はり重 道頓堀本店(はりじゅう)/難波

なにわっ子が肉を食べたい時に思い浮かべる店と言えば「はり重 道頓堀本店(はりじゅう)」。食べログには百名店に選出されています。

1919年創業という老舗オブ老舗であり、御堂筋と道頓堀の交差点というミナミ最強の立地に位置します。木造3階建てのお屋敷は宮崎駿監督の作品に今にも取り上げられそうです。
老舗旅館のような玄関で下足番に靴を預けたのち予約名を告げ、仲居さんに個室へとご案内頂きます(写真は公式ウェブサイトより)。個室は大小17部屋が用意されており、座敷はもちろん椅子席も用意されています。階段の昇り降りがあるので、足腰が元気なうちに訪れましょう。
ビールは大ビンで880円と、老舗の高級牛肉料理店としては良心的な価格設定です。さて、今日は家族での食事会。「やっぱはり重はええなあ、子供の頃はよく来たもんやで」「この前のお部屋と違うみたい?」「この前来た時は3階やったからな」と、ちょいちょいマウントポジションを取り始める父と母。姉は「ウチの子らもココめっちゃ好きやわ」と、都合4世代にわたって当店を利用していることに相成りました。牛肉とは歴史そのものである。
すき焼きのコースですが、軽い前菜もお出し頂けます。季節を意識したあしらいに胸キュンです。
近況を交換しながら前菜を平らげると、すぐに肉の用意が整います。当店は産地や銘柄にはこだわらず、時季に合わせてその時に良いものを出しているそう。熟成牛が流行する前から牛肉の熟成に拘っていたそうで、かなり厚めのスライスが特長的です。
お野菜もたっぷりで、旨い肉に新鮮な野菜、そして酒。思い出話に花が咲く。我ながら魅力的なディレクションである。
ちなみに調理の序盤は仲居さんが全てを担ってくれます。割り下は長時間牛すじを煮出して作る特別なものでありジットリと濃厚な味わい。すき焼きのスタイルとしては関東風とも関西風とも異なる独特の調理法です。
第一弾のお肉が仕上がりました。箸で持ち上げると、ずっしりとした重みを感じます。口に含むと実に柔らかく、噛むたびに肉汁が溢れ出します。脂の甘みと赤身のバランスが絶妙で、新鮮な卵と絡み合うと旨みが口いっぱいに広がります。
一通りビーフを堪能したのち、お野菜などを盛り付け全体を整えた上で軽快なトークと共に去っていく仲居さん。プロである。牛肉の美味しさはもちろんのこと、脇役の野菜や豆腐なども一級品の美味しさです。
ゴハンは旅館よろしくテーブルにおひつごと置かれ、好きなだけ食べてくれ方式。このコメが中々、いやかなり旨くって、やはり老舗の名店はこういった何でもない脇役のクオリティが総じて高い気がする。叙々苑は白米とコーヒーが美味しいのと同じ理論です。
ちなみに卵はひとりあたり2個用意されており、いやあ、よくわかってらっしゃる。お漬物も恐らく自家製で、抜け目ない美味しさです。
美味しかったし、何より楽しかった。やはり家族で鍋を囲んでワイワイやるというのはプリミティブな魅力がある。ちなみに当館はすき焼きが名物の日本料理店のほか、洋食店やカレー専門店、精肉店も一堂に会しており、色んな楽しみ方ができるのも便利。私は今日来ることができなかった子供たちのために牛カツサンドをオミヤで持って帰ってもらい、素敵な東京のおじさん好感度爆上がりでフィニッシュしました。

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