HEIJU+ (ヘイジュウ)/白金高輪

大阪の人気イタリアン「Ristorante Heiju」が2020年夏に、東京は白金北里通りに「HEIJU+ (ヘイジュウ)」として移転リニューアルオープン。白金高輪駅から歩いて10分ほどに位置し、北里大学の白金キャンパスのお向かいにあります。
店内はゆったりとしたカウンター席が8席ほどに個室がひとつ。内装や調度品、照明の具合などがカッコよく、色気のあるインテリアです。

吉野平十シェフは本当にヘイジュウという名前。BGMにビートルズがエンドレスで流れているのですが、「ヘイ・ジュード(Hey Jude)」が流れる瞬間が一番盛り上がります。ナー ナーナー ナナナナー ナナナナー ヘイジュード。
ワインはフランチャコルタが1万円~。やや高めではありますが、場所柄仕方ないかもしれません。ペアリングは8千円~1万円にまとめてくれるそうなので、予算に決まりがある場合はそうした方が良いでしょう。
まずは冷製のコーンスープ。シルクコーンという、その名の通り実が白く絹のような光沢を放つトウモロコシを楽しみます。糖度が抜群に高く曖昧さがありません。中には根室のバフウンウニも潜んでおり、ロケットスタートを切りました。
続いて明石のタイ。昆布締めにしたのち、ホワイトアスパラガスと共に頂きます。全体を取りまとめるのはコンソメジュレ。悪くはないのですが、やや魚の生臭さが目立った気がします。連れに感想を求めると、「そお?あたしは美味しいけどね。意味わかんない」とのことでした。
パンは食べるタイミングを見計らい、その都度温めて頂けます。シンプルな仕様ながらしみじみ旨い。
このパスタはバリ旨いですねえ。自家製の手打ち麺をモンゴイカと九条ネギと合わせてさらいっと頂くのですが、イカの食感にネギの清冽な香り、パスタのふくよかな味わいと、単に旨いを通り越して尊くさえあります。
長崎のクエをブイヤベース風に頂きます。ムッチムチに弾力のある個体であり、食事とは舌だけでなく口腔内の触覚も含めて楽しむものだと再認識。ちなみにシェフは鮮魚店で働いていたこともあり、そこのお店とズッ友らしく、魚介は全てそこから仕入れているそうです。「豊洲に行ったことが無い」なんて一周まわってバリかっこええやんか。先ほどのタイの生臭さはグロタンディーク素数みたいなものかもしれません。
お肉料理は熊本県産の赤牛。ガサっと潔い調理であり肉喰った感に満ちたひと皿です。小さなジャガイモのローストも、大地の味覚が凝縮されており、脳裏に焼き付く美味しさです。
〆のパスタの用意もあり、ボリュームアップもリクエストできます。モチモチと弾力のあるうどんのような噛み応えで、甘味と酸味のバランスがパーフェクトなトマトソースに良く合います。
デザート1皿目は奄美のパッションフルーツを用いたジェラート。空気をたっぷり含んで滑らかな口当たり。ちなみにシェフはこの業界に入った際、最初はパティシエを志向していたそうです。
続いて和歌山のイチヂクを用いたケーキ。果物の気配を濃密に感じる仕上がりです。このあとお茶にハーブティーをお願いし、お茶菓子も頂きました。
以上のコース料理が2.2万円で、1万円のワインを2人で1本飲んでお会計はひとりあたり2.7万円。水代は取らず税サも込料金であり、本当にお品書き通りと潔い。ちなみに昼も夜も同一コースの同一料金と実にシンプルです。

お金の話はさておき、いずれの料理も素材の良さを存分に活かした調理であり、ひと皿ひと皿ボリュームもあって、記憶に強く刻まれました。型にはまったイタリア料理ではないものの、地に足のついた逞しさを感じさせる料理。港区のチャラチャラした店とは一線を画す誠実さが見て取れたディナーでした。

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