「日本一駅に近い漁港」として有名な小田原漁港。その駅から徒歩3分の漁港の目の前にあるイタリアンレストラン「イルマーレ(Ilmare)」。もともとはリストランテ・ヒロ系列の「リストランテ・ヒロ マーレ 早川店」という名で営業していたお店です。
インテリアはミコノスやサントリーニなどエーゲ海を想起させるテイストで可愛らしく健康的。もちろん窓からは漁港が見えます。
依田隆シェフは会社員から料理人へと転身し、イタリアで経験を積んだのち「リストランテ・ヒロ マーレ」を経て当店のシェフに。地元の漁師や農家と関係を築きながらこの土地ならではのイタリア料理を追求し続けます。
都心のイカれたイタリアンレストランとは異なりアルコールの値付けは控えめ。プロセッコはボトルで5,500円であり、グラスワインも千円かそこらです。ゲストのみんなたちはランチからお酒を楽しんでいます。イチヂクのベニエ。その名の通りイチヂクに衣をつけて揚げただけなのですが、どっしりと主張の強い果実が特長的。このあたりでイチヂク採れるんやな知らんかった。
お造り盛り合わせ、じゃなかった、前菜のお魚プレートです。お魚はメイチダイ、イナダ、アオリイカ、イサキ、カマス、カツオ、サバ、マアジ、エボダイ、ハナダイ、クロムツ。いずれも目の前の漁港から手に入れたものであり、パーフェクトな美味しさ。ところどころ散らしてあるサザエのコリコリとした食感も料理にリズムを与えます。ところで、出て来た魚種の全てを覚えている私の記憶力も中々のものです。
フォカッチャはごくごくシンプルなもの。割にソース多めな芸風なので、拭って食べるにちょうど良し。ショゴという、カンパチの幼魚をカツレツ風にしたもの。その辺の魚のフライとはレベチの美味しさであり、苦味の効いたお野菜との組み合わせもバッチグーです。
ハモは関西の食材と思いきや、このあたりでも獲れるそうで、それをスパゲッティーとして頂きます。ハモも勿論美味しいのですが、酒飲みとしてはカラスミのファサーに心を奪われる。
続くパスタは伊勢海老で。身の美味しさは当然として、味噌を始めとするエキスを搾り取って麺に絡めて食べる背徳感といったらない。
メインのお魚はクロムツ。シンプルに火を入れつつ、大量の桜海老をソース代わりにして味覚の調和を楽しみます。陸上の肉を出さずに魚介類のみでこれだけの満足感を与えるのだから大したものです。
デザートは当店流のロールケーキにたっぷりのフルーツ、ミルクのジェラート。いずれも素材の良さが上手く伝わるシンプルな構成です。
お茶と小菓子を楽しんでフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上のコース料理が14,300円で、ワインをいくらか飲んでサービス料を含めてひとりあたり2万円といったところ。このあたりでのランチ代としては強気の価格設定ですが、都心で同クオリティのものを楽しむことを考えれば割安。10席以上をシェフと料理人兼サービスの2人で回しているので皿出しのテンポは悪いですが、そういうものだと割り切って訪れましょう。
また、小田原漁港は当店以外にも鮮度自慢の定食屋や海鮮バーベキューの店もあったりと実に楽しい漁港なので、小田原はもちろん箱根や湯河原、熱海への小旅行のついでに是非どうぞ。お土産はもちろん湯河原駅で「らぁ麺 飯田商店」のテイクアウトだ。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉) ←ちょっとした海外旅行に来たような満足感。
- ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出(和歌山) ←我が心のイタリアン第1位。
- プリズマ(PRISMA)/表参道 ←高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。
- Il Lato(イル ラート)/新宿三丁目 ←お魚料理のひとつの究極系。
- ヴィンチェロ(Vincero)/新宿御苑 ←どのような大食漢が訪れたとしても満足すること間違いなし。
- リストランテ ラ・バリック トウキョウ(La Barrique Tokyo)/江戸川橋 ←無冠の帝王。
- TACUBO(タクボ)/代官山 ←ポイントは二番手の存在。
- アロマフレスカ(Ristorante Aroma-fresca)/銀座 ←好き嫌いを超えた魅力。普遍性。
- ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原/箱根 ←最高の家畜体験。
- クッチーナ(CUCINA)/大垣(岐阜) ←何でもアリの旨いもの屋。
- ひまわり食堂/富山市 ←こねくり回すことなく、いま何を食べているのかハッキリとわかる味と量。
- プリンチピオ/麻布十番 ←こんなに有意義な6,800円があるか?
日本のイタリア料理の歴史から現代イタリアンの魅力まで余すこと無く紹介されており、情報量が異常なほど多く、馬鹿ではちょっと読み切れないほどの魅力に溢れた1冊です。外食好きの方は絶対買っておきましょう。