タテルヨシノ 三國湊 (Tateru Yoshino Mikuniminato)/福井

「オーベルジュほまち 三國湊(みくにみなと)」のメインダイニング「タテルヨシノ 三國湊 (Tateru Yoshino Mikuniminato)」。フランス料理界隈のスーパースター吉野建がプロデュースするオーベルジュということで、はるばる福井の果てまでやって参りました。
「オーベルジュほまち 三國湊(みくにみなと)」と同様、三国の町家をリノベした建屋であり、モダンではあるもののジャパンな趣きを感じさせる独特の誂えです。店内奥にある中庭の存在が印象的。
ワインは全く東京価格ですねえ。もちろんワインは世界統一価格と言われればそれまでですが、当店のゲストは遠くから来た方ばかりなんでしょうし、もう少しうまくやれるんじゃないかなという気持ちはしないでもない。
アミューズはコンソメのジュレに玉ねぎのピュレ、ビーツのムース(?)。当店流の冷製ボルシチだとの説明ですが、なんで三国港くんだりまで来てボルシチなんだという気持ちと、そもそもボルシチってこんなん料理だっけというお気持ちです。
グリーンアスパラにフォアグラ。決して不味いわけではありませんが、なぜ福井の海沿いのオーベルジュに来てまで、東京の安いビストロみたいな料理を食べないといけないのかの疑問は残ります。
ホワイトアスパラガスにヒラメ、キャビア。これはもう、完全に披露宴の食事である。「越前蟹の坊(かにのぼう)」のランチのように、地元の食材を活かした料理はいくらでも考え得ると思うのですが、なぜこんな退屈な仕様としたのか小一時間問い詰めたい気分です。
グリーンピースのスープ。こうなってくると、遠くから来たゲストを馬鹿にしているのかもしれないという疑念が強くなりつつある。ふざけるのもいい加減にしろと言いたいところですが、そういえば和歌山の「オテル・ド・ヨシノ(hotel de yoshino)」もこんな感じだったなという記憶がしないでもない。
パンも普通に美味しいですが、とくにこれといった工夫は見られません。普通のパンです。
タテルヨシノのスペシャリテのひとつであるサーモンは、地元のサーモンを用いているそうで、なるほど確かに美味しい。なのですが、プレゼンテーションがいまいちダサく、披露宴料理の域を出ません。
メインは若狭牛。名前こそ地元のブランドが付与されていていますが、料理そのものから情熱が感じられません。呆れ半分諦め半分で臨みましたが、覚悟した通り無為無聊なひと皿です。
デザート1皿目は吉野シェフの故郷の名を冠した「喜界島アイスクリーム」とのことですが、何のことはない、喜界島の砂糖を用いただけでした。
デザート2皿目の披露宴感が満載で、不味くはないがうまくも無い、そんな甘味です。よし決めた、今夜は奮発してエスティー・ローダーのアドバンスナイトリペアを塗って寝よう。
取ってつけたようなお茶菓子でフィニッシュ。ごちそうさまでした。

心からがっかりしたディナーでした。「タテルヨシノ」というブランドを冠しただけの、時代遅れの披露宴料理店であり、わざわざ三国港くんだりまで来て食べる必然性が全く感じられない料理の数々。こんなことなら当店から徒歩10分の「越前蟹の坊(かにのぼう)」で暴飲暴食を重ねたほうがよほど満足度は高いでしょう。

秋元康が晩年になって名義貸しで雑なアイドルグループを乱発するニュアンスに近いものを感じたディナーでした。やっぱシェフ本人が居ないレストランはダメですね。お疲れ様でした。

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