エルヴェ(élevé)/麻布十番

ここのところお邪魔する間隔が2-3か月に1度に狭まってきた「エルヴェ(élevé)」。料理が絶対的に美味しく客層が安定しているので、大切な食事の際はついつい頼ってしまいます。麻布十番は一の橋交差点から東へ数分の落ち着いたエリアに位置します。
店内はカウンター席が6-7席に4人掛けのテーブルが1卓。遅い時間帯はワインバーに徹し、ツマミはチーズ等に留まりますが、早い時間にお邪魔すればグランメゾンに比肩する正統的なフランス料理を楽しむことができます。
この日はブルゴーニュ古酒好きという厄介なワインラヴァーをお連れしたので、当店の素晴らしさをダイジェストでお届けしようと、コース料理に合わせてワインはペアリングでお願いしました。
まずはグジェール。チーズを練り込んだシュー生地なのですが、追いチーズも加えておりリッチなお口取りです。
クジラ。え?クジラ?私はこれまでのそう短くない人生において、かなりのフランス料理店にお邪魔してきましたが、フレンチでクジラを口にするのは初めてかもしれません。中にはミュラー擬態よろしく同色のビーツも潜んでおり、ドッシリとした味わい。土台を固めるサツマイモのペーストの甘味もグッドです。
名物のエスカルゴ春巻き。この日の具材は共にポワロー葱が組み込まれています。パリっとしたアタックにジューシーな口当たり。毎日でも食べたくなる人懐っこい美味しさです。
ホタテはごくごく軽い火入れであり、素材本来の甘味がシットリと伝わってきます。スープ(?)には紅茶の風味をきかせており、実にオシャレな味わいです。
アマダイは丁寧に蒸されており、フワフワとクラウドな食感が特長的。トリュフをきかせたソース(?)は思いのほか酸味が強く、ホワイトアスパラガスの風味と相俟って重層的な味覚です。
カウンター席からキッチンが見え、「モンブラン作っとるなあ、隣のゲストのデザートかな」と思いきや、なんと細かく包丁を入れたイカと組み合わせた我々向けの料理でした。球場全体がどよめく怪作であり、それでいて理不尽に旨い。記憶に残るひと品です。
メインは鳩をチョイス。ランド産の正統的な小鳩であり、鉄分をガッチリを感じさせつつもクセはなく総じてエレガントな味わい。モモの部分はコンフィにと、部位によって調理方法を変えているので一粒で二度美味しい。ソースも濃厚オブ濃厚で、フランス料理ってやっぱこうだよなあと再認識させてくれるひと皿です。
デザートは2種からのチョイスであり、私はチョコ主体のものを選択したのですが、シェフの古巣の「ソンブルイユ (SOMBREUIL)」を感じさせる華やかなプレゼンテーションであり、私アガっちゃいました。思いのほか軽い口当たりであり、もう一口あと一口とあっという間に食べ切ってしまいます。

今夜も本当に美味しかった。何度訪れても毎回発見があるのが良いですね。アラカルトでもコースでも自由自在というのも素晴らしい。今度はアラカルトにしようかな、ボトルで注文しようかな、やっぱりペアリングかなと、優柔不断であることすらエンターテインメントと化すお店です。

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