じき 宮ざわ/四条(京都)

五条のミシュラン常連「ごだん 宮ざわ」の姉妹店「じき 宮ざわ」。先日「ごだん」を訪れとっても好みだったので、当店にもお邪魔してみることに。「ごだん」は住宅街にひっそりと佇みますが、当店は錦市場すぐ近くバリバリの繁華街にあります。
店内は横並びのカウンター10席のみ。目の前には大きく開けた窓があり、ランチタイムはそこから飛び込む緑の色合いが目に優しい。

泉貴友シェフは実家が滋賀の料理屋で、宮澤政人シェフに師事し、宮澤シェフが「ごだん」を開業する際に「じき」の厨房を預かる運びとなりました。なお、2023年秋に3店舗目をオープンするそうで、泉シェフは近々「ごだん」に異動するとのこと。
ビールは千円を切り、日本酒は1合千円強から始まり、この手の飲食店としては良心的なほうでしょうか。シャンパーニュだけ謎に超高かったのが印象的。
まずは平飼いの上質な卵で作った茶碗蒸し。甘海老をこれでもかと敷き詰め、キノコで取ったお出汁をザーっと流し込み、余熱でエビに火を通します。アルデンテなエビの甘さとキノコの香りに酔いしれる。
お椀につき、中央に鎮座するのはワタリガニの身の塊。カニに美味しさは当然として、要所要所にギンナンが組み込まれており、風味にリズムが生まれます。
ビワマス。シェフは滋賀の発酵料理が盛んな地方の出身だそうで、お米と玉ねぎをどないかしたなれずし的に頂きます。ビワマスの力強い赤い味わいに程よく酸を感じさせるソース(?)が興味深い。「宮ざわ」と冠していますが、全く独自の料理と言えるでしょう。
スペシャリテの「焼胡麻豆腐」。葛に胡麻を練り込み表面を焼いて頂きます。表面のパリっとした食感と葛のもっちりとしたコントラストが面白い。ハチミツのニュアンスも感じられ、素朴ながら主張の強い逸品です。
サワラを軽く炙ってミディアムレアの状態でナスをトッピング。こちらもシンプルな調理ながらナスの香ばしさをソースに見立てると言う興味が掻き立てられる試みです。
キノコの飯蒸し。モチ米を玄米で食べるというのはありそうでないスタイルであり興趣が尽きません。キノコの風味に濃厚な卵黄醤油の旨味が良く合います。
青森県産のマグロをハンバーグのように炙って土台のシイタケにボンと置く。マグロの仄かな酸味にシイタケの複雑な旨いのエキスが絶妙にマッチし、また、キノコを漬け込んだ醤油ベースのソース(?)も心を惹く美味しさです。
ホタテに香茸(コウタケ)のソース。その名の通り香り豊かなキノコであり、ムンムンとした色気があります。ホタテは軽く衣をつけて揚げているのでしょうか、表面のサクっとした食感が心地よい。
パっと見なんの料理か外観からは測れませんが、これはイチヂクの揚げ出しです。熱を入れ甘味を増したイチヂクにウニを贅沢にトッピングし、仕上げにクリをすり下ろします。イチヂクの豊潤な甘味に酔いしれる逸品です。
鱧しゃぶ。これまたシンプルなひと品ですが、桃を用いて作ったポン酢のふくよかな風味がベストマッチ。ハモのニュータイプとも言える食べ合わせです。
お肉は京丹後のものだったっけな、いずれにせよグラスフェッドビーフを時間をかけて丁寧に焼き上げたお料理です。肉そのものの味が濃く文句なしに美味しい。加えて花山椒を発酵させるという前代未聞の取り組みに脱帽です。
お食事はシンプルな白ごはん。まずは「煮えばな」でフレッシュな風味を味わったのち、その後2膳目3膳目と風味のグラデーションを楽しみます。ごはんのお供におじゃこと発酵させた白味噌を和えたものやお漬物をいくらでも用意してくれ、このまま発電できるんじゃないかと思うほど無限に食べ続けてしまいました。
甘味には真っ透明なゼリー(?)に甘く仕立てた白キクラゲ。昔はアルコールが感じられる伝統的なお菓子(?)だったそうで、世の中知らないことがたくさんあるなあ。
店主自ら点てて下さる抹茶を楽しんでごちそうさまでした。

以上の料理が2万円ほどで、軽く飲んでサービス料が加算されてお会計はひとりあたり2.5万円ほど。「ごだん 宮ざわ」と同じ価格帯であり大満足です。発酵という技法を多用するなど前回の「ごだん」とはまるで異なる料理なのも面白く、これはもう、3店舗目もお邪魔するしかないと心に決めたディナーでした。

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