鮨 あさひ/五反田

五反田駅の東口から歩いて5分ほどの場所にある「鮨 あさひ」。高級店と回転寿司の二極化が進む鮨界隈で敢えてど真ん中の中価格帯に挑戦し、「気軽に行ける、高級寿司店」をモットーとしています。
店内は鮨屋としては結構広く、カウンター6席にテーブル席が20ほどありそう(写真は公式ウェブサイトより)。ガッツリ鮨食うぜ、というよりは寿司居酒屋的に使っているゲストが多いように見えました。営業時間は16:00 - 23:30と便利ですしおすし。
当店は日本酒のペアリングが自慢で「SAKE DIPLOMAが在籍!」と鼻息が荒いのですが、お酒選びは全くパっとしませんでした。それほど種類も量も出ずにペアリングだけで5,500円もするのでとても割高です。他方、アラカルト注文の場合は180ミリリットルの片口で千円強の値付けなので、普通に自分で注文したほうが良いでしょう。「すし初」の偉大さが身に沁みます。
先付にちょっとしたツマミが出てきます。これはまあ、居酒屋のお通しといったところですね。ところで先のペアリングですが、最初の1杯はビールやハイボールなど好きな飲み物を注文できるので、これは嬉しかった。
さっそくネギトロ。ウニが少々組み込まれており素直に美味しい。塩イクラも分かり易い味わいです。
お造りはカツオ。なのですが、妙にポーションが小さくペラペラに薄いので食べた気がしません。ちょっと意図がわかりかねるツマミでした。
モズク酢。沖縄産の上質なものを用いているそうで、沖縄生活の長い私は思わず頬を緩めます。
にぎりに入ります。まずはミズダコで、このネットリとした舌触りは他の食材ではなかなか味わえない官能的な体験です。
ハモ。味濃ゆく炊いており酒が進みます。
シマアジは上品な脂の乗りと身の締まりのバランスがグッドです。
ガリは大きめにダイスカットされており、シャクシャクとこれだけで立派な酒の肴です。

ところで当店のシャリは熟成赤酢を用いているそうですが、それほどパンチが強いというわけでなく、タネより一歩下がって酸味を主張するタイプです。
イサキの炙り。焼き目の香りが鼻腔をくすぐり、食欲を刺激します。程よく皮目の脂が溶け出し、濃厚な旨味が口の中に広がります。
スペシャリテの蒸しアワビ。6時間もかけて調理に臨むそうで、なるほど文句なしに美味しい。途中で獺祭で用いている削った酒米を投入してリゾット風に楽しむのですが、言うは易し行うはお寿司です。
ホタテの貝柱の焼きびたし。表面は香ばしく中はふっくらとジューシー。焼き浸しの出汁がホタテの旨味をさらに引き立てます
本マグロの中トロ。酸味が豊かで実に上品。これこれ鮨とはこれですよという特長的な味覚です。
真アジは小丼でやってきました。まずはそのままで食べ、途中で生姜のきいたお出汁をかけてお茶漬け風に。美味しいのですが、伝統墨守の私としては鮨屋でコレってどうなのというお気持ちです。
シメサバは締まりが強すぎ、身はボソボソで酸っぱい酸っぱい。これは完全に失敗作ですね。食い改めよ。
漬けマグロ。浅く漬けてサッパリとしたひと品。そうそう、こういうのでいんだよ。こういうのがいいんだよ。
おや、銀ダラの西京漬けがやってきました。このタイミングでだいぶ謎な試みですが、旨いもんは旨い。このまま白ゴハンをもらって〆てしまいしまいたいほどです。
キンメダイは「蒸し寿司」と主張していましたが、ぜんぜん冷たかったので実際のところはどうなんだろう。こんな疑念を抱かせるぐらいなら普通のにぎりで良いのにな。
鮨はトロタクでフィニッシュ。回転寿司と大差ないクオリティであり、やっぱり銀ダラの西京漬け定食で終わらせておけば良かったかもしれません。
シジミのお椀は美味しいのですが、一体どうしたんだと思うほど量が少ない。
ギョクは表面をキャラメリゼしており貴醸酒と合わせて楽しみます。デザートという位置づけなのかなあ。

以上を食べ、ペアリングを付けて14,300円。うーん、とっても中途半端であり、どっちつかずオブどっちつかずです。ペアリングがパっとしないことについては既に述べましたが、料理についても高級なタネが出ているわけでもないし、まあこんなもんじゃねというお気持ちで、目黒「三代目だるま鮨」に似た食後感。やはり現代の鮨界隈において中価格帯は難しいのかもしれないなと感じた夜でした。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。