鮨 一貫(いっかん)/加賀市(石川)

ミシュランガイド北陸2021でビブグルマンを獲得した「鮨 一貫(いっかん)」。小松空港から車で20分ほどの田園地帯に突如出現するコンクリートづくめのカッコイイ建物が目印です。
内装もエクステリアのコードを引き継いでおり、鮨屋として非常にクールな誂えです。ランチは2,500~4,400円という控えめな価格設定ながら、橋立漁港で揚がった新鮮な地物を中心に組み立ててくれます。
われわれは4,400円のランチを注文。まずは小鉢で南蛮漬け。酸味がズバっときいて食欲に火が着きます。
お造りはタイ、バイガイ、クロムツ。中でもタイは抜群に美味しいですねえ。コリコリと筋肉質な歯ごたえに品のある旨味。ここまで上質なタイは中々ありません。
茶碗蒸しにはカニがたっぷりと含まれており、4,400円のランチとは考えられないほどの贅沢さです。
さらにはツマミを1人1品注文することができ、私は「あん肝レタス巻き」を注文。単にアンキモをレタスで巻いただけでなく、漬物(奈良漬け?)とシャリも含めて巻き込まれるタイプであり、ハンドルキーパーであることが悔やまれる逸品です。
連れはグラタンを選択。中にはシャリに大量のカニが組み込まれており、食材の暴力とも言うべき仕様です。
にぎりに入ります。まずはイカで、サラサラと流れるような喉越しが特長的。うら若い甘やかな味覚です。
ガリは薄くスライスされ調味は穏やかで、シャリシャリとリンゴのような口当たりです。シャリも同様に控えめな味付けで、タネを邪魔しない円やかな味わい。
地元のサクラマス。脂の乗りが良くトロリとした舌ざわり。特有の赤っぽい香りも心地よい。
甘エビ。その名の通り濃厚な甘味が特長的で、享楽的な味覚です。
お椀には甲殻類の旨味が溶け込んでいていとをかし。エビカニ好きには堪らない味覚です。
カレイ。鮨屋で口にする機会は少ないですが、なるほど昆布締めにすることによりネットリとした旨いを奏でるようになり記憶に残りました。
アジ。いわゆる棒寿司タイプのものであり、凝縮感のある味わいです。
カイワレ昆布締め。カイワレについてもタネとして食べるのは初めてで、しかも昆布締めとは実に興味深い。鮨の可能性は無限大だ。
ここからは好きなものを2種チョイスできるとのことで、やはりここは高そうなウニをチョイス。塩をちょこんと付け海苔抜きで頂くと、口中でリゾットのように変化します。
もう1カンはタコの桜煮。程よく柔らかく煮込まれており、じっとりと旨味が増してとても美味しい。ああ、日本酒が飲みたい。
〆の玉子。シャリと海苔が複雑に組み込まれており、ドッシリと腹に溜まりました。
デザートにコーヒーも付き、これは抹茶のプリンでしょうか。決してオマケという位置付けではなく、程よい甘味に抹茶の苦味と、これ単体で勝負できるレベルの高さです。
以上を食べて4,400円。質と量を考えれば信じがたい費用対効果であり、ニューヨークであれば500ドルは請求できそうな食後感です。片山津温泉や山代温泉からも近く、自然と歴史、信仰が融合した魅力的な寺院「那谷寺(なたでら)」も車ですぐなので、旅行者にとっては意外に使える立地です。願わくば夜に、酒と共に。

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「大人絶景旅」と銘打ってはいますが、石川の名所をテンポ良くまとめています。グルメ情報も多くモデルルートの提案もあり、広告だらけのガイドブックとは一線を画す品質の高さです。