鳥佳(とりよし)/恵比寿

焼鳥の最高権威「鳥しき」の池川義輝シェフが監修する「鳥焼き 小花(とりやき おはな)」が良かったので、同系列の「鳥佳(とりよし)」へ。恵比寿駅から徒歩数分の雑居ビル2階で、二世帯住宅のように「鳥つき」も同居しています。
「鳥つき」エリアを抜け、もうひとつの暖簾をくぐるとL字型8席のみの「鳥佳(とりよし)」エリアが登場します。でもたぶん裏の厨房はつながっていて、焼き場も互いに補い合っているように感じました。
飯田忍シェフは日本料理やイタリア料理の経験を積んだのちに焼鳥の道へ入ったのですが、酒はワインが好きらしくグラスワインも豊富です。生ビールは小さめサイズで千円近くと、今風の焼鳥屋らしさ満点でホテルのように高い。
始まりは甘くないシュークリーム。マスカルポーネやブルーベリーが挟み込まれています。サービス(?)でお出し頂ける一口ワインはロワールのナチュール・発泡・ロゼと渋いセレクション。
鶏のメンチカツ。牛や豚のそれとはまた違ったスタイルであり、ありそうでない美味しさです。ソースも凝っていて、ここまでを切り取ると欧米系のレストランに来たかのようです。
串焼きに入ります。まずはせせり。思いのほかソフトな口当たりであり1番バッターを任せた理由がよくわかりました。ちなみに当店の鶏は伊達鶏と大山鶏を主軸に組み立てているそうです。
砂肝。一転してバリバリに弾力を感じさせる歯ごたえで、ザクザクとした食感が食欲を刺激します。
大根おろしは肌理が細かく滑らかな仕上がり。足りなくなれば気前よく追加してくださいます。
ズッキーニ。熱いとは聞いていましたが本当に熱く、味わうどころではありませんでした。あれはきっと800℃ぐらいあったと思う。
かわ。焼鳥屋で食べる一般的な皮とは全く異なり、凝縮というか熟成というか、もはや別の料理。甘辛いタレを楽しむひと品です。
ハツ。こちらもせせりと同様に思いのほか柔らかい。前日に銀座「IBAIA(イバイア)」でタフタフなハツを食べてきたばかりなので、心臓にも色々あるのだ。
お口直しにお漬物も出ます。当店はこういった脇役まできちんと美味しいのが良いですね。それぞれをピックアップすれば高級日本料理店に迫るクオリティです。
かしわ。いわゆるモモ肉であり、他の串の倍以上のポーションがあって、その存在を強く主張しています。
もずく酢。このもずくは沖縄の糸もずくかなあ。ごくごく細くツルっとした口当たりで、お酢の酸味と相俟って口腔内をリセットしてくれます。
ギンナン。栗のようにホクホクとした食感を楽しみます。
レバーもやはりソフトタッチな仕上がりであり、当店は鳥しき一門の中でも優しさの比率が高めなのかもしれません。
おや、麺類だ。水炊きのスープのような液体を土台とし、一風堂のような細麺がしなやかに踊ります。すわこれで終了かと不安になりましたが、まだまだ続きます。今日イチ焦りました。
かた。その名の通り肩肉で、適度な弾力と肉汁、濃厚な旨味を楽しみます。
ヤゲン軟骨。炭火で香ばしく焼き上げられ、ほんのり焦げた香りが食欲をそそります。軟骨のコリコリとした独特の食感と周りの肉のジューシーさが絶妙なハーモニーを奏でます。
厚揚げ。こちらも外皮のサクサクとした歯触りと、内部のトロリとした舌ざわりの対比がグッドです。これは居酒屋で一丁丸ごと食べたいぐらいです。
ふっくらジューシーなつくねは甘辛いタレとよく合い、コリコリとした軟骨の食感がアクセントとなり、単調になりがちなつくねにリズムを与えます。欲を言えば卵黄が欲しかった。
私の念が通じたのか、鶏のリゾットには卵黄がのってやってきました。なるほどシェフのイタリア料理店での経験が活きているのか、リゾットそのままでも美味しいのに、そぼろ肉まで加わって最強の旨さです。

以上のコース料理が1.3万円ほどで、ビールを2杯だけ飲んでひとりあたり1.5万円ほど。焼鳥屋としては最高級ラインとも言える価格設定ですが、鶏肉の質および量を考えれば妥当な価格設定でしょう。「鳥焼き 小花(とりやき おはな)」は色んな料理が出てくる派手派手なお店ですが、当店は純粋に焼鳥で押してくる。その日の気分で上手く使い分けてお邪魔しましょう。

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焼鳥は鶏肉を串に刺して焼いただけなのに、これほどバリエーションが豊かなのが面白いですね。世界的に見ても珍しい料理らしく、外国人をお連れすると意外に喜ばれます。
素人にとっては単に串が刺さった鶏肉程度にしか思えない料理「焼鳥」につき、その専門的技術を体系的に記しています。各名店のノウハウについても記されており、なるほどお店側はこんなことを考えているのかという気づきにもなります。