弥さしさ 大島(やさしさ おおしま)/四条烏丸(京都)

京都は四条烏丸エリア、もう少し細かく言うと西洞院通蛸薬師下ルに位置する「弥さしさ 大島(やさしさ おおしま)」。繁華街すぐ近くにありながらも住宅が多く、落ち着いた雰囲気の立地です。
小さなお店で、7-8人も入ればカウンターは満席。清潔に整えられた店内は凛とした空気がありながら居心地も良い。大島祐二シェフは山口県出身で、東山五条「はり清」などで腕を磨いた後、2018年に当店を開業。
お料理が14,500円の割には飲み物が結構高く、中ビンが千円で日本酒は1合1,500円~。お酒のペアリングもあるのですが、日本酒オンリーとしては中々にハードルの高い価格設定でした。
先付はサーモンに秋茄子、椎茸。リンゴチップで仄かに甘い薫りを閉じ込めており、何ともお洒落な始まりです。
お椀代わりに土瓶蒸し。たっぷりの松茸に名残の鱧。とりわけスープが素晴らしいですね。松茸の香りだけでなく旨味もしっかりと引き出しており、秋真っ盛りの美味しさです。
お造りはサワラにモミジダイにホッキ貝。サワラは焼霜にしており香ばしく酒が進む、モミジダイは歯を突き返すような弾力が見事であり、ホッキ貝はどっしりとした旨味が後を引く美味しさです。
揚げ物は白エビのしんじょうに舞茸、ぎんなん。とりわけ白エビのしんじょうが素晴らしいですね。白エビの美味しさは当然として、白身魚を練り込んだしんじょうがゴルディロックスな旨味を湛えます。
八寸は小ぶりなプレゼンテーションながらも要所要所を抑えた盛り付けです。サンマのお寿司に脂がのってベリーグー。
シャインマスカットにカマスを巻き付けて焼き上げました。日本料理としては前衛的な取り組みであり、ややもするとフランス料理的な発想で二重丸。醤油の塩気とブドウの甘味が意外に良く合う。
箸休めにイチヂク、胡麻のクリームをたっぷりと乗せ、間に奈良漬けを忍ばせるという面白い組み合わせ。「すし初」での試みにせよ、奈良漬けはもっともっと開発されても良い食材に感じる今日このごろ。
鴨の治部煮。厚みのある鴨の旨味に、これままた強めの調味が酒を呼ぶ。ある意味では欧米系の肉料理に匹敵する存在感です。
お食事は銀杏ごはん。素朴で愁眉を開く味わい。ごはんのお供がついつい酒のツマミになってしまう。
甘味は焼きたての最中を中心に水菓子とお薄。これぞ京都での食事と言わんばかりの締めくくりです。ごちそうさまでした。

以上を食べ、そこそこ飲んでお会計は2.3万円。序盤に「酒が高い」と記しましたが、料理は大変お値打ちなので、トータルではとても満足のいく食体験でした。最近は京都においてもウニやらキャビアやらを乗せる金満主義的な店が増えましたが、当店は実に地に足の着いた料理と接客。こういうお店はもっと評価されても良いと思う。

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