八雲うえず/都立大学

菊乃井東京店の立ち上げから16年を勤め上げ、うち2年間は料理長として名を馳せた上江洲直樹シェフ。満を持して目黒区は八雲にて「八雲うえず」を開業。デビューして即ミシュラン1ツ星。
店内はカウンターに10席ほどでしょうか(写真は公式ウェブサイトより)。シンプルな内装でギラギラしておらず、八雲という住宅街にしっくりくる空気感です。コースは税サ込18,500円の一本勝負で、暴騰に暴騰を重ねる東京和食界隈では良心的な価格設定です。
しかしながらアルコールはバリ高いですねえ。一番搾りの小瓶が900円で日本酒は1合2千円前後。これは大変な目に合うとビールだけに留めたのですが、料理提供のテンポが良くダラダラ飲む感じでもない店なので、その値付けぐらいにしておかないと採算が取れないのかもしれません。
先付はトマトのすり流し。お出汁のジュレやジュンサイにウニなども含まれており色んな味がします。宮古島のマンゴーまで組み込まれているのは沖縄県出身のシェフに何か関係があるのかもしれません。
八寸は小規模であるもののセンスのある盛りつけであり、ひとつひとつがきちんと美味しい。とりわけサバのお鮨が私好みです。
お造りは多種多様でアカイカにイサキ、アマダイ、サゴシ(サワラの幼魚)、ホウボウ。それぞれ異なるフレーバーが施されており、色々食べれて楽しいです。
お椀は賀茂ナスがドーンとぶち込まれており大迫力。スープもそれに負けない強烈なカツオ風味であり、全体としての量もたっぷり。一般的な日本料理店のお椀の倍ほどの食べ応えがありました。
甘く炊いた黒豆ともずくで箸を休めつつ、、、
鮎が焼きあがりました。郡上の天然鮎であり、表面はバリっと香ばしく、身はふっくらとした食感であり美味。蓼酢ならぬ蓼味噌も一本取られる味覚です。
焼き物2種目は常陸牛のシンシン。炭火で炙るシンプルな調理なのですがサイズ感は半端なく、その辺のステーキハウスのそれよりも食べ応えがあるかもしれません。
〆のお食事はスッポンと新生姜の炊き込みご飯。ひとりあたり1合も炊いて下さり、食べきれない分はお持ち帰りOKです。
お椀は味噌汁ではなくナスのすり流し的なスープであり、香ばしく焼かれたナスの風味が堪りません。ライスは硬めに炊かれており私好み。総じて大満足のお食事でした。
デザートはできたてのわらび餅。中にはこしあんが組み込まれており、ひとひねりある甘味です。

以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり2万円強。銀座や六本木であれば倍は請求されそうな食後感です。キャビアやトリュフなどの過剰な演出は一切なく、定められた予算の中で最大限のパフォーマンスを発揮するという、料理人の鏡とも言える姿勢です。やっぱりこれぐらいの価格帯が現実的だよなあ、と、思わず納得したディナーでした。

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