三和(さんわ)/白金台

中目黒「RODEO」の渡邉シェフが独立開業し、デビューした瞬間から予約困難が続く「三和(さんわ)」。食べログではシルバーメダルを受賞し、百名店にも選出されています。最寄り駅は白金台で、プラチナ通りの裏手をチョイチョイ行った地下にあります。
店内はグレー主体で薄暗く今っぽい雰囲気。厨房に面したカウンター5-6席が特等席で、他に2人掛けの小さなテーブルに奥に半個室っぽい空間があります。

渡邉大祐シェフは中目黒「RODEO」の料理長を務めたほか、フレンチの「シェ イノ」でも経験を積んだそう。食品スーパーみたいな店名ですが、生産者・料理人・客の3つの和を表しているそうです。
ペアリングのコースというわけではありませんが、ワインはお料理に合わせてソムリエールにお任せしました。彼女の接客は天下一品ですねえ。ここ数年でお邪魔したレストランの中ではトップクラスのサービスであり、現時点で2024年ベストソムリエ賞の最有力候補です。
泡を楽しみながらオリーブとドライトマトをつまみます。オイルに漬け込まれておりジットリとした旨味が感じられ、食前酒のお供にピッタリです。
グリーンピースのスープで内臓を温めます。濃厚な緑の味わいがドッシリと胃袋へと落ちて行く。
立派なスライサーから薄く薄く切り出された生ハムをニョッコフリット(薄い揚げパン)にトッピングします。舌先で生ハムの脂がハラリと溶け、その旨味と塩気が酒を呼びます。
本マグロのカルパッチョ。濃厚で存在感のあるマグロはまるで肉のようであり、カルパッチョ本来の意味に寄せています。
自家製のフォカッチャは一見シンプルですが、噛みしめるごとに油がジュワっと滲み出て実にジューシー。このパンでさっきの生ハムを挟めばそれだけで立派なごちそうでしょう。
ホワイトアスパラに卵とトリュフという王道の掛け合わせ。これはもう、文句なしに美味しいですね。ご近所の「ロマンティコ(Romantico)」にせよ、このあたりはホワイトアスパラガスに係る風水が良いのかもしれません。
アマダイに衣を付けてカラっと揚げました。これが今あなたが想像している3倍ぐらいカラっとした歯ざわりであり、身は中々にドッシリとしているのに口当たりが実に心地よい。底に敷かれたカブについても日本人の琴線に触れる仕上がりです。
エビのリゾット。旨味の強い個体であり、エビそのものだけでなくお出汁を吸ったお米がパンパンに膨らんでバリ旨い。このお米は何と言うお米なんだろう、とても美味しい。中央のブッラータと掛け合わせて至福のひととき。
お口直しにグラニテ。単なる氷菓でなく伊予柑の果肉も程よく組み込まれています。
旬の野菜炭火焼き。要は焼いただけの野菜なのですが、不思議なほど濃厚で奥行きのある味わい。こういう食事を毎日摂りたい私は。
お肉はエゾ鹿をチョイス。ガガっとバリっと思いきり良く焼き上げられており、肉そのものの美味しさがギュっと凝縮されています。こんなにどぎついビジュなのに思いのほかサッパリと食べ進めることができました。
基本はパスタ1種なのですが、追加料金で2種でお願いしました。こちらは「牛ホホ肉の煮込みのタリアテッレ」で、肉が山のように放り込まれており、ややもするとパスタ料理というよりも肉料理と捉えたほうが良いかもしれません。チーズもジャンジャン削ってくれてとっても楽しい。
パスタ2皿目はピチ。小麦粉と水だけから作られる、丸くこねた太麺パスタです。讃岐うどんのようにコシがあり食べ応え抜群。ソースはフレッシュトマトと聞いていたのですが、このトマトが実に芳醇で、先の牛ホホ肉の気迫に負けない存在感を示しています。
デザートは6種から選べて私は「生チョコテリーヌ」をチョイス。まことにリッチなチョコの風味にカカオニブのサクサクとした食感が良く合います。
連れは「パンナコッタ」を選択。一般的にパンナコッタは白く軽やかな印象ですが、当店のそれはカラメルソースがどす黒くヘビー級。ひとくち頂きましたが生チョコテリーヌに勝るとも劣らない強い印象を放っています。
カモミールでフィニッシュ。ごちそうさまでした。基本のコース17,920円にパスタを追加しワインをジャンジャン飲んでお会計はひとりあたり3万円強。港区でこのクオリティの食事を腹いっぱい楽しんでこの支払い金額はリーズナブル。何より料理が直球勝負で分かり易く美味しいのが良いですね。何を食べたのかハッキリと記憶に残り、同時期にデビューした「merachi (メラキ)」とはまた違った楽しみ方があるイタリアン。

大変な人気でお邪魔する機会は少ないでしょうから、お誘いがあれば最優先で予定を調整しましょう。

食べログ グルメブログランキング

関連ランキング:イタリアン | 白金台駅目黒駅高輪台駅


関連記事
イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。