鮨 幸三(こうぞう)/長崎市

長崎屈指の飲み屋街に暖簾を掲げる「鮨 幸三(こうぞう)」。頻繁にメディアに取り上げられるというわけではありませんが、長崎で食事に興味がある方は皆が知る人気店です。ちなみに18時に予約を入れた場合、18時ピッタリにならないと開店しないので、早く到着し過ぎないよう気を付けましょう。写真が真っ暗なのはそのためです。
店内はカウンターのみで10席ほど。コートはセルフで入り口近くの棒にかけるなどカジュアルな運用です。いちばんカジュアルなのが大将で、一見客も常連客も分け隔てなく接してくれます。

私は席に着いた瞬間に「どっから来たと?」と問われ、東京だと答えると「それじゃあコッチの魚を中心に出しちゃるけんね!」と、優しさが服を着ているかのような対応です。ちなみに方言は私がイメージで書いているだけなので、厳密な発言は違っていると思います。
飲み物メニューは無く値段も不明なのですが、最終支払金額から逆算するに1合千円程度でしょう。酒は飲まず、にぎりだけパっと食べて帰る、みたいなゲストもいました。ところでお手洗いは和式であり、飲食店で見かけるのは数年ぶりかもしれません。上手く使いこなす自信の無い方は飲み過ぎないよう気を付けましょう。
まずは刺身の盛り合わせ。こんなに豪華な盛り合わせで2千円ポッキリ。アジ・ヒラマサ・クエ・ヒラメ・アコヤガイ・クジラのタンなど地元の魚介類ばかりであり、そのいずれもがムッキムキの弾力を誇り、歯を押し返してくるほどです。
にぎりの前にもう少しつまみたい旨を伝えると、ばっちりイケてる穴子が入っているとのことで、白焼で頂きました。驚くほど肉厚でバチバチに筋肉質。ムッシャムッシャとした食感を楽しみつつ壱岐の日本酒で飲み下す。このとき私は絶頂に達したのです。
カツオを炙ってもらいました。脂たっぷりモッチモチのカツオをバリっと気前よく炙っており、炎で脂と旨味が凝縮されてバリ旨い。何ともジューシーな口当たりであり、日本酒が進むのなんのって。
にぎりに入ります。まずはヒラマサ。やはりムッチリとした弾力を誇り、噛みしめるほどに旨味が滲み出てきます。ところで「ヒラマサ」って語感、誰かのあだ名みたいで可愛いですよね。キムタクみたいな。そう思いませんか?思いませんかそうですか。
ガリは甘酸っぱく青春の味がします。シャリは酸が穏やかでお米本来の甘味が感じられるスタイルで、少し柔らかめな印象を受けました。
ヒラメ。芽ネギとウニを携えて贅沢な仕様です。芽ネギのシャキっとした食感にヒラメのサクっとした歯ごたえ、押し寄せるウニの甘味。このとき私は今夜2度目の絶頂に達しました。
アオリイカは独特のネットリとした舌ざわりが特長的で、甘味もやはりネットリしています。旨味と甘味がバランスよく調和している。
特大のエビ。ひと口で頬張りムッシャムッシャと咀嚼する幸せのひととき。味も強く甲殻類特有の派手派手な旨味が記憶に残りました。
ホタテは実にクリアな味わいで、その優しい口当たりと共に心和む美味しさです。
おや、牛肉だ。鹿児島のさつま牛を起用しているそうで、魚とはまた違うジットリとした脂が心地よい。
カツオを炙りで。見てください、このジュワジュワとした脂のコーラスを。夏を感じさせる初ガツオも美味しいですが、やはり脂がたっぷりのった季節の方が全面的に美味しいですなあ。
トロも軽く炙る。その名の通りトロトロとした舌ざわりでリッチな味わい。
ウニとイクラを軍艦で。いずれも主張の強い味覚ですが、香りのある海苔でバリっと巻いてそのハーモニーを楽しみます。まさに海の幸の王様である。
玉子は関西風の調理ならびに調味だそうで、なるほど江戸前の甘味の強いそれとは全く別物。スラム街で輝く一番星の鮨屋を思い出しました。
芽ネギ。回転寿司でのケチケチした芽ネギの10倍ぐらい巻き込まれており、見ようによってはネギサラダのようです。お口直しにピッタリだ。
長崎鉄火。長崎における鉄火巻きは白身魚を用いることが多く、ヒラマサやブリ、ハマチなどが用いられるそうです。この日のそれはヒラマサであり、脂が強く食感も強く、マグロの鉄火よりも私好きかもしれません。
さえずり。いわゆるクジラの舌であり、海のベーコンとも言うべき脂の強さが特長的。それでも全くクセは無く、むしろ後を引く、病みつきになりそうなコッテリ感。
〆にコハダ。江戸前のそれに比べると調味が穏やかで、コハダ本来の味わいを楽しむことができました。

さんざん飲み食いしてお会計はひとりあたり1.5万円。こんなにも美味しく、大将は快活で楽しい。こんなに素晴らしい食体験を楽しむことができるのだから、実質無料と感じてしまうのは私だけでは無いでしょう。長崎旅行が決まれば真っ先に予約を入れたいお店です。オススメ!

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。