NICON(ニコン)/大工町(金沢)

2023年2月に船出した「NICON(ニコン)」。六本木の「ル ブルギニオン」で腕を磨いた前田涼太郎シェフが地元の金沢に戻り、富山湾の魚介類を駆使して粉骨砕身します。場所は大工町で、私の大好きな日本料理店「味処 大工町 よし村」のすぐ近くです。
ここがフランス料理店かと二度見するジャパニーズな内装。老舗の割烹料理店からバトンタッチしたそうで、カウンターが7席に奥に個室がひとつという丁度良いサイズ感。料理がガストロノミーで、ここまでノンビリできる店は中々ありません。
グラスワインは千円かそこらであり、ボトルのワインも6千円台のものが沢山。イマドキのフランス料理店としては親しみやすいラインナップです。もちろんバリ高いワインなどもオンリストされています。
まずはニンジンのムースに生ウニ、コンソメのジュレ。フランス料理の王道とも言うべき味わいであり、全身の細胞が踊り出しました。
続いてアオリイカ。魚介類を始め殆どの食材は地元のモノを用いているそうで、移動に疲れていないというか何というか、いずれの食材からもタフな旨味が感じられます。
富山の白エビ。当店は独自の仕入れネットワークをお持ちのようで、ここまで大きな白エビを集めることができるのは珍しいとのこと。なるほどネットリと濃厚な甘味がネットワークです。土台にはカブを置きトマトの風味をきかせ春菊のソースを添えるなどハイカラな仕上がりです。
続いて富山湾のサワラ。厚めに引いて丁寧にマリネし、新玉ねぎと共にサラダ仕立てで頂きます。ソースはラヴィゴットで、様々な香味野菜と豊かな酸味が脂ののったサワラによく合います。
サクラマスの燻製。こちらはマッシュルームとホウレン草で味を重ねていき、甲殻類の旨味をギュっと煮詰めたソースでトドメをさします。このソースは美味しいですねえ。びっくりするほどユートピアです。
続いてクロムツ。透き通ったスープ仕立てであり、金時草と長ネギの風味が味覚に奥行きを与えています。どことなく日本料理のニュアンスが感じられるのが面白い。
メインは鴨。舌先に伝わる弾力が生命力を感じさせ、実際に鉄っぽい風味が食欲を刺激します。皮目も厚く、脂のコクと旨味を存分に楽しむことができました。付け合わせのズッキーニとカブも上質な味わい。
デザートはココナッツ風味のブランマンジェに甘夏。いずれも素材の味わいが活きており、ストレートな美味しさです。
加賀棒茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上の料理が12,000円で、そこそこ飲んだのにお会計はひとりあたり1.8万円ほど。万円防止等重点措置とも言える費用対効果の良さであり、何より地元の魚介類をたっぷり楽しむことができるのが嬉しいですね。「エルヴェ(élevé)」もそうですが、ブルギニオン出身は本当に良いお店が多いなあ。

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