Auberge eaufeu(オーベルジュ オーフ、夕食)/小松市(石川)

小松市は観音下(かながそ)の西尾小学校を改装し、廃校オーベルジュとして再出発した「Auberge eaufeu(オーベルジュ オーフ)」。今回はそのメインコンテンツである夕食についてお届けします。ゴエミヨに掲載され、食べログではブロンズメダルを受賞しています。
外観や客室については小学校の空気を残すノスタルジックなデザインなのですが、ここダイニングに限ってはバリバリに今風な空間です。

糸井章太シェフは京都府生まれ。「メゾン・ド・ジル芦屋」「メゾン・ド・タカ芦屋」で経験を積んだのち、「RED U-35」という35歳以下の料理人を対象にしたコンクールで最年少26歳でグランプリを受賞。2022年より当館の料理長に就いています。
観音下(かながそ)は水がキレイなことで有名で、まずはその大地のパワーに敬意を表しそのお水を頂きます。ちなみに当館のお隣には「酒造りの神様」として有名な「農口尚彦研究所」があり、食中には仕込み水を提供して下さいます。
ワインはバリ高いですねえ。グラスシャンパーニュを除いたワインペアリングがハーフボトルほどの量で1.1万円。確かに料理には合っているのですが、酒屋で買ったらいくらなんだよというクラスのワインが続き、カクテルや日本酒でも杯数を稼がれ、相当にテンションが下がりました。それでもワインを飲みたい方は必ずボトルで注文しましょう。必ずです。
気を取り直してアミューズ。ワオ、なんて可愛らしいプレゼンテーションでしょうか、わたしキュンキュンしちゃいます。ひとつひとつの味も大変すばらしく、この時点で当店のシェフは只者ではないと実感しました。
続いて太刀魚に色んな豆が組み込まれたひと品。太刀魚特有のザラっとした旨味に健康的なお豆さんパワーが加わります。
こちらは岩ガキに新玉ねぎのペースト(?)を加え、トマトのジュレで整えたもの。アミューズ同様に随分と可愛らしい料理ですが、その味わいは晴れ晴れしく、無限に食べ続けたい欲望に駆られます。
花ズッキーニにはイワナが詰まっています。この食材にはモッツァレラチーズを詰めるのが定番であり、イワナを詰めた料理人は当館のシェフが世界で初めてかもしれません。ジェノベーゼっぽい青い風味も爽やかで、センスを感じるひと品です。
自家製のパン。バターは諸々の動物性を排除したものだそうで、ココナッツの風味が支配的。なのですが、私の趣味嗜好からすれば、これは別に普通のバターで良いと思いました。
おや、タコスだ。なんでもシェフは当店の厨房を預かる前にアメリカでも働いていたそうで、彼の地での食体験を具現化したそうです。とは言え具材は能登のイノシシに新鮮な葉物野菜、アスパラガスとテクっており、素材だけで勝負する仕事の遅いタコス屋に見習って欲しいところです。
お魚料理はサワラ。一般的には地味目な魚として認識されていますが、ニンニクの芽や山椒でバリバリに風味を強化しており、非常に香り豊か。東南アジアの香味野菜中心の料理に近いニュアンスを感じました。
メインディッシュは能登のイノシシ。思いのほかエレガントな味覚であり、ブラインドで食べればイノシシとは判別できなかったかもしれません。付け合わせのオクラの緑の風味が強く主張のある味覚です。
〆のお食事にリゾット。蛍米と言って、当館の周りのホタル舞う水田で栽培されたそうで、素朴でしみじみ美味しい。空豆の青い薫りも見逃せない美味しさです。
デザートひと皿目は酒粕のアイスにメロン。南方系の濃厚な甘味に仄かに酒の香りが漂うクリーミーな甘味が後を引く美味しさです。
メインのデザートはバナナ・キャラメル・ヘーゼルナッツ。バナナの濃厚な甘味にほろ苦いキャラメル、ヘーゼルナッツのナッティな風味。見た目以上に香り高いひと品であり、シェフは全編通して香りを大切にしているように感じました。
黒文字の風味をきかせた小菓子でフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上の料理が¥19,800(税込・サービス料別)。料理そのものの味わいや全体を通してのストーリー性・完成度を考えれば非常にお値打ちであり、レヴォ(L'evo)」と並んで北陸を牽引するフランス料理店と言えるでしょう。   
他方、前述した通りペアリングの割高感は否めなく、あのラインアップで1.1万円は無いよなあというお気持ちです。宿泊のページに記した通り、宿泊施設としては正直微妙なので、ほんと料理だけだなというお気持ちです。

土日祝はランチも営業しているので、北陸旅行を終え〆のランチにお邪魔し、そのまま小松空港に帰るプランがベストなような気がしました。

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「大人絶景旅」と銘打ってはいますが、石川の名所をテンポ良くまとめています。グルメ情報も多くモデルルートの提案もあり、広告だらけのガイドブックとは一線を画す品質の高さです。