EMME(エンメ)/表参道

表参道「ラチュレ(LATURE)」の卒業生が、そのご近所に開業したワインバー「EMME(エンメ)」。グルメガイドブックであるゴエミヨにも掲載されたことがあります。
店内はカウンターが5-6席で、主力はテーブル席にちょっとした個室もあります(以上、写真は食べログ公式ページより)。ワインバーと言いつつお食事寄りのお店であり、また、一番の目玉はアシェット・デセール(テイクアウトでなくその場で作られ出来立てを供されるデザート)のようです。
グラスのワインは結構の本数が空いているのですが、その管理は色々と心配です。例えばこちらは樽のきいたブルゴーニュですが、氷水にぶち込んで冷やしっ放しにしていたので、私とは価値観が全く異なるように感じました。
アミューズにつき、入店から提供まで20分を要しました。厨房からは缶ペンを落としたような派手な音が聞こえて来るし、明らかに準備不足です。もしかして君たちは全員タイミーなのか?そんな疑念の中で口にするツマミの味など中くらいである。
スープを出すのにもかなりの時間を要します。ここは精神と時の部屋なのかもしれない。しかもその間、ずっと厨房からベラベラと話し声が聞こえて来るのが癇に障る。口よりも手を動かしたまえ。ゲストに聞こえる位置で作戦会議をするな。明らかに全体が回ってないのに、目の前のゲストへの作業を中断して、かかってきた電話には即座に出るなど、優先すべき事柄が全く整理できていません。
数十分の虚無期間を経て登場した炙りサワラのマリネ。謎に紫色で不気味です。調味も酸が強すぎ、酢をそのまま飲んでいるかのようです。もちろんこんな小さな料理は秒で食べ切りグラスも空にするのですが、下膳もしなければ追加でワインも勧めてこないので、タイミーどころか飲食未経験者説が濃厚になってきました。
タケノコと何かのミンチ肉の料理も「木の芽どこ!?」のような長い長い捜索活動を経ており、結果としてハーブ香る不気味な味わいに帰結するという寂寥感あふれる食体験。そもそも冷蔵庫の在庫を管理できていないとはどういうことでしょうか。
オマールのパイ包み焼きと料理名だけは立派ですが、オマールの質は大変低い。東南アジアにおける欧米人向けステーキハウスのサーフ&ターフのエビみたいな味がしました。ソースにもぽい雰囲気を出すためにバニラを用いているようですが、ただ使ったというだけで香りが立っておらず、全く活用できていません。
メインはエゾジカ。普段から直接的な表現は避けているつもりなのですが、このメインディッシュは文句なしに不味いですね。肉は臭くバサバサで悪夢のような後味。ひとくち食べる度に暗黒が口の中に広がる。ガストのハンバーグのほうが余程美味しいです。この当店は味見とか食材の状態チェックとかちゃんとやってるのでしょうか。納豆すらダメにさせる破壊力を感じました。
自慢のデザート。1皿目はフロマージュブランのアイス(?)にイチゴ、メレンゲ、フキノトウの何か。なるほどスペシャルコンテンツと主張するだけあって、こちらはきちんとしたフランス料理店に比肩する味わいです。フキノトウの苦味も大人の味わい。
デザート2皿目はパフェ。ピンクグレープフルーツを土台にブランマンジェと紅茶のアイスを重ねます。それぞれの味わいの良さはもちろんのこと薔薇の香りなども洒落てます。当店の正しい使い方は、デザートだけを食べに来ることなのかもしれません。
以上を食べ、グラスでワインを3杯飲んでお会計は1.7万円ほど。グラスワインの値付けは立地を考えると良心的ですが、この質・サービス共に壊滅的なコース料理が1.1万円とは客に対してあまりに不誠実。料理は暗黒時代の牢獄で出されるようなクオリティで全般的に安っぽく、サービスのプロはひとりも居ない。私とても悲しい。ぴえん超えてぱおんです。

これまでの2024年上半期わが心のワーストレストランに比肩する酷さでした。ゴエミヨに掲載されたのも、たまたま順番が回ってきただけでしょう。ダニングクルーガー効果を後押しするようなメディアにも責任の一端を感じたディナーでした。

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