テアトロ アッカ(Teatro Acca)/神泉

世田谷区豪徳寺の人気イタリアン「テアトロ アッカ(Teatro Acca)」が2021年末に神泉へ移転リニューアルオープン。渋谷駅からも歩いて10分強で、このあたりイケてる飲み屋が集まっています。食べログでは百名店に選出。ゴエミヨにも掲載されています。
店内は不思議な間取りで厨房が二手に分かれており、それに従いカウンター席も2パターンあります。テーブル席もいくつかあって、トータルでは20席ほどでしょうか。

原郁人シェフは筋金入りのイタリア料理人であり、そのキャリアも長い。店名の「アッカ」はイタリア語の「H」の発音であり、お名前の頭文字で、さしずめ「原劇場」といったところでしょうか。
ワインリストは無く泡はコレ1本のみで12,000円。税サを考えればまあまあ高い。ピッツァも良く出るお店なので、ビールで充分だったかなあ。そのほかグラスワインもお願いしたのですが思いのほか高くついたので、左党に厳しいお店です。
寿司に見立てたアミューズ。シャリの部分は水牛のリコッタチーズで、タネの部分はトマトやらニンジンやらを使っているんだったっけな。ちなみにシェフのご実家はお寿司屋さんだそうです。
ブッラータに生ハムの風味を付けたパンナコッタ。ブッラータの美味しさは当然として、パンナコッタからリアルに生ハムの風味が感じられ、面白いひと品です。たっぷり注がれたオリーブオイルも実に上質。
唐突にピッツァがやってきました。何でも当店の看板メニューのひとつであり、店内には薪窯もあり本格的。めちゃんこ美味しいのですが事前知識無しに訪れた我々は面食らってしまい、気持ちの整理に少しの時間を要します。
ホワイトアスパラガスにアスパラソバージュ。それぞれの素材の良さはもちろんのことコッテリとしたソースが良いですねえ。深みがあって、アクセントのキャビアも活きています。
続くピッツァはウニ・ホタテ・タラバガニ。海の幸オールスターズとも言うべきラインナップであり、極め付きにはカニ味噌ソースと、旨くないわけがありません。
これはメインディッシュという位置づけなのでしょうか、薪窯で焼かれた「土佐あかうし」がやってきました。この肉は旨いですねえ。見た目は赤身まっしぐらなのですが程よく甘味も感じられ、獰猛な美味しさです。薪の香りも食欲を刺激します。敷かれたリゾットも秀逸で、スカモルツァ(チーズの名前)も組み込まれておりバリ旨い。
おや、再びピッツァだ。花ズッキーニの存在が目を惹きますが、ゴールドラッシュとトリュフのソースという二面作戦も興味深い試みです。
パスタの盛りつけも面白く、まずはタリオリーニがしっかりあって、その上にオレキエッテ(耳たぶみたいなやつ)をのっけます。具材はホタルイカにカラスミと、サディスティックな旨味を感じさせるひと品です。
〆のピッツァはマリナーラ。オレガノの風味をビンビンに感じる香り高い逸品。白いトッピングはフグの白子のようですが。ソースの味覚に圧倒されてしまい、ちょっとよくわかりませんでした。
デザートはクマさんとウサギさんの最中。可愛らしいけど味は別にアレでした。普通にジェラートとかでいいのにな。食後のお茶はイタリアの上質なコーヒーを用いているそうで、そうとは知らずにティーバックのカモミールティーを注文してしまった私を殴ってやりたい。
以上のコース料理が1.5万円で、ふたりでワインを1本飲んで、税サを含めてお会計はひとりあたり2.5万円。いずれの料理も美味しいのですが、炭水化物主体の割にちょっと高いなあという印象を受けました。店内もどこか雑然としており、ゲストがギュウギュウに詰め込まれた雰囲気もロマンチストな私の価値観には合わなかったのかもしれません。

また「ドンブラボー(Don Bravo)」でも同じことを思いましたが、ピッツァはピッツェリアで、リストランテではリストランテならではの料理を、という趣味嗜好が私にはあるのかもしれません。これは好みの問題であり、私が狭量で保守的なだけとも言えるでしょう。自己分析が進んだディナーでした。

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