リストランテ ナカモト (ristorante nakamoto)/木津(京都)

京都と奈良の県境にある木津の街。観光するにしても車移動が前提で、県外の方には馴染みの薄いエリアです。その「なぜここに!?」な立地に、食べログではブロンズメダルを受賞し百名店にも選出されている凄腕イタリアン「リストランテ ナカモト (ristorante nakamoto)」があります。
京都の外れ(失礼)とは思えないほどクールな内外装。最先端の先端と評して良い雰囲気づくりでしょう(写真は食べログ公式ページより)。店内は恐らく2-3組のみの受け入れで、これまたカッコイイ個室もあります。

仲本章宏シェフはフィレンツェの名門「エノテカ・ピンキオーリ」で腕を鳴らし、パスタ部門の部門責任者を担いました。その他、イタリア各地やニューヨークのリストランテを経験したのち帰国。2011年に故郷である木津で当店を開業。
ウェルカムドリンクが面白く、地元の柑橘系の果物とウイスキーを用いた上で、冷たいと温かいの2温度帯で表現します。お口取りはホワイトチョコで風味付けしたスコーンにイベリコ豚のサラミをのせ、もうこれだけで「普通じゃない」感が伝わって来ました。
ワインはペアリングでお願いしました。全てイタリアワインので揃えており、手頃なものをセンス良くリーズナブルに組み合わせており、好感の持てるセレクションです。3,600円の追加料金のみで倍盛り、都合ひとり1本飲む計算としてくれ、酒飲み歓喜のシステムです。
アミューズが次々と並べられ、まさに杯盤酒肴といった趣です。とりわけキャラメリゼしたイチヂクに生ハムをトッピングしたものと、榛原牛のタルタルタルトがお気に入り。
こちらは丁寧に火入れした榛原牛をローストビーフとして仕立て上げ、赤玉ねぎのピクルスと共に頂きます。パリっとした生地の食感の奥から滲み出る牛の香りと脂の甘味。上賀茂の「ローストビーフの店 Watanabe」のような力強いローストビーフも好きですが、当店のエレガントなそれも心に残る美味しさです。
「季節の野菜の一皿」が度肝を抜かれるプレゼンテーションで、地元の農家の畑から朝摘みのこれ以上ないというほど新鮮なブツを盛り込みます。焼いたり茹でたり蒸したりと野菜それぞれに適した調理を施しており、野菜料理として京都、いや世界屈指の美味しさと言えるでしょう。
パンももちろん自家製で、ザックリとした食感がジワジワと小麦の甘味を感じます。ワイルドでジューシーな逸品。
ポルチーニを揚げて、これでもかと言うほどカラスミを振り込みます。パスタの香りと旨味を付けるために用いられる素材ですが、それを丸ごと大量に食べるという道楽。ストラッチャテッラ(ブッラータの中味のドロドロね)のソースも濃厚でバッチグーです。
パスタ1皿目はタリアテッレ。麺の美味しさはもちろんのこと、メタリックな旨味の強いサンマが最高。程よく脂がのっており、アクセントで加えたフォアグラの風味とも良く合う。
パスタ2皿目はアニョロッティ。いわゆるギョーザ的な詰め物パスタですが、この日の具材はリコッタチーズと実に爽やか。他方、ソースは濃厚なジェノベーゼソースであり、具材に空心菜とモロッコインゲンを起用するのも面白い。何ともセンス溢れるひと皿です。
メインはもちろん榛原牛。奈良が誇るブランド牛であり、その柔らかな質感からは考えられないほど凝縮された味わい。香りが良くエキスの一滴一滴まで旨い。サクっと切れてガブっと口に含みジュワっとジューシー。これぞ珍味佳肴といった味覚です。
ヘビー級の料理が続きましたが、デザートは軽くサッパリ。ヨーグルトをベースとした味わいにパッションフルーツとアマゾンカカオを組み込み、サラリとした余韻を楽しみます。
お茶菓子もたっぷりで、コーヒーは地元の名店「NAKAYAMA COFFEE ROASTERY」の自家焙煎スペシャリティビーンズを採用しています。程よく酸味がのってエレガントな味わい。ごちそうさまでした。

以上のコース料理にワインのペアリングが付いて22,000円。プラス3,600円でワインの量を倍にしてもらってひとりあたり25,600円という顛末で、これはもう素晴らしいとしか言いようがありません。「ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)」にせよ「ヴィラ・デラ・パーチェ(VILLA DELLA PACE)」にせよ、地方の一軒家イタリアン最強説が濃厚になったランチでした。アクセスはちょっとアレですが、旅行者は宇治観光の前後に組み込んで行くと良いでしょう。オススメです。

食べログ グルメブログランキング


関連記事
イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。

日本のイタリア料理の歴史から現代イタリアンの魅力まで余すこと無く紹介されており、情報量が異常なほど多く、馬鹿ではちょっと読み切れないほどの魅力に溢れた1冊です。外食好きの方は絶対買っておきましょう。