レテール(L'ÉTERRE)/神楽坂

2023年におけるフランス料理界隈のビッグニュースと言えば、パリの1ツ星「L’ARCHESTE(ラルケスト)」の伊藤良明シェフが東京に姉妹店「レテール(L'ÉTERRE)」を開いたことでしょう。場所は神楽坂で、牛込神楽坂駅または飯田橋駅から歩いて7-8分の立地です。
店内は完全オープンキッチンで、ややもすると割烹料理店のような印象を受けました。もちろんカウンター席が主力ですが個室もあるようです。

伊藤良明シェフはひらまつグループで腕を磨き、パリのHiramatsuで料理長を務めた後にパリで独立。現在は日本の姉妹店との間を行ったり来たりしているようです。常時当店の厨房を預かるのは田篭彬シェフで、フランスで経験を積み、「レストランひらまつ 高台寺」の料理長も務めました。
初手は白トリュフ。フタをパカっと開けると官能的な香りが漂う心憎い演出です。栗味カボチャもコクのある甘味を展開しており白いダイヤモンドに負けない存在感。
続いてセップ茸。香りトリュフで味セップとでも言いたげな組み合わせであり、キノコの旨味が濃厚なひと品。濃いめのシャンパーニュに良く合います。
えぼ鯛のベニエがドカーンとやってきました。これはハンバーガーかと思うほどのサイズ感であり、ムッシャムッシャと食べている感に包まれています。ちなみに魚は「サスエ前田魚店」から取っているそうです。
お肉とキャビアが目立ちますが、実は裏っかわに藁焼きしたサワラが隠れています。このサワラが絶品で、スモーキーな香りと豊かな脂がベストマッチ。サワラがキャビアを凌駕した歴史的瞬間に立ち会うことができました。
牡蠣とホッキ貝に濃厚なクリームソースを流し込みます。私の知る限りでは世界最強のクリームシチューであり、貝の旨味と食感を存分に楽しむことができました。
パンは神楽坂の「パン・デ・フィロゾフ」から。この餅は餅屋的な割り切った姿勢は結構好き。パンだけでも美味しいのに、先のクリームをベットベトに付けて至福のひととき。
秋刀魚と毛ガニのコラボレーション。旨味のお化けともいうべき組み合わせでワインが進む進む。それでいてトマトの酸味を用いて味覚の全体を上手く整理していました。
メインはランド産の仔鳩。2人で1羽とたっぷり楽しめるのが嬉しい。丁寧に焼き上げられたお肉に濃厚サルミソース、赤ワイン。ああ、フランス料理ってやっぱり素晴らしい。
パンの量が少ないなと思っていたのですが、なるほどこういうことでしたか。魚介の風味たっぷりのお出汁をガンガンに吸ったリゾットで、仕上げにサクラエビをドッサリ。これはもう、文句なしに美味しいですね。日本人であれば誰もが大好きな味覚でしょう。
デザートも色々出て、紅玉をジットリと焼き上げたものに、ジャージーミルクの濃厚アイスクリーム。
極めつけは24ヶ月熟成のコンテを用いたチーズケーキ。旨味と塩気が強く感じられるハードボイルドなチーズケーキであり、赤ワインが良く似合います。
焼きたてのフィナンシェも絶品で、表面はガリっと思い切りよく焼かれており、内部はジュワっとバターの風味が弾けます。デザート全体を通して派手さはありませんが素材そのもののパワーを感じさせてくれ、圧倒的に旨い。意外と珍しいタイプの芸風に思えました。
お茶菓子にパリのお店でも大好評のトリュフショコラ。先に述べた芸風を象徴する締めくくりでごちそうさまでした。

美味しかった。その輝かしい経歴などのサイドストーリーなどの情報を抜きにして、料理として非常に美味しい。振り返るとそれぞれの料理が絵のように派手派手というわけではないのに凄く美味しい。当店はいずれ日本においても確実に星を獲得するはず。賭けてもいい。

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