藤田屋(ふじたや)/湯河原

湯河原の温泉街でも屈指の歴史を誇る「藤田屋(ふじたや)」。創業は明治15年(1882年)であり、本館は国有形文化財に登録されています。
しなしながら、立派なのは建屋とその歴史だけであり、立派な料金を取る割にサービスは二流三流に感じました。連れのことを真っ先に「奥様」と呼ぶあたりポリコレに反するところでしょう。これがパパ活であればギャグで済みますが、本気ではあるが実らない恋であれば悲劇としか言いようがありません。
我々は本館のお部屋にご案内頂きました。格子細工や欄間などの誂えがクールです。テレビならびにその台は骨董品とも言うべき年代物で、大英博物館に寄贈したいレベルです。
窓外には緑が映え風情があるのですが、防音がしっかりしておらず、往来するヤン車やバイク、トラック、バスなどの音がすげえうるさい。先日「富士スピードウェイホテル」という、サーキットの敷地内にあるホテルに泊まったのですが、そこよりも耳障りに感じます。もちろん館内の足音や話し声も良く響き、間違っても性交は成功しないでしょう。文化財としての価値と機能性は一致しないのだ。
ウェットエリアと呼べば良いのでしょうか、親戚の家のような仕様であり心なごみます。ちなみに我々はトイレ付のお部屋だったのですが、つまり無い部屋もあるということです。

また貴重品につき、カギ付きの金庫に預けるよう促されるのですが、そのカギは結局スタッフに預ける必要があるので、ゼロトラストならぬトラストゼロのセキュリティレベルです。
温泉は大きくふたつあって、時間で区切って男女で入れ替えます(写真は公式ウェブサイトより)。お湯そのものは悪くないのですが、22時にクローズという寮生活のような運用です。夕食後にひとっぷろ浴びるには時間が少なく、またチェックアウトは10:30と早いので、あまり温泉にアクセスすることができない仕組みです。
夕食は、まあ、普通の旅館の普通の食事といったところでしょうか。前菜の盛り合わせ(?)も実に普通です。料理を運んでくるスタッフがいちいちつまらない事を言って来るので気に障ります。
お造りはマグロを除いて地元のものを用いているそうで、なるほどシマアジなどは絶品とも言うべき味覚です。もうずっとシマアジだけでいいんだけど。
固形燃料で火あぶりの刑に処せられる牛たち。脂がギットギトで断片的な味わいであり、お星さまの引き立て役Bにすらなれません。
お口直しに謎のモロヘイヤ蕎麦。白井球審のように独特のストライクゾーンを持つ発想ではありますが、実に的外れな味覚でした。
お食事はちょろっとキノコが入っただけの茶色いゴハンであり、まさに料理の小田原評定。「いかがでしたか?」だと?君たちは自分で旨いか不味いかもわからないのか。
デザートはモンブランとのことですが、モンブランの定義を思わず検索してしまうプレゼンテーションです。確かにわずかながら栗の風味が感じられるものの、全体として2時間放っておいたペプシのように甘く、そろそろSHINE。あ、いやこれは輝いて欲しいという意味です。
朝食は夕食に比べると相対的にはマシですが、8:30と聞いていたのに7:50から部屋に立ち入り準備をし始めたので君たちは本当にもう。部屋食なので仕方のない面はあるかもしれませんが、たった20時間ほどしか滞在していないのに入れ替わり立ち代わり人がバタバタと部屋に出入りするので落ち着かない。そのへんの公園でキャンプしたほうが余程プライベートが保たれます。
私はゆっくりと過ごすために温泉旅館に宿をとったはずなのに、オフィスにいる時よりも多くの他人に話しかけられ、絶えず時間に追われ、騒音に悩まされ、イラっとする瞬間が30回はありました。

とてもとても悲しい思いをした一方で、やはり箱根熱海のひらまつの温泉旅館はすげえなあと再認識できた滞在でした。

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