Il Lato(イル ラート)/新宿三丁目

魚介系のイタリアンとしては最高峰と名高い「Il Lato(イル ラート)」。場所は新宿三丁目で伊勢丹から歩いてすぐ。私は2022年にお邪魔して以来2年ぶり2度目になります。古井繁規シェフはピエモンテで腕を磨いたのち、「OSTERIA ORIERA(オステリア・オリエーラ)」「リストランテ ペガソ(PEGASO)」などの人気店の厨房を預かった後、2021年に当店を開業しました。
店内は厨房をぐるりと取り囲むカウンター席にテーブル席が数卓(写真は一休公式ページより)。木材を多用したインテリアで、ややもすると割烹料理屋のような凛とした空気が流れます。しかしながら店内に響き渡る大声で話すゲストがおり、雰囲気をかなり乱されました。ああいうのは香害と同じく取り締まって欲しいところです。
ワインは全てボトルで注文しました。ワインリストは無くホールスタッフと相談しながら決めていくのですが、自信なさげにブツブツとつぶやくスタイルで何言ってるか全然聞き取れない。先のうるさいゲストの存在と相俟ってコミュニケーションを取るのに難儀しました。また、ちょろい客と思われたのか途中から謎に高いワインばかり提案されるようになり心が折れました。今夜は色々とついていないのかもしれません。
気を取り直してお食事について。まずはカツオの冷製。サっと酸味がきいており夏に最適の前菜です。底にはカポナータが敷かれており重層的な美味しさです。
オリエーラ時代からのアイコンとも言えるタコパン。エントランスにはタコパンを模した照明(?)がいくつかディスプレイされており思わず笑みがこぼれます。
鮎は焼いてキュウリのソース(?)とスイカのスープと共に頂きます。日本料理っぽいニュアンスを持たせつつ、液体をまぜまぜすると徐々に味覚が変化していきます。これは面白い。料理の博物館があるならば、鮎料理の代表作として展示したいほどです。
ミネストローネ。一般的なミネストローネはトマトの酸味が目立つことが多いですが、当店のそれは滋味深い味わいで、こっくりと優しい美味しさです。
鰻。この界隈は蒲焼か白焼が幅を利かせているのですが、これは何と表現すれば良いのだろう。ヨーロッパの煮込みともまた違ったスタイルであり、鰻の可能性を押し広げる調理です。ちなみに連れのポーションのほうが全然大きかったので、危うく喧嘩になるところでした。
アカムツはお魚の骨から取ったスープと共に楽しみます。脂が乗っていてとても円やか。白身のトロとも言うべきリッチな味わいです。
スズキ。アカムツのトロりとした口当たりから一転、ムキっと筋肉を感じさせる口当たり。魚そのものの味わいが逞しく、合わせるフォンドボーの味わいにも負けていません。
パスタ1品目はハモとトウモロコシ。日本料理店の〆のお食事のような組み合わせであり、鰻と同様にハモ料理のフロンティアを開拓するひと皿です。
パスタ2品目はタヤリン。ピエモンテ州発祥のパスタであり、卵を練り込んだ豊かな風味が特長的。お肉はエゾジカで、濃厚で風味豊かな味わいです。
メインのお肉は但馬牛。ここは鮨屋かと思わせる魚介類のラインナップでしたが、お肉のレベルも一級品。きめ細かく柔らかい肉質で、赤身と脂のバランスがよく、香りも良い。やっぱり最後にお肉を食べるとメシ食ったな~メーターが満タンになります。
デザートは甘夏を用いたひと品。円みのある甘さに優しい酸味で初恋のような味わいです。ちなみに私の初恋の相手は幼稚園年少組のおがわまゆみ先生です(漢字を知らない)。
お茶菓子とエスプレッソでフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上のコース料理が16,500円で、たっぷり飲んでお会計はひとりあたり3万円強。これは前回同様によく飲んだ結果であり、常識的な酒量であれば2万円程度に着地することでしょう。

料理は変わらず美味しかったですが、今夜は声の大きなゲストに心を乱された上、サービスとの波長も合いませんでした。まあこういう日もあるでしょう。そういえば魚が旨くなる冬に訪れたことがないので、次回は冬にお邪魔したいと思います。

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