海老亭別館(えびていべっかん)/富山市

「ミシュランガイド富山石川(金沢)2016 特別版」で2ツ星を得たのち、再修業と店舗移転を兼ねて一旦休業した「海老亭別館(えびていべっかん)」。4年半の充電期間を経て2022年10月に神通川近くに移転オープンを果たしました(写真はポケットコンシェルジュ公式ページより)。
(富山の)桜木町にあった際は150席の大店でしたが、現在はカウンター6席に個室が2つのみの小規模店となり、ゲストに真っ直ぐに向かおうという気迫が感じられます。それでも建屋は結構大きくて、エクステリアのカッコ良さはもちろんのこと、1階のウェイティングエリアから2階の桜を望むダイニングまでめちゃめちゃイケてる誂えです。
4代目主人の村謙太郎シェフは「青柳」や「松川」など日本を代表する日本料理店で腕を磨き、また休業期間中はソムリエ資格を取得したり生ハムづくりを学んだりと好奇心旺盛なお方。せっかくなので飲み物はワインと日本酒を織り交ぜたペアリングのコースでお願いしました。
付き出しはカニ。近くの岩瀬浜で揚がったものであり旨味が乗って美味。程よく冷えて上手く暑気を払ってくれるひと皿です。
アナゴは飯蒸しで。控えめな調味でアナゴ本来の風味がよくわかる、優しいお凌ぎです。
トヤマエビ。いわゆるボタンエビであり、そのへんの鮨屋で見かける3倍以上の大きさで、イセエビに迫るサイズ感です。歯を押し返すほどの弾力を楽しみつつ、新鮮な甘味に淫します。
頭の部分はザっと焼いて、お味噌をチュウチュウ吸いましょう。脚はおせんべいのようにポリポリと楽しむことができます。
お椀が美味しい。旨味は感じられるのですが決してどぎつくなく、五臓六腑に染みわたる優しさが感じられます。タネはオコゼと胡麻豆腐。これらも上品な味わいでした。
お造りはキジハタとフクラギ。キジハタは今が旬の高級魚で程よい歯ごたえに清澄な味わいが特長的。フクラギはブリの幼魚であり、ブリほどメタボ化しておらず、たっぷりの量でもスイスイ食べ進めることができます。
トウモロコシのすり流し。ただ単に甘いだけでなく、大地の力強さを感じさせる厚みのある味覚です。
白エビはピンポン玉ほどの量をガッツリ盛りつけてくれます。土台は藻(?)を天ぷらにしたものであり、サクっとした食感と白エビのキレイな甘味が上手く調和しています。
ヤングコーンの天ぷらに自家製の生ハムを巻き付けました。おそらく生ハムを自作する日本料理店は世界でもココだけであり、シェフの引き出しの多さが垣間見れます。ヤングコーンの先端のファサファサしたところがバリ旨い。
神通川の鮎。塩焼きで頭からバリっと頂きます。青い風味が濃厚で、蓼酢をつけなくてもそのままで美味しい。
ナスは賀茂茄子に何か関係のある福井産のもの。水分量が多くジューシーで、素朴ながら存在感のあるひと品です。
いけだ牛の冷しゃぶ。余計な脂はなく肉の旨味がしっかりと伝わる調理であり、コース終盤であればこれぐらいサッパリ食べれるお皿が嬉しい。トマトやタマネギなどの付け合わせも爽快感を加速させる名脇役です。
何とうどんが出てきました。緑色は笹を練りこんでいるからだそうで、なんとも爽やか。それでいてコシもしっかりと感じられ、うどん専門店としてカーブアウトさせても面白いかもしれません。
〆のお食事セット。お米は女将のお父様が小矢部市で生産しているそうで、炊くお水もそれ専用に汲みに行っているそうで、白ゴハンながら何とも手が込んでいます。お漬物の味わいも丁寧で、オカズセットも食欲を掻き立てる。〆は卵かけごはんと合計で3杯も食べちゃいました。
デザートに日向夏(だっけ?)のゼリー。ゼラチン質は控えめで飲むように楽しむことができ、その爽快感から胃袋をもう少し押し広げてくれます。
水ようかん。こちらも先のゼリーに輪をかけて水分量が多く、よく形を保っていられるな感心する食感です。程よい甘さで何リットルでも食べれそう。
お抹茶で〆。ごちそうさまでした。

以上の料理のコースが2.2万円で、アルコールのフルペアリングが1.5万円、なんやかんやでお会計はひとりあたり4万円強といったところ。地元の上質な食材をたっぷり用いた丁寧な料理を楽しみ、これまた地元のお酒を中心にしっかりと飲んで(かなり量が多い)この支払金額はリーズナブル。

料理についてはモブキャラがひとつもなく、これだけの多皿でハズレなしとは見事なセンスです。なお食材につき、北陸の主戦場は冬場とのことなので、次回は年末にお邪魔してみようかしら。

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観光地としてあまりパっとしない富山県につき、「幸福県」すなわち「恵まれた自然環境の下、住居・労働・教育などの都市機能が整備されている県」であることに目を付けた富山本。富山の魅力を様々な観点から紐解いています。