オーベルジュ ド プリマヴェーラ (Auberge de Primavera)/旧軽井沢

軽井沢を代表するフランス料理店「オーベルジュ ド プリマヴェーラ (Auberge de Primavera)」。軽井沢駅から歩いて10分ほどの木々のトンネルを抜けた先にあり雰囲気抜群。食べログでは百名店に選出されています。
我々の宿泊先は「旧軽井沢KIKYOキュリオ・コレクションbyヒルトン(Kyukaruizawa Kikyo, Curio Collection by Hilton)」だったので、今回は夕食だけビジター利用させて頂きました。BGMは鳥のさえずりとサラサラと流れる水音だけであり、まさにフランスのオーベルジュといった風情です。

小沼康行オーナーシェフは代官山「レンガ屋」でそのキャリアをスタートさせ、銀座「レカン」箱根「オーミラドー」などの名店を経て1996年に当館を開業。当初は小さなフレンチレストランでしたが徐々に規模を拡大し、現在では日本料理店や宿泊施設も併設しています。
アルコールの値付けは東京と変わりません。まあ、東京の人が来るお店なので妥当と言えば妥当でしょう。7千本収容のワインセラーが自慢であり、そこからボトルワインを注文するのもまた一興。ペアリングは8千円から用意されています。
アミューズはオイスターリーフに塩水のジュレ。オイスターリーフとはその名の通り牡蠣の味がする葉っぱであり、確かに牡蠣の味はするのですが、ここは普通のリアルな牡蠣が食べたかった。
スペシャリテの「活オマール海老と13種類の野菜のテリーヌ」。食材ひとつひとつに最適な調理を施しており、結果として最高の一体感を生み出しています。お皿の網網はお皿の模様と思いきやオレガノのソースであり、その気の遠くなる緻密な作業に形容する言葉が見当たりません。
オマールの身以外も余すところなく活用し、美味しい美味しいビスクに仕立てます。濃厚で香ばしい味わいに思わず頬が緩みます。
パンはごくごくシンプルなもの。パン皿はなくクロスに直置きでフランスでは割とよくあるスタイルなのですが、知らない人はびっくりするかもしれません。以前テーブルの上にスマホを置くなと記したことがありますが、こういうことが理由のうちのひとつです。
フレッシュサマートリュフのフラン。いわゆるフランス風茶碗蒸しであり、お出汁の味わいと柔らかなトリュフの香りに食欲が刺激されます。
フランにあわせてコンソメのスープとフォアグラのクリーム(?)も供されます。お料理ひとつひとつの副題としてそのエキスも楽しめるのが良いですね。「アルテレーゴ(ALTER EGO)」のスープペアリングを思い出しました。
お魚料理はサワラ。低温調理でしっとりとした仕上がりながら、サワラの味わいは活き活きとしており、これは結構すごくすごい美味しい。ソースはショウガ風味で軽やかな味わいです。
お魚にあわせてグリーンピースのスープ。緑の風味が濃厚で後味はスっと爽やか。世のグリーンピース嫌いの方々は当店のこちらをゲートウェイにすると良いでしょう。
メインは和牛のフィレ肉。最近のフランス料理店ではサっと焦がして塩コショウして終わり、みたいなメインディッシュが多いですが、当店はじっくりと味わいを計算した上で調理しており、マデラ酒のソースもしっくりきます。付け合わせにも手抜きが無く、これぞフランス料理というお肉料理でした。
併せてミネストローネも供されます。本日登場したお野菜が上手く調和しており、こういうスープを自宅に常備できる生活をおくりたいものです。
メインのデザートの前に軽いソルベを。パイナップル味なのですが酸は穏やか甘味は豊潤。滑らかな舌触りもクセにある美味しさです。
メインのデザートは7色のアイスケーキ。何とも可愛らしいプレゼンテーションであり、童心に返らせてもらえる甘味でした。
小菓子とハーブティーで〆。ごちそうさまでした。

以上を食べて軽く飲んでお会計はひとりあたり3万円弱。上質な料理と安定した接客を受けてこの支払金額はリーズナブル。何より空間づくりが素晴らしいですね。まさに高原リゾートといった趣があり、都心のフランス料理店では演出できない魅力に溢れています。

料理はクラシックそのものなのでギャル受けは悪いかもしれませんが、裏を返せばそういう客層がいないということです。家族や大人のカップルでどうぞ。

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