レ・ココット(Les Cocottes)/外苑前

外苑前駅から歩いて7-8分の場所にある「レ・ココット(Les Cocottes)」。2014年に開業したジビエ中心のビストロです。玄米キャビア曲芸で有名な鮨屋「海味(うみ)」のすぐ近くです。
店内はカウンター席が4席にテーブルがいくつかあって、トータルでは20席以上あるでしょうか(写真は食べログ公式ページより)。客席数に比してスタッフ数が多く、皆テキパキと動くので、およそ待たされたという感覚は一切ありません。オーナーは高校の同級生のシェフとソムリエという胸熱なタッグです。
アルコールの値付けは安く、ビールなどのドリンクは千円を余裕で切り、いずれのグラスワインも千円前後です。日本酒も置かれており、酒類だけで言えば西洋居酒屋といったラインナップです。
前菜盛り合わせが豪華。こんなに盛られて1人前1,400円と大変お値打ち(写真は1人前)。魚介にジビエに野菜など食材のバリエーションも豊富であり、この1皿でグラスワインを2杯も消費してしまいました。
ジビエとセルバチコのサラダ。この日のジビエはイノシシのハツを用いており、ハツもセルバチコも気前の良い量で嬉しくなる。チーズもたっぷり削られており、ワインの進むオカズ系サラダです。
自慢のジビエは熟成蝦夷鹿のカツレツを注文。見た目はパワフルですがシットリとした口当たりで歯でサクサクと切り刻むことができます。鉄分多めの健康体で臭みなどは一切無く思いのほか繊細な味わい。付け合わせのサツマイモも見逃せない美味しさ。ねっとりと濃厚な甘味に心を打たれました。
〆の炭水化物に「ジビエの山椒ミートソースパスタ」を注文。この日の肉は鹿に猪に穴熊のブレンドだったっけな。野性味あふれる深い味わいと脂の甘みとコクが、パスタと見事に調和します。フランス料理店なので、失礼ながらパスタそのものには期待していなかったのですが、太麺モッチモチで噛みしめるごとに小麦の風味が広がりバリ旨かった。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり1万円強。これだけ高品質のジビエ料理をたっぷり食べてこの支払金額は大変お値打ち。前菜盛り合わせを始めとしてアラカルトでジャンジャン注文できるのが嬉しいのですが、コース料理であれば飲み放題付きプランもあるとのこと。これはちょっとした打ち上げで使える。たっぷり飲めるし、何より旨い。良いお店を見つけました。オススメです。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。

緑酒 伝助(りょくしゅ でんすけ)/白菊町(金沢)

2024年1月という地獄のタイミングで白菊町へと移転リブランドオープンした「緑酒 伝助(りょくしゅ でんすけ)」。以前は「釣亭 伝助(つりてい でんすけ)」という店名で、その開業もコロナ真っ盛りと禍福は糾える縄の如しお店です。
入店して驚き、前店舗は彦三町の場末感溢れる雑居ビル地階の飲み屋だったのですが、今や高級日本料理店顔負けのクールな内外装へと変貌を遂げています(写真は食べログ公式ページより)。今次の移転に際し業態は大きく変わり、串揚げ屋や焼鳥屋のようにお腹がいっぱいになるまでの、お任せストップ制となっています。
元海上自衛隊イージス艦司厨士の日本酒贔屓もより練度を増しており、日本中の銘酒を取りそろえています。料理に合わせたデギュスタシオン(≒ペアリング)も用意されており、会員になれば半額で楽しむことができるなどの試みもあるようです。
まずは茶碗蒸しで内臓を温めます。カラスミがたっぷりと散らされており、のっけから日本酒を誘う味わいです。
クエ。むっちむちに歯ごたえのあるブツを、これまた厚切りで楽しみます。淡白ながら奥行きのある味覚です。
金沢のアジはナメロウで。メタリックな旨味に濃いめの調味で味を乗せていき、酒の進む逸品です。
厚揚げは炭火でコンガリと焼き、表面がザクザクと心地よい食感。
ビッグサイズの岩ガキはササっと脱水した後にキンキンに冷やし、土佐酢のジュレで頂きます。ミルキーな口当たりに土佐酢の酸味が心地良く夏酒が良く合います。
焼き茄子はお出汁で一晩寝かせてから頂きます。ジュワジュワと旨味と手間暇がたっぷり詰まっており、コレガ、ニンゲンノ、ココロ、アタタカイ。
ポテサラにはいぶりがっこが組み込まれており、ひと品ひと品に日本酒が進む仕掛けが施されています。
鰻は地焼きでバリバリっと頂きます。キンキンに冷えた千切りのキュウリとのコントラストが心地よく、タレの濃い味も食欲を刺激します。
由良のムラサキウニにアオリイカ、ガスエビ。生物としての形態は異なるものの、いずれも甘みが強く濃厚な味わいと方向性は同じ。あまあまのあまです。
宮崎牛は脂がタップリで暴力的な味覚。ここまで来ると赤ワインではなく濃いめの日本酒が合うという不思議。
輪島クロモズク。一般的なものと比べて太く粘りが強い。それでいてシャキシャキとした食感もあり、酢の強い酸味と共に口中がグレートリセットされます。
ハマグリ。塩などは振らずハマグリそのもののエキスで完成まで持っていくお椀であり、Act of Godとも言うべき料理です。
揚げ物はゴールドラッシュに太刀魚。いずれも食材のパワーが立っており、なんとも甲斐甲斐しい味わいです。
からすみもち。人生最厚とも言うべきカラスミのカットであり、日本酒の消費量が伸びていきます。さすがに腹がパンパンに膨れて来たので、〆の食事に余力を残してコチラでストップ。
〆はスペシャリテの「海軍カレー」。海上自衛隊は金曜日にカレーを食べるのが定番で、その上で艦艇や部隊によって味が異なるそうです。こちらはシェフが乗艦していたイージス艦のレシピであり、思いのほかスパイスが強くビターでアダルトな味わいです。
デザートは日本酒(酒粕?)を用いたジェラート。非常に軽い口あたりで、舌の上でサラっと溶けていきます。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり2.5万円ほど。以前の店舗に比べて倍以上の支払金額ですが、空間や食材が段違いにグレードアップしているので妥当と言えるでしょう。何より客数をグっと絞ったことによりゆとりが生まれ、店主が実に楽しそうに仕事をしているのが良いですね。おまかせストップ制という試みも面白く、和の「龍口酒家(ロンコウチュウチャ)」とも言うべき楽しさがありました。

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北陸新幹線開通前は秘境的な小京都として魅力があった金沢。開通後は客層が荒れだし、土日連休は東京のガチャガチャした人ばかりです。それは飲食店においても同様で、金曜日の夜から日曜日にかけての鮨屋など港区のちょづいた店と雰囲気は似てきています。きちんと食事を楽しみたい方は、連休を外して訪れましょう。
「大人絶景旅」と銘打ってはいますが、石川の名所をテンポ良くまとめています。グルメ情報も多くモデルルートの提案もあり、広告だらけのガイドブックとは一線を画す品質の高さです。

鳥佳(とりよし)/恵比寿

焼鳥の最高権威「鳥しき」の池川義輝シェフが監修する「鳥焼き 小花(とりやき おはな)」が良かったので、同系列の「鳥佳(とりよし)」へ。恵比寿駅から徒歩数分の雑居ビル2階で、二世帯住宅のように「鳥つき」も同居しています。
「鳥つき」エリアを抜け、もうひとつの暖簾をくぐるとL字型8席のみの「鳥佳(とりよし)」エリアが登場します。でもたぶん裏の厨房はつながっていて、焼き場も互いに補い合っているように感じました。
飯田忍シェフは日本料理やイタリア料理の経験を積んだのちに焼鳥の道へ入ったのですが、酒はワインが好きらしくグラスワインも豊富です。生ビールは小さめサイズで千円近くと、今風の焼鳥屋らしさ満点でホテルのように高い。
始まりは甘くないシュークリーム。マスカルポーネやブルーベリーが挟み込まれています。サービス(?)でお出し頂ける一口ワインはロワールのナチュール・発泡・ロゼと渋いセレクション。
鶏のメンチカツ。牛や豚のそれとはまた違ったスタイルであり、ありそうでない美味しさです。ソースも凝っていて、ここまでを切り取ると欧米系のレストランに来たかのようです。
串焼きに入ります。まずはせせり。思いのほかソフトな口当たりであり1番バッターを任せた理由がよくわかりました。ちなみに当店の鶏は伊達鶏と大山鶏を主軸に組み立てているそうです。
砂肝。一転してバリバリに弾力を感じさせる歯ごたえで、ザクザクとした食感が食欲を刺激します。
大根おろしは肌理が細かく滑らかな仕上がり。足りなくなれば気前よく追加してくださいます。
ズッキーニ。熱いとは聞いていましたが本当に熱く、味わうどころではありませんでした。あれはきっと800℃ぐらいあったと思う。
かわ。焼鳥屋で食べる一般的な皮とは全く異なり、凝縮というか熟成というか、もはや別の料理。甘辛いタレを楽しむひと品です。
ハツ。こちらもせせりと同様に思いのほか柔らかい。前日に銀座「IBAIA(イバイア)」でタフタフなハツを食べてきたばかりなので、心臓にも色々あるのだ。
お口直しにお漬物も出ます。当店はこういった脇役まできちんと美味しいのが良いですね。それぞれをピックアップすれば高級日本料理店に迫るクオリティです。
かしわ。いわゆるモモ肉であり、他の串の倍以上のポーションがあって、その存在を強く主張しています。
もずく酢。このもずくは沖縄の糸もずくかなあ。ごくごく細くツルっとした口当たりで、お酢の酸味と相俟って口腔内をリセットしてくれます。
ギンナン。栗のようにホクホクとした食感を楽しみます。
レバーもやはりソフトタッチな仕上がりであり、当店は鳥しき一門の中でも優しさの比率が高めなのかもしれません。
おや、麺類だ。水炊きのスープのような液体を土台とし、一風堂のような細麺がしなやかに踊ります。すわこれで終了かと不安になりましたが、まだまだ続きます。今日イチ焦りました。
かた。その名の通り肩肉で、適度な弾力と肉汁、濃厚な旨味を楽しみます。
ヤゲン軟骨。炭火で香ばしく焼き上げられ、ほんのり焦げた香りが食欲をそそります。軟骨のコリコリとした独特の食感と周りの肉のジューシーさが絶妙なハーモニーを奏でます。
厚揚げ。こちらも外皮のサクサクとした歯触りと、内部のトロリとした舌ざわりの対比がグッドです。これは居酒屋で一丁丸ごと食べたいぐらいです。
ふっくらジューシーなつくねは甘辛いタレとよく合い、コリコリとした軟骨の食感がアクセントとなり、単調になりがちなつくねにリズムを与えます。欲を言えば卵黄が欲しかった。
私の念が通じたのか、鶏のリゾットには卵黄がのってやってきました。なるほどシェフのイタリア料理店での経験が活きているのか、リゾットそのままでも美味しいのに、そぼろ肉まで加わって最強の旨さです。

以上のコース料理が1.3万円ほどで、ビールを2杯だけ飲んでひとりあたり1.5万円ほど。焼鳥屋としては最高級ラインとも言える価格設定ですが、鶏肉の質および量を考えれば妥当な価格設定でしょう。「鳥焼き 小花(とりやき おはな)」は色んな料理が出てくる派手派手なお店ですが、当店は純粋に焼鳥で押してくる。その日の気分で上手く使い分けてお邪魔しましょう。

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焼鳥は鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、これほどバリエーションが豊かなのが面白いですね。世界的に見ても珍しい料理らしく、外国人をお連れすると意外に喜ばれます。
素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。