結論から述べると、旅行者の目線で見る限りにおいて、香港はコロナ前後で取り立てて大きく変わってはいませんでした。相変わらず道路には謎の液体がポタポタと落ちてくるし、工事現場の足場は竹で心許ないし、女子たちは歩道橋でピクニックしているし、上半身裸のオッチャンがそのへんをフラフラ歩いています。
<さようなら日本航空>
2023年8-9月発券分はシンガポールケロシンと為替が上手く嚙み合ったボーナスタイムで、ここ最近ではサーチャージが比較的落ち着いていた期間。これはチャンス、ここぞとばかりにJALのマイルを消化します。マイルを払ってるのにサーチャージを徴収されるのは納得がいかないので、せめてもの工夫です。
ところで私は5年間維持したJALのダイヤモンドステータスから抜けることにしました。最近のJALは5年前とは全く方向性が異なるエアラインとなってしまい、ITリテラシが低く英語のできない後期高齢者向けの割高な航空会社へと変貌を遂げました。もはや介護施設に近い。これはこれでビジネスとしてはアリなのかもしれませんが、私の価値観には全くそぐいません。そのためマイルの有効期限が切れる前に(ダイヤモンド会員は無期限だが抜けると有効期限が生じる)、じゃんじゃん消化を続けています。昔はエコノミーで予約しても気前よくビジネスにアップグレードしてくれていたのに、今はエコノミーの座席指定すら有料です。機内がガラガラだったので試しに席を移動してみたらCAに怒られました。もういい。俺はLCCに乗る。夢や希望なんて持たないほうが気が楽だ。羽田のJAL国際線ファーストクラスラウンジで注文した和御膳。日本が誤解されそう。 pic.twitter.com/rPEE1NNnX2
— タケマシュラン (@takemachelin) March 18, 2023
ちなみにこの『9月国際線「JALファーストクラスラウンジ」で宮崎県産キャビアをご提供』というプレスリリースにつき、私は当該ラウンジを9月に何度も訪れているというのに実物を見たことがありません。不審に思いスタッフに確認すると「数量限定で、毎朝8:30-9:00ぐらいには無くなります」とのこと。そういうとこだぞ。
ところで帰国の際、香港国際空港においてはキャセイパシフィック航空のファーストクラスラウンジを利用させて頂きましたが、宮脇咲良ふうに言うと「レベルの違い」を見せつけられた格好です。予約制でバスタブ付きの個室も利用でき、カタール航空のファーストクラスラウンジのようにベッドこそはありませんが、空港のラウンジで個人に与えられる空間としては相当に贅沢と言えるでしょう。
このように、JALのファーストクラスラウンジはワンワールドの中でも屈指のショボさなので、そのうちワンワールド側から「バランスが取れていない」とクレームがつくのでないかと心配しています。
<e-道という小技>
香港を頻繁に訪れる方は自動化ゲート「e-道(e-channel)」を登録しておくと良いでしょう。入国審査を通過してすぐ左に(ほんとうにすぐ左。バゲージクレームまで行ってはならない)登録事務所があって、パスポートとJALかANAのステータスカードを提示すれば、ものの数分で登録完了です(画像は香港の入国管理局の公式ウェブサイトより)。
<2019年からの変化点>
2019年は「光復香港 時代革命」をスローガンに掲げた民主化運動が大いに盛り上がった1年でした。平たくいうと、犯罪者引き渡し系の法案に反対することからデモが始まり、それが結構ウケたので勢いに乗って五大要求まで拡張したところ、武力でバチボコにされもっとヤバい法律ができてしまいTHE ENDという流れです。
その法律とは「香港国家安全維持法」というものであり、「香港独立」のような国家分裂のおそれのある意見を述べると牢屋に入れられるというものです。例えばショッピングモールで行われていた東京オリンピックのパブリックビューイングにおいて、香港が勝った際に中国の国家が流れたことにつき、「We are Hong Kong!!」とブーイングしたオッチャンが逮捕されています。観光客であるアナタも飲み屋で酔っ払って「香港最高!独立だー!」みたいに叫ばないよう注意してください。
全てが「香港国家安全維持法」が原因ではないかもしれませんが、かつては4兆ドルを誇った株式市場はすっかり失速し、何日も出来高のない銘柄が増え続け、外国人投資家も撤退を進めています。そこまでして中国共産党は何を手に入れたかったのだろう。ダイヤモンドが欲しかったのか、その輝きが欲しかったのか。■電子タバコが禁止に
2022年より電子たばこ等の代替喫煙製品は、法律により持ち込み、携行、保管等が禁じられるようになりました。違反すると最大6ヶ月の懲役刑と50,000香港ドルの罰金とかなり重い。他方、紙タバコの利用は活発で、そのへんに歩きタバコの人はワンサカいます。どっちが幸せな社会なんでしょうね。■K11 MUSEA
2019年に文化的商業施設「K11 MUSEA」が開業していました。九龍の南端、尖沙咀エリアとザ・香港な立地です。ラグジュアリーブランドやラグジュアリーホテル、ラグジュアリーなレストランと、とにかく香港らしいショッピングモールです。
お買い物だけでなく、アートな側面も強調しており、美術展を開催できるようなスペースもあります。姉妹店(?)として空港近くに「11 SKIES」というショッピングモールも近々開業するそうです。
■中環街市(Central Market)
https://www.centralmarket.hk/tc「街市」という、古くからどこにでもある市場を改装し、お台場的な商業施設へとリニューアルした「中環街市(Central Market)」。2018年8月の開業であり、肉がぶら下がり海産物が飛び交う市場がこうも変わるものかと驚きました。
個人的にはこのトイレの仕組みがすち。地階にはお洒落なフードコートもあり酒も充実。虎ノ門ヒルズ的な横丁使いもできる。蘭桂坊(ランカイフォン)のノリについていけない方は当館でしっぽりやるのも良いでしょう。■M+
「西九龍文化地区(West Kowloon Cultural District)」におけるフラッグシップ。九龍の南西端を芸術と文化の中心地にしようという一大プロジェクトが進行しており、その目玉といえる現代美術館が「M+(エムプレス)」です。
いわゆる現代アートの展示が中心であり、こっち系に全く疎い私はその文化的な価値について多くは語れません。それでもヴィクトリアハーバーを一望できる設計や青々とした芝生が敷き詰められた公園、数々の博物館や劇場など、丸一日楽しめるエリアと言えるでしょう。
アクセスは少々悪く、九龍駅から徒歩で20分といったところでしょうか。グーグルマップがあやとりのようなルートを提案してきますが、「ザ・リッツ・カールトン香港(THE RITZ-CARLTON HONG KONG )」が入った商業施設から歩いて行くのがスムーズで、おまけに涼しいです。
■香港芸術館(Hong Kong Museum of Art)
香港で最初に建てられた美術館が2015年に一旦閉館し、2019年冬にリニューアルオープン。香港を代表する美術館でありつつも、常設展は入場無料という気前の良さです。例によって私は当館の文化的価値について多くを語れないのですが、来館者の殆ども同じのようで、みな窓際に陣取り景色を眺めながらダベっていたりします。雰囲気いいし、涼しいし、恰好のお散歩コースです。
■金魚街(通菜街)
もともとは金魚を中心とした観賞用の魚が多く売られていた通りですが、犬や猫、ウサギなどを取り扱うペットショップが増えていました。激増と言ってもいい。日本では「Coo&RIKU(クーアンドリク)」での事件が社会全体で考えるべき課題として取り上げられていますが、香港における愛玩用ペット事情も気になるところです。
■女人街
香港を代表する観光地「女人街」。決してエッチな店が軒を連ねているというわけでなく、いわゆる女子向けの装飾品などを多く取り扱うことに起源を持つナイトマーケットです。なのですが、なんだかとっても寂れている。ネットが発達して情報格差が解消され、こういったパチモンだらけのレモン市場は廃れていくのかもしれません。
<日本との違い>
■ライドシェア大活躍
昔からですが、普通にUBERが使えます。もちろんオールドスクールなタクシーも健在で、外国人やスノッブなヤッピーはUBERを活用し、地元のオッチャンオバチャンはタクシーをフル活用。上手に同居しています。
それにしても、日本ではライドシェアが意地でも解禁しない問題は困ったものですね。タクシー業界が反発するのは納得できますが、普段タクシーに乗りもしないのに反対する人々の思考回路を紐解きたいところ。保険証のデジタル化とかも絶対反対してるんだろうなあ。■フードデリバリーは徒歩で
コロナ禍がキッカケだったのかは存じませんが、フードデリバリーサービスは東京よりも活発かもしれません。飲食店の入り口付近にフードデリバリー用の置き場があり、運び屋たちが店のスタッフに断りも無く勝手にレシートと照合して持っていくのが面白い。ちなみ香港はバイクやチャリよりも歩いた方が早い場合が多いので、最初から徒歩で配達する猛者が結構いたりします。
■ベビーカーが少ない
ベビーカーをあまり見かけません。香港の人口は800万人で東京23区の人口は1千万人と、都市の規模としては似たようなものなのに、香港では1日出歩いていても10台も見ない気がするし、見かけたとしても欧米人が殆ど。日本の都市部におけるベビーカー論争が滑稽に思えてきます。ちないに香港のベビーは前向きの抱っこ紐が多いですね。道が狭くガタガタで坂道も多いのが理由のひとつなのかもしれません。
■スマホ中毒
<ホテル>
■Hilton Garden Inn Hong Kong Mongkok(香港旺角希爾頓花園酒店)
ヒルトンの低価格ブランドであるため、どことなく安普請な雰囲気は否めません。お部屋は20平米ほどでしょうか、日本のビジネスホテルと大差ないのですが、そのくせ1泊3万円近くするのだから頭に来る。とにかく仕事が甘く、ホコリが溜まり前客の髪の毛が落ちているのは序の口で、バスタオルの間に誰かの長い長い髪の毛が挟まっていたのにはさすがに閉口しました。
文句ばっかり言ってますが、2023年の香港において1泊3万円で泊まることのできるホテルなんてのは、どこもこんなものかもしれない、というのが今回の結論です。記録を遡ってみると、私がしょっちゅう香港に出入りしていたのは2019年であり、その頃は気前良く「ザ・リッツ・カールトン香港(THE RITZ-CARLTON HONG KONG )」などに泊まっていたのですが、当時は「光復香港 時代革命」の真っただ中でした(画像はwikipediaより)。
思い起こすと当時は地図アプリにデモ隊の居場所が表示され、街の信号機が悉く破壊され交通は部分的にマヒしており、そんな状態では誰も香港になんか来ないから各ホテルはバーゲンセール状態だったようです。いずれにせよ、われわれ日本人は「円安」という配られたカードで勝負するしかありません。<飲食店>
ここからは私がお邪魔した飲食店をご紹介。香港はドルペッグ制を採用しているため、基本的に香港ドルは米ドルに連動し、円安の我々にとっては非常に厳しい闘いを強いられるわけで精神的につらい、つらすぎる。奥の手として、こういうこともあろうかと昔レートの良い時期に換金しておいた香港ドルをタンスの奥から引っ張り出し、下記の書籍に載るような現金払いのみの名食堂を巡ることに。どこも予約不要の気軽なお店ばかりです。
ところで香港はグーグルマップの点数づけが厳しく、評判の良い飲食店であっても3.6-3.9は当たり前です。日本のグーグルマップの点数とは相場が違うということを念頭に置いて臨みましょう。ちなみにお隣の台湾は点数づけが非常に甘いです。優しい世界。
■美味餃子店/太子(香港)
香港の飲食店は英語名が併記されていることが殆どなのですが、当店は漢字オンリー。つまり、どローカルなお店です。餃子の皮がちょっと変わっていて、日本人が一般的に想像する生地よりも全く薄く、パートフィロと評しても良い程の口当たりの軽さです。具材がキクラゲ主体なのも珍しい。
■羅富記粥麺專家(Law Fu Kee Noodle Shop)/中環(香港)
お粥や麺が人気のお店で、他にもいくつか系列店があるようです。豚肉と魚のコラボお粥。お肉がとっても柔らかく滑らかな口当たりで優しい味わい。お魚はホロホロと崩れてお粥に溶け込んでいき、全体としてお粥の複雑味が増していきます。
■正斗粥面専家 (Tasty Congee & Noodle Wantun)/九龍(香港)
お粥の麺の専門店チェーンながらミシュラン1ツ星を獲得し続ける人気店。スープが黄金色に輝いておりブルゴーニュの樽のきいたシャルドネのようです。味わいも実に綺麗で、小じゃなくて大サイズにすれば良かったな。
■滬江大飯店(Wu Kong Shanghai Restaurant)/尖沙咀(香港)
尖沙咀のど真ん中という便利な立地の上海レストラン。JCBカードで支払えば10%オフになるので日本人客が多めですが、それでも地元のゲストが大半を占めます。ただ、以前訪れた際は上海ガニのコースをリーズナブルに楽しめたのですが、純粋な中国料理としては香港において凡百の店に感じました。
■妹記生滾粥品(Mui Kee Congee)/ 旺角(香港)
花園街市(市場)の熟食中心(フードコート)にある人気の広東粥専門店。お米が溶けるまで煮込み出汁を効かせた優しい粥。牛肉は牛丼のようにゴツゴツとした食感とは全く異なり、滑らかな口当たりで味わいも綺麗。しっとりとしたお粥のタッチによく馴染みます。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。