桃仙閣 東京(とうせんかく)/六本木

地下鉄六本木駅6番出口すぐにある「桃仙閣 東京(とうせんかく)」。ミシュラン3ツ星「茶禅華」の元オーナー、ムッシュ林亮治が2020年に開業した高級町中華(?)であり、食べログでは百名店に選出されています。店名に「東京」と入っているのは、もともとオーナーのご実家が島根県松江市で1967年から同名の中国料理店を営んでいるからだそうです。
店内は照明を落としており、これぞ高級中国料理店といった雰囲気(写真は公式ウェブサイトより)。カウンター席やダイニングエリアも設けられていますが、7室もある個室での会食が当店の正しい使い方に思えました。「ここでの会食はやりやすい。アラカルトでどんな細かいポーションからでも注文できるし、取り分けて持ってきてくれるから、下っ端の私が気を遣う必要が無いんだよね」とはご一緒した常連バリキャリ女子の談。
アルコールはブルゴーニュワインが中心で、バリっとしたソムリエが細かく案内してくれます。土地柄リッチマンなラインナップではありますが、ドゥラモットが1万円と場面で優しい値付けのものもあります。
まずはおまかせ前菜。パクチーサラダによだれ鶏(?)にお刺身を中華風に味付けたものでしょうか。いずれもベーシックな料理ですが、素材の鮮度が際立つ味覚です。
連れの推しの「ピーマン薄切りにんにくオイル和え」。なるほどピーマン特有のエグ味などは一切なく、ピーマン嫌いの子供に食べさせてやりたいほどの綺麗な味わいです。
エビチリ。これぞエビチリといった王道の味わい。「おれ1尾~」「あたしは2尾で~」と、MOQが限界まで小さいのが面白い。
この北京ダックは美味しいですねえ。カリカリとクリスピーな食感にドロリと濃厚な味噌ダレが後を引く美味しさ。やや甘めのワインと合わせて至福のハーモニーを奏でます。
トマトと卵の炒め。上質なトマトの甘みと酸味が食欲をそそり、卵のまろやかさで全体を優しい味わいにまとめます。ごくごくシンプルな料理ですが、プロの気配を濃厚に感じました。
酢豚。こちらも町中華の王道とも言える仕様ですが、豚肉のクオリティが素晴らしい。甘酸っぱくてコクのある味わいが酒を呼びます。
豚肉と海老の焼売。やはり素材の質が良く、ジューシーな豚肉とプリプリの海老の食感が楽しめる贅沢な一品です。凄いなこの1ピース向けのせいろ。
焼き餃子。外はカリカリ、中はジューシー。日本人が愛す王道の味わいです。
エビマヨ。エビの美味しさは当然として、マヨネーズソースが良いですね。ひくほどたっぷり注がれているのですが、後味はサラリとしており、このソースだけチューブで売って欲しいくらいです。
鶏の唐揚げ。やはり正攻法な調理ですが、鉄板の美味しさ。こういう料理を毎日食べたい。
白イカの焼売。イカの風味が鮮烈で、焼売というよりもイカそのものでイカを活かしており、イカした味わいです。
ユーリンチー。鶏肉のカリカリ天国であり、程よい酸味と甘味のソースはエレガントな味わい。もはや油淋鶏という料理の枠を越境した完成度です。
マーボー豆腐。広く知られている料理ではありますが、その味わいは別格。とりわけ肉が旨いですね。旨味がギュウギュウに閉じ込められており、肉味噌瓶詰としてキロ単位でテイクアウトしたくらいです。
〆のチャーシュー炒飯。こちらもポピュラーな料理ではありますが、美味しさは全くポピュラーでなく、あとひと口もうひと口と食べ進める手がとまりません。
この日は常連のオススメに従いジャンジャン頂きましたが、とりわけ「北京ダック」「ユーリンチー」「マーボー豆腐」は他に類を見ない美味しさでした。昔から食べ継がれてきた日本の中華料理の品質を高めるとこうなるのか。

個室が多く、深夜まで営業しているので芸能関係にウケそう。使い勝手の良い町中華がそのまま高級化するという面白い試みのお店でした。次回は松江の本店に行ってみよう。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。

本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたい方へ捧ぐ書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。ある意味では中国旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。