江戸川橋駅から歩いて10分ほどの場所にある「TXOKO(チョコ)」。イタリアンとスパニッシュのテイストを散りばめたレストランで、店名はたぶんバスクの美食倶楽部的秘密結社のコンセプトをそう呼ぶのだった気がする。
店内はカウンター4席にテーブルが1卓の小さなお店(写真はテーブルチェック公式ページより)。関口晴朗シェフは「リストランテ・ヒロ 青山」やサンセバスチャンの「ムガリッツ(Mugaritz)」で腕を磨いた後に、2018年に独立。
ワインはイタリア主体で1万円を切るボトルが多く、この手のレストランとしてはお値段控えめに感じました。サービスの方は感じが良いのですが、だからこそなのか手待ち時間にずっとシェフとくっちゃべっており、店として弛緩した印象を受けるので良くない。居酒屋などであれば私もうるさいことは言いませんが、当店は客単価3万円を超える店である。
お料理は素晴らしい。アナゴをガガっと揚げ、様々なタイプのトマトを組み合わせて仕上げます。ひと皿目から場外ホームランとも言うべきサイズ感であり、何を食べているのかがハッキリと理解できる直線的な料理です。タマネギのスープにウニを大量投下します。とにかくオレンジ色が目を惹きますが、タマネギの深い甘味もそれに負けないくらい強く、思いのほかバランスが良く説得力のある味わいです。
パンはチャバッタとフォカッチャ。前者はモチモチした食感が特長的で、後者はジュワっとした口当たりが心に残りました。
極太のホワイトアスパラガス。毛ガニを山ほど盛りつけてキャビアをトッピングするという要塞に近い代物なのですが、先のウニタマネギと同様に不思議とバランスが良く、これがベストといった具合に調和しています。
水牛のモッツァレッラチーズにリコッタチーズ、生ハム。料理というよりも素材に近いひと品ですが、均衡が取れており率直に美味しい。お魚料理はイサキ。身がとにかく厚く目で見た瞬間に美味しい。お魚の美味しさはもちろんのこと、大ぶりのハマグリや香り高いナスなど、和のニュアンスを感じさせる最高峰の美味しさです。センスいいなあ。
パスタはタリオリーニ。ヤングコーンの甘味を活かしたひと品であり、サマートリュフの香りで全体を意識付けします。間違いなく美味しいのですが、これまでのスーパースター料理の数々に比べるとインパクトに乏しく、陰に隠れてしまった気がします。
メインは牛ロース肉の2種の食べ比べ。非常に細かいサシが入っており、見た目以上にジューシーで脂の甘味を感じる肉料理です。
お口直しにイチゴのソルベ(?)。滑らかな口当たりながらイチゴの風味が強烈で、イチゴよりもイチゴの味がするかもしれません。
〆はチーズケーキ。クリームチーズと生クリーム主体のシンプルな構成ですが、シンプルに美味しい。ちなみにこの場で食べ切れない方は持ち帰りもOKです。
ハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上のコース料理が1.8万円で、そこそこ飲んで税サを含めてお会計はひとりあたり3.3万円とリーズナブル。お料理ひとつひとつのポーションがしっかりあって、いま何を食べているのかがハッキリと分かるのがとても良いですね。少量多皿で何食ってるのかわからんくなる「ムガリッツ(Mugaritz)」とは真逆の芸風なのが面白い。個人的には魚介系の料理に心を惹かれたので、次回は脂の乗った冬季にお邪魔したいと思います。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉) ←ちょっとした海外旅行に来たような満足感。
- ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出(和歌山) ←我が心のイタリアン第1位。
- プリズマ(PRISMA)/表参道 ←高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。
- 三和(さんわ)/白金台 ←直球勝負で分かり易く美味しい。
- merachi (メラキ)/西麻布 ←質実剛健ながら日本的な繊細な感性も感じられる。
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- ヴィンチェロ(Vincero)/新宿御苑 ←どのような大食漢が訪れたとしても満足すること間違いなし。
- リストランテ ラ・バリック トウキョウ(La Barrique Tokyo)/江戸川橋 ←無冠の帝王。
- TACUBO(タクボ)/代官山 ←ポイントは二番手の存在。
- アロマフレスカ(Ristorante Aroma-fresca)/銀座 ←好き嫌いを超えた魅力。普遍性。
- ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原/箱根 ←最高の家畜体験。
- クッチーナ(CUCINA)/大垣(岐阜) ←何でもアリの旨いもの屋。
- ひまわり食堂/富山市 ←こねくり回すことなく、いま何を食べているのかハッキリとわかる味と量。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。