KINO_ (キノ)/代々木

札幌でミシュランで1ツ星を獲得し、ゴエミヨにも掲載され、食べログでは百名店にも選出された「lien(リアン)」が東京進出。店名は「KINO_ (キノ)」とアンダーバーが入るあたりが今風ですが、シェフの苗字は「キノシタ」なので実際のところは駄洒落かもしれません。場所は代々木駅から歩いてすぐ。カラ館の脇を入ったところです。
札幌の店舗とは雰囲気が大きく異なり、厨房に面したドーンと長いカウンターが印象的(写真はヒトサラ公式ページより)。テーブル席もいくつかあって、使い勝手の良い構成です。

木下雄介シェフは札幌出身。日本各地のヒルトン系のレストランで腕を磨き、「ヒルトン小田原リゾート&スパ(Hilton Odawara Resort & Spa)」では料理長も務めました。2012年に「lien(リアン)」を開業したのち、10周年の節目に東京進出という乾坤一擲の大勝負へ出ました。
ワインにつき、泡白赤のワインセットのほか、各皿に合わせたペアリングも用意されており、飲む量も自由自在。自由度の高い構成です。というか泡白赤のワインセットの泡はシャンパーニュであり、それを含めて5千円かそこらというのはお値打ちだと思います。
アミューズが豪華。リッチな味わいの甘海老に旨味抜群のリエット、プリンのような独特の食感を奏でるキッシュと、もうこれだけでガッツリ飲めてしまいそうなほど愛くるしい味わいです。
メジマグロ。表面を軽く炙って香りを立てつつ、ハーブ類のオシャレな味わいで全体を整えます。ほどよく苦味もきいて大人の味わいです。
春巻き風のひと品。サクラマスと菜の花をライスペーパーで巻き込んで揚げており、マヨネーズ(?)をたっぷりつけて至福のひととき。春巻き考えた奴って天才だよな。どうやったって美味しいもんな。
スープは春キャベツ主体。瑞々しい甘味が心地よく、また、奥に潜んだブルーチーズの塩味もピリっと心地よいアクセント。
貝特集はホッキガイ・ホタテ・アワビの三種の神器であり、いずれも調理法は変えています。それぞれの食感と味わいの有意差を楽しむひと皿であり、磯の風味のきいたソース(?)が上上手に全体をまとめ上げます。
スペシャリテのイカ飯。シェフの郷土料理をフランス料理風にアレンジしたものであり、ヤリイカの中にウニのリゾットを詰めて蒸し上げます。本体そのものの美味しさはもちろんのこと、バターたっぷりのソースがバリ旨い。アンチョビの代わりに塩辛を用いているのも面白い。
パンも深みがあってとても美味しい。穀物の複雑な旨味が噛みしめるほどに滲み出てくるタイプであり、先のソースをたっぷりつけて艶っぽい味わいです。
メインは蝦夷鹿のカツ。ドッシリと存在感のある肉の旨味をジュワっとディープフライしており、存在感抜群のひと皿です。行者ニンニクの風味が食欲をそそり、また、インカのめざめのジットリとした甘さも見逃せない美味しさです。
お口直しに日本酒の氷菓。みむろ杉を用いているのですが、これが日本酒かと驚くエレガントな味わいです。
メインのデザートは北海道マンらしく〆パフェで。そのへんの〆パフェ屋とはダンチの美味しさであり、スイーツ屋としてスピンオフしても大成功を収めそうなクオリティの高さです。これはイカ飯に次いで第二のスペシャリテと言えるでしょう。
最後のお茶菓子まで手抜き無し。ごちそうさまでした。

「lien(リアン)」時代はランチにお邪魔し、その料理センスをビンビンに感じてディナーにも是非お邪魔したいと切望していたのですが、いやはや素晴らしい食体験でした。シェフもマダムも感じよく、とても居心地の良いひと時。

なぜかネットでは「イノベーティブ」「フュージョン」に分類されていますが、むしろクラシックな料理に私は感じました。いずれにせよ、ジャンル分けなど無力化するほどのレベルの高さなので、安心して予約を入れましょう。私が保証します。

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