三軒茶屋は茶沢通りから少し路地を入ったところにある「リストランテ チョッコ(ristorante ciòcco)」。カウンター8席のみの、薪焼が自慢のイタリアンです。エレベータが無いビル3階にあり急勾配の階段を昇る必要があるので、足腰が弱い方はご注意を。
薪ストーブではメラメラと炎が燃え盛り、妙にときめく空間です(写真は公式ウェブサイトより)。本田克彦シェフはイタリア料理店でそのキャリアをスタートさせ、イタリアを訪れた際に薪焼き料理の魅力に憑りつかれ、2020年に当店をオープン。ソムリエにも認定されているそうで、自身の料理に合わせたペアリングが用意されています。
まずはコーンスープと生ハム。前者はコーンと水と塩しか用いていないそうですが、信じられないほどに糖度が高くふくよかな味わい。生ハムは自家製で松阪牛を用いており、独特の熟成香と甘味を楽しみます。
原木シイタケとタイの白子。シイタケはパワフルでジューシーな個体なのですが、酸味をきかせた調理で凛々しい味わい。トロリとした舌ざわりの白子との調和も見逃せない美味しさです。
自家製のフォカッチャ。レンコンを練り込んでおりシットリもちもちとした口当たりです。
パンのお供に佐渡の牛乳を用いたチーズ。乳脂肪の風味をビンビンに感じる上質なものであり、先のフォカッチャと合わせて無限に食べ続けることができます。
クロムツも程よく熟成させ、薪火でバーっと炙って魅力的な薫りを纏わせます。ソース(?)には茄子を起用しており、その深みのある味わいがジットリとした魚の旨味にマッチします。
鮎のフランは信じがたいほど旨いですねえ。ザラリと舌ざわりに鮎特有の苦味が伝わって来る大人の味わいで、セメント系煮干しつけ麺のつけダレを極限にまで上質化したような味覚です。量もたっぷりで私嬉しい。
パスタはジェノベーゼ風なのですが、山椒をたっぷりきかせており爽やかな風味を愉しみます。ホタルイカの旨味と重なり大人の味わいです。
牛肉は3か月近く熟成させたもので、薪火の香りと熟成の香りが食欲を刺激する。なるほどジュクジュクとした旨味が特徴的で、噛みしめるほどに熟した味わいが滲み出て来ます。濃いめの赤ワインにピッタリだ。
〆のゴハンの用意されています。この日はキノコの炊き込みごはんで、大ぶりのサクラエビが気前よくトッピングされています。サクサクとした食感が心地よく、食べ進める手が止まりません。蓋パカパカ美容系日本料理店のゴハンよりも3-4倍は美味しい。
焼きたてのフィナンシェも非常に上質で、シェフの拘りが垣間見れます。ちなみに食中にはハーブをたっぷり漬け込んだお水を用意して下さり、食後のお茶としてもハーブをたっぷり楽しむことが出来るのが嬉しい。
以上を食べ、ペアリングのワインを結構飲んでお会計はひとりあたり2.3万円ほど。シェフの拘りが詰まりに詰まったギークなイタリア料理をたっぷり食べてこの支払金額はリーズナブル。六本木の「Mētis(メティス)」も薪焼が自慢で素晴らしいレストランですが、当店はそれを更に先鋭化させた秘密結社的な魅力を楽しむことができました。オススメです。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉) ←ちょっとした海外旅行に来たような満足感。
- ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出(和歌山) ←我が心のイタリアン第1位。
- プリズマ(PRISMA)/表参道 ←高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。
- 三和(さんわ)/白金台 ←直球勝負で分かり易く美味しい。
- merachi (メラキ)/西麻布 ←質実剛健ながら日本的な繊細な感性も感じられる。
- Il Lato(イル ラート)/新宿三丁目 ←お魚料理のひとつの究極系。
- ヴィンチェロ(Vincero)/新宿御苑 ←どのような大食漢が訪れたとしても満足すること間違いなし。
- リストランテ ラ・バリック トウキョウ(La Barrique Tokyo)/江戸川橋 ←無冠の帝王。
- TACUBO(タクボ)/代官山 ←ポイントは二番手の存在。
- アロマフレスカ(Ristorante Aroma-fresca)/銀座 ←好き嫌いを超えた魅力。普遍性。
- ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原/箱根 ←最高の家畜体験。
- クッチーナ(CUCINA)/大垣(岐阜) ←何でもアリの旨いもの屋。
- ひまわり食堂/富山市 ←こねくり回すことなく、いま何を食べているのかハッキリとわかる味と量。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。