a table (ア ターブル)/湯島

神田明神の裏手、湯島駅または末広町駅から歩いて5-6分ほどの場所にある「a table (ア ターブル)」。ミシュランに掲載され食べログでも百名店に選出された、クラシックなフランス料理店です。
お店は2階建てで、上のフロアがメインのダイニング。席数は結構多くて20席近くはありそうです。落ち着きのある色合いで、居心地の良い空間です。

中秋陽一シェフは恵比寿「モナリザ(MONNA LISA)」を経て渡仏。帰国後に開業し、パテ・クルート世界選手権では3位を受賞するなどクラシックなフランス料理を得意とするようです。
ワインはフランス産のものが多く、安いものだと6-7千円台~と親しみのある値付けです。こちらのシャンパーニュは1.3万円ぐらいだったっけな。辛口ながら程よくコクもあって、1本で通すにちょうど良い味わいです。
アミューズはニンジンのムース。大地を感じさせる土台のある甘味にジュレの旨味が凛々しい旨さ。さあフランス料理を食べるぞという気持ちを盛り立ててくれます。
スペシャリテのパテ・クルート。色んなお肉を色んな調理法で詰め込んでおり、食感や味わいにグラデーションがあって楽しい。上部に閉じ込められたコンソメのジュレや、パイそのもののリッチな味わいなど、メリトクラシーを感じさせる完成度の高さです。
馬肉モモのタルタル。ソウルから帰ってきたばかりの私としては生肉にはうるさいつもりでしたが、なるほど馬の濃厚で鉄っぽい風味は牛のそれとはまた違った魅力があります。キャビアも必要にして充分な量でありオシャレなアクセントです。
パンは素朴でドッシリとした味わい。全体的に重厚な味覚が続くフランス料理であり、ソースを拭って食べるにちょうど良い。
メインは小鳩とフォアグラのパイ包みを注文。ソフトボールほどの大きさの迫力ある造形であり、こちらを2人でシェアして頂きます。
断面萌え。思わずため息がでる美しさ。見た目だけでなく味覚も最上級で、小鳩の旨さはもちろんのこと、周囲を固める合い挽き肉や土台を支えるフォアグラ、ザラリと濃厚なソースなど、肉料理としてパーフェクトなひと皿です。
付け合わせはマカロニグラタンで、シンプルで郷愁を誘う味わい。私の人生は輝かしいとは言えないまでも、飾り気のない幸せを自覚させてくれる味わいです。
当店にパイ生地を手掛けさせれば右に出る者はいないと判断し、デザートはミルフィーユをチョイス。これがまた絶品で、サクサクとした食感にプラリネのリッチな味わいが溶け込み美味そのもの。
以上を食べ、シャンパーニュを2人で1本飲んでお会計はひとりあたり2万円ほど。質の伴わない物価高の東京に見るべきものなど何もありませんが、もう一度だけこの街を信じてみようかと思わせる魅力がある、素晴らしいディナーでした。ジビエも得意なようなので、次回は秋冬にお邪魔してみようと思います。

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