA)/大垣(岐阜) ←何でもアリの旨いもの屋。
- ひまわり食堂/富山市 ←こねくり回すことなく、いま何を食べているのかハッキリとわかる味と量。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。