緑酒 伝助(りょくしゅ でんすけ)/白菊町(金沢)

2024年1月という地獄のタイミングで白菊町へと移転リブランドオープンした「緑酒 伝助(りょくしゅ でんすけ)」。以前は「釣亭 伝助(つりてい でんすけ)」という店名で、その開業もコロナ真っ盛りと禍福は糾える縄の如しお店です。
入店して驚き、前店舗は彦三町の場末感溢れる雑居ビル地階の飲み屋だったのですが、今や高級日本料理店顔負けのクールな内外装へと変貌を遂げています(写真は食べログ公式ページより)。今次の移転に際し業態は大きく変わり、串揚げ屋や焼鳥屋のようにお腹がいっぱいになるまでの、お任せストップ制となっています。
元海上自衛隊イージス艦司厨士の日本酒贔屓もより練度を増しており、日本中の銘酒を取りそろえています。料理に合わせたデギュスタシオン(≒ペアリング)も用意されており、会員になれば半額で楽しむことができるなどの試みもあるようです。
まずは茶碗蒸しで内臓を温めます。カラスミがたっぷりと散らされており、のっけから日本酒を誘う味わいです。
クエ。むっちむちに歯ごたえのあるブツを、これまた厚切りで楽しみます。淡白ながら奥行きのある味覚です。
金沢のアジはナメロウで。メタリックな旨味に濃いめの調味で味を乗せていき、酒の進む逸品です。
厚揚げは炭火でコンガリと焼き、表面がザクザクと心地よい食感。
ビッグサイズの岩ガキはササっと脱水した後にキンキンに冷やし、土佐酢のジュレで頂きます。ミルキーな口当たりに土佐酢の酸味が心地良く夏酒が良く合います。
焼き茄子はお出汁で一晩寝かせてから頂きます。ジュワジュワと旨味と手間暇がたっぷり詰まっており、コレガ、ニンゲンノ、ココロ、アタタカイ。
ポテサラにはいぶりがっこが組み込まれており、ひと品ひと品に日本酒が進む仕掛けが施されています。
鰻は地焼きでバリバリっと頂きます。キンキンに冷えた千切りのキュウリとのコントラストが心地よく、タレの濃い味も食欲を刺激します。
由良のムラサキウニにアオリイカ、ガスエビ。生物としての形態は異なるものの、いずれも甘みが強く濃厚な味わいと方向性は同じ。あまあまのあまです。
宮崎牛は脂がタップリで暴力的な味覚。ここまで来ると赤ワインではなく濃いめの日本酒が合うという不思議。
輪島クロモズク。一般的なものと比べて太く粘りが強い。それでいてシャキシャキとした食感もあり、酢の強い酸味と共に口中がグレートリセットされます。
ハマグリ。塩などは振らずハマグリそのもののエキスで完成まで持っていくお椀であり、Act of Godとも言うべき料理です。
揚げ物はゴールドラッシュに太刀魚。いずれも食材のパワーが立っており、なんとも甲斐甲斐しい味わいです。
からすみもち。人生最厚とも言うべきカラスミのカットであり、日本酒の消費量が伸びていきます。さすがに腹がパンパンに膨れて来たので、〆の食事に余力を残してコチラでストップ。
〆はスペシャリテの「海軍カレー」。海上自衛隊は金曜日にカレーを食べるのが定番で、その上で艦艇や部隊によって味が異なるそうです。こちらはシェフが乗艦していたイージス艦のレシピであり、思いのほかスパイスが強くビターでアダルトな味わいです。
デザートは日本酒(酒粕?)を用いたジェラート。非常に軽い口あたりで、舌の上でサラっと溶けていきます。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計はひとりあたり2.5万円ほど。以前の店舗に比べて倍以上の支払金額ですが、空間や食材が段違いにグレードアップしているので妥当と言えるでしょう。何より客数をグっと絞ったことによりゆとりが生まれ、店主が実に楽しそうに仕事をしているのが良いですね。おまかせストップ制という試みも面白く、和の「龍口酒家(ロンコウチュウチャ)」とも言うべき楽しさがありました。

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